住宅ローンはどっちがいいの?
金利は固定か? 変動か?
金利は固定がよいのか、変動がよいのか、という点も迷う方が多いのではないでしょうか。安心感をとるか、経済的利益をとるかによって、選択は異なるところです。
固定金利を選んだ場合、金利変動リスクは金融機関が負っていますから、金利は高めです。変動金利ではリスクを借り手が負っている分、金利は安めになります。固定と変動の金利差は、期間にもよりますが、1~3%くらいあります。今は史上最低と言われるほどの低金利ですから、これ以上金利が下がる可能性は少なくても、上がる可能性は十分にあると考えられます。将来、国債価格が下落すると、金利は上昇しますから、返済負担はグッと重くなります。そのため、やはり固定金利を中心に選んでいくのが望ましいと言えます。固定であれば、金利が上昇しても返済額は一定ですから、変動との金利差は保険料のようなものです。
しかし、変動金利のメリットも捨てがたい場合は、一部を固定、一部を変動にするという、2本のローンを組み合わせる方法があります。たとえば、借り入れ希望総額の6割をフラット35などの固定金利で組み、残り4割を民間の変動で組むなどです。これならば、固定の安心感と、変動の低金利メリットをダブルで享受できますし、仮に金利が上昇しても、影響を受けるのは全体の4割ですから、上昇する金額も抑えられます。
何年で組むべきか?
通常の住宅ローンでは、各金融機関が「完済年齢」を決めています。たとえば完済年齢が70歳だとすれば、今35歳の人は35年まで組めるけど、45歳の人は25年しか組めないということです。そのため、何歳になって住宅ローンを組むかは、返済年数に影響を与えます。住宅を買うことはライフプランだと言われる理由は、ここにもあります。子どもを何人作るかだけでなく、自分が何歳のときに家を買うかという判断にも、経済的なインパクトがあるからです。
返済年数が短ければ、毎月の返済額が高くなり、日々の生活が圧迫されやすくなります。しかし、返済期間が長ければ、支払う金利総額は増えますが、毎月の負担は少なくなります。そこで、ひとまず自分が組める最長の期間で組み、無理のない返済額に抑えておきます。そうやって生活に余裕を持たせ、一方では貯蓄もして手元資金を厚くしておきます。そして、当分使う予定はないな、というお金が明確になったら、その分をつど、繰り上げ返済にまわしていくのです。
実はこれには理由があります。繰り上げ返済による期間短縮や返済額の圧縮はいつでもできますし、ほとんどの金融機関では繰り上げ返済手数料は無料です。しかし、その逆は原則としてできないからです。相談に応じてくれる金融機関も増えていますが、延滞やデフォルト懸念がある場合のみです。たとえば3000万円のローンを、金利2%として、35年で組むと、月々の返済は9万9378円です。これを20年で組むと、月々の返済は15万1765円と、月に5万円以上も負担が変わります。
早く返済したほうが金利も安いし早くラクになれるからと無理に短期間にすると、日々の生活が苦しくなり、住宅ローン返済のために何十年も苦しい生活を強いられる、という人生になりかねません。そこで、まずは余裕のある返済計画にして様子を見て、大丈夫だと確信を持てるようになってから期間短縮をする。
こうしておけば、出費がかさんだり、予定していた収入がなかったときにも、対応しやすくなります。その間の金利がもったいないと思うかもしれませんが、これは安定した家計を保つための必要経費だと考えるのです。そうはいっても気になるという場合は、こちらも2本立てでローンを組みます。1本は早期に完済する年数で組み、もう1本を長めの期間でローンを組むのです。
たとえば子どもの大学進学直前に1本目が完済するようにしておけば、教育費がかかる時期に返済額がぐっと少なくなりますので、ゆとりが生まれます。あるいは、50代後半になったら収入も減るという会社であれば、その前に1本目を完済するように組んでおくと、余裕を持つことができます。
民間金融機関融資か? 公的融資か?
民間金融機関の魅力は、変動ならば金利が非常に安い点です。また、多くの新築物件では、民間金融機関での提携ローンが存在します。これはすでに物件の評価は終わっているので、審査がスムーズというメリットがあります。
もちろん、あえて提携ローンなどを使わないで、自分で複数の金融機関に持ち込み、比較交渉する方法もあります。また、信金や信組は地域密着型経営で地元を優遇してくれますから、思いがけず低い金利で借りることができます。そのほか生命保険会社でも契約者専用の住宅ローンがありますので、白分か加入している保険会社に問い合わせてみるとよいでしょう。公的融資であるフラット35は、全期間固定金利という安心感が魅力的です。しかも民間ほど融資審査が厳しくありません。そこで、基本はフラットを利用し、足りない部分を民間のローンで補う、というのが一般的です。
もうひとつ、金融機関に求めるものはスピード感です。とくに優良な中古物件は売れるのも早いですから、スピードが大切です。ローンの仮審査が素早い金融機関であれば、すぐに購入申込書を書いて、物件を押さえることができます。売主は、ローンが出るかどうか不透明な人を嫌いますから、金融機関の事前審査レベルで「大丈夫そう」「無理そう」というのがわかれば、すぐに返事ができ、チャンスを掴めるというわけです。
住宅ローン金利の決まり方を押さえよう
住宅ローンを選ぶ際に重要なチェックポイントとなるのが、住宅ローン金利です。最近の住宅ローン金利の動向をみておきましょう。
最初に押さえておきたいのは、住宅ローン金利の決まり方です。住宅ローンの金利タイプには、大きく分けて「変動金利型」と「固定金利型」があります。変動金利型とは、その名の通り、金利が半年ごとに見直されて変動する可能性があるローンなのです。一方、固定金利型には、当初一定期間の金利が固定される「固定期間選択型」や、借入れ期間中ずっと一定の金利が続く「全期間固定型」があります。
それぞれの金利は、固定金利型は「長期金利」が、変動金利型は「政策金利(短期金利)」が基準になって決まります。ここでいう長期金利は10年物国債の流通利回りのことで、市場の動向によって変動します。一方、政策金利は日本銀行の金融政策に大きな影響を受けて変化します。
住宅ローン金利は、こうした金利動向に加え、「銀行がそのときに売りたい金利タイプ」や「他行との競争」によって決定することになります。たとえば、銀行が「当面、5年固定より10年固定を売りたい」と考えれば、10年固定は基準金利からの割引幅を大きくしますし、近年は住宅ローンにおける顧客の奪い合いが激しさを増していることもあり、ライバル行よ単金利を下げようという競争も働くのです。
近年、利用者が多いのは変動金利型で、メガバンクでは9割近くが変動金利型という、少々いびつな状態になっています。しかし、変動金利は借入時の金利は低いものの、ひとたび金利が利変動リスクを負っているわけです。銀行(メガバンク)は、借手にとってリスクの大きい変動金利型にかたよっている現状を懸念して、昨秋から、利用者を10年固定ヘシフトさせるために、10年固定の割引幅を拡大しはじめています。この結果、マーケット全体の金利は大きく下がっていないにもかかわらず。メガバンクに追随する形で、全国的に10年固定が低水準になるという現象が起きています。割引のトレントは今年も続くと思われます。
もっとも、住宅ローン争奪戦は各地域ごとに行なわれます。地方銀行(地銀)の競争相手は、地元が同じほかの地銀になります。このため、競争が激しい金利タイプは地域によって異なり、なかには3年固定が変動金利型並みに1%を下まわっているというケースもあります。
超低金利の今は「固定を選ぶべき」?
住宅ローン選びは、「低金利の局面では長期固定、金利が高いときは変動金利で金利が下がるのを待つ」というのがセオリーです。
いまのような超低金利の状況では、固定金利型を選ぶのが基本。住宅ローン金利のトレントも考えあわせれば、2020年に利用価値が高い金利タイプは固定となるでしょう。銀行間の競争が激しく割引幅が大きいうえ、35年にわたって低金利の恩恵を確保できる安心感は大きいものです。11年目以降は金利が上昇する可能性がありますが、35年間の返済でローン残高が大きく減っていれば、金利上昇分の負担も限定的です。
ちなみに、地銀で3年固定など固定期間が短いタイプの割引幅が大きくなっている場合がありますが、3年間ではローン残高があまり減らず、4年目以降に金利が上昇した場合の負担が大きいため、やはり10年固定を選ぶのがおすすめです。全期間固定型で安心を得たいという人にとって頼りになるのが、住宅金融支援機構の「フラット35」です。実は、フラット35にも金利割引の制度があり、高品質の住宅を取得する場合、一定期間の金利引下げが行なわれます。この制度を「フラット35S」といいますが、割引の原資は国の予算なので、その時々で内容が変わる点に注意が必要です。
コメント