【マンション】リノベーション前に理解するべき事!!【2020~2021】

リノベの理解 中古マンション

リノベーション前に理解しておくべき事!!

中古マンション購入者の半数近くがリノベーションを実施している現実があります。一般社団法人不動産流通経営協会(FRK)が発表した「不動産流通業に関する消費者動向調査〈第18回(2018年度)〉」によると、物件の購入前後にリノベーションが行われた中古住宅の割合は71.1%でした。これらは管理会社がリノベーションを行ったケースも含みますが、中古マンションを購入したあとで、買い主自らリノベーションを行ったケースだけを見ても、45.5%にのぼります。要するに、中古マンションを購入した人の約半数は、購入後にリノベーションを行ったということです。

リノベーションしやすい躯体構造

構造と躯体
多くの方がリノベーションを実施するということは、リノベーションしやすい躯体構造のマンションは必然的に人気が高くなるということです。すると当然、資産価値も高くなるわけです。それでは、「リノベーションしやすい躯体構造」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。その代表的なものが、「ラーメン構造」の物件です。ラーメンといっても、あの中華麺のことではありません。これはドイツ語で、「枠」という意味です。壁で建物を支えず、柱と梁で建物を支えるのが特徴です。そのため、間仕切りの位置を自由に変えることができるので、リノベーションで間取りを変えたい方に人気です。一方、柱と梁ではなく、壁で建物を支える構造を「壁式構造」といいます。ラーメン構造は、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)など、建築物の多くに採用されています。

 

「二重天井」と「直貼り天井」の違い

天井と空間

リノベーションでネックになる要素のひとつが、照明器具などの電気配線を思いどおりに配置できないことです。しかし、天井を二重にしてすき間を確保する「二重天井」の構造をもつ建物であれば、配線を自由に変更することができるのです。

二重天井では、天井スラブ(板)と天井仕上げ材のあいだに空間がはさまれ、そこに配線、台所・洗面・トイレ・浴室などの換気扇のダクトが通っています。そのため、この空間内であれば、配線やダクトを自由に動かすことができるわけです。

それに対して、コンクリートに直接クロスを貼りつけただけの天井を「直貼り天井」といいます。この場合は、電気配線がコンクリートに直接埋め込まれていて、照明の位置を変えることができません。二重天井は直貼り天井に比べ、天井高が低いという欠点もありますが、リフォームを考えれば譲れない要件ともいえるでしょう。二重天井には、ほかにもさまざまなメリットがあります。

・二重天井の6つのメリットまとめ

1.設備配管を動かせるので、照明を自由に動かせる
2.間取りの変更がしやすい
3.遮音性が高い
4.マンション寿命が延びる
5.クラックが入りにくい
6.ダウンライト設置が可能

 

「直貼り床」と「二重床」の違い

床張りマンション

「二重天井」と並び、リノベーションしやすい物件として挙げられるのが、内装床とコンクリートスラブを離して仕上げる「二重床」です。前者は私たちが立つ床の部分、後者はその床の構造を支える部分です。

中古マンションの「物件概要」などで書かれている二重床は、一般的に防振ゴムつきの支柱で支える「置床工法」を指します。床スラブと床仕上げ(フローリングなど)とのあいだに給水管、排水管、ガス管、電気配線などが通っているので、水回りの変更をしやすくなります。
それに対して、床スラブの上に直接フローリングなどの床仕上げをしたものが「直床工法」です。こちらは配管類を動かすことができません。そのため、リノベーションをする場合は、水回りの部分だけ床スラブを上げて対応することになりますが、どうしても段差が生じるので、高齢者や小さなお子さんのいる家庭は注意が必要です。

・音が増幅する太鼓現象に注意

二重床にはいくつかのメリットがありますが、「太鼓現象」と呼ばれるデメリットも存在します。これは、床で出した音が増幅されて下階に伝わってしまうことで、騒音トラブルの原因になりかねません。しかし、しっかりした施工業者であれば、太鼓現象が起こらないように配慮しているはずです。事前にしっかりと確認しましょう。

・二重床の6つのメリットまとめ

1 給排水管を動かせるので水回りの移動がしやすい
2 フリーアクセスフロアにできる
3 表面の床仕上げ材の自由度が高い(無垢フローリングや石貼り等の検討も可)
4 床衝撃音の重量衝撃音や軽量衝撃音の遮音性能が高い
5 段差が生じないのでバリアフリーになる
6 マンション寿命が延びる(設備配管類のメンテナンス性が優れているため)

 

天井高で出来る事が変わる

物件を見る際、多くの方が気にするのが「天井高」です。これは、床から天井までの距離のことで、その数値は「リビング、ダイニング、個室などの居室の場合は2.1m以上」などと、建築基準法で下限が決められています。実際には、一般居室で2.4m、リビングで2.5m以上ある物件もありますが、こうした数値よりも「自分が気持ちいい高さだ」と感じられるかどうかが大切です。たとえば、建具(窓)に高さがあれば部屋は明るく、開放感も得られるため、居住性が高まるのです。

また、その地域に建築物の高さ制限や日影制限がないかも大きなポイントです。同じ15m制限の地域で4階建てと5階建ての建物があった場合、当然4階建てのほうが天井は高くなります。現地見学ではこれらの要素を、ぜひチェックしてみてください。

・「天井高」よりも「階高」をチェック

天井が高い部屋は圧迫感が少なく、開放的に感じられるので、中古マンションのなかでも人気があります。そのため、物件紹介のチラシなどでは、「天井高」という売り文句をよく目にします。

しかし「天井高」には思わぬ罠が潜んでいるケースがあります。天井を高く見せるために、前述の「直貼り天井・直貼り床」にしてあるマンションがあるからです。リノベーションの自由度が格段に低くなり、コストも高くつくことになります。

そこで、注目していただきたいのが「階高」です。階高とは、ある階の床上から、すぐ上の階の床上までの距離のことです。配線や配管のある天井や床のスペースも含んだ距離ですからこの数値が高ければ、リノベーションの自由度が高い「二重天井・二重床」の可能性が高いというわけです。

・天井高より階高が重要

12畳のLD(リビングダイニング)で天井高が同じ高さでも、サッシの上端の高さが高いほど、部屋はより広く感じられます。最近はやりのアウトフレーム逆梁工法の住戸をご覧になればよくわかります。LDの掃き出し窓サッシの上端がほぽ天井まで開放されているので、同じ12畳でも広く感じられます。しかしこの工法は、ほとんどの物件の場合、LDのバルコニー側の窓のみ高くできますが、他の窓は階高が高くないとできません。

この「階高」という文字ですが、意外とデベロッパーの販売者は知りません。私かモデルルーム見学に行って、「階高はどのくらいですか?・」つて販売員に尋ねても、返ってくる答えはほとんど天井高さです。中堅のデベロッパーですと、「階高って何ですか?」などと、とんでもない質問を逆にされてしまいます。困ったものです。何千万円もする商品を売っている販売員が「階高」の意味すら知らないとは、買い手側にとっては言語道断です。

「階高」とは1層(階)分の高さです。これがマンションの住戸の空間の立体的広さを決定する重要な高さです。通常のマンションでは、大梁の下がサッシの上端の高さになります。例えば、高さ2メートルのサッシを付けるとして、二重床(仕上高15センチ)で大梁高さ75センチとすると、2メートル+10センチ(サッシの付け代)+15センチ(二重床の仕上高)+75センチ(大梁高)=3メートルが、必要な階高です。二重天井の場合、この3メートルから天井の仕上げ代約20センチとスラブ厚さ20センチ、合計40センチを差し引くと、2メートル60センチの天井高が確保できるわけです。

天井高は極端に言えば直天井にすれば高くできますが、部屋を広く見せるのはサッシの上端
の高さです。ですから階高を重視しなければならないのです。階高の決定は大梁の高さに左右されます。また、大梁の高さは、住戸の間口(スパン=柱と柱の間隔)と建物の階数に左右されます。10階建ての1階の住戸の上方に付いている大梁は、かなり大きく(高さが高く)なります。

商品企画するうえで階高は非常に重要です。この時期に構造設計者に柱や大梁の仮定断面寸法を提出してもらわないと、各階の階高は決定できません。小規模の設計事務所ですと、構造設計者がいないので外注になり、連携がうまくとれないケースがよくあります。また、大手の設計事務所の構造設計者は安全率を過剰にとり、柱や梁が異常に大きくなる場合も見かけます。その点、大手ゼネコンの構造設計者は過剰設計しないので、適正な柱・梁寸法で収めてくれますので、階高もさほど高くなくても2メートル高さのサッシが取り付けられます。7畳や5畳の洋室の窓の上端が2メートル未満だと、とても狭く感じます。すべて階高に関わっているのです。

デベロッパーは、マンションの設計を依頼する際に、サッシの上端の高さの指示と、二重床・二重天井等重要な項目は、きちんと設計者に伝えるべきです。その点、大手デベロッパーは設計基準書を作って、その中に明示してあります。たまに、遵守してない物件もあるので注意が必要です。

・表示義務がある「躯体天井高」

階高のほかにもうひとつチェックするべきものとして、「躯体天井高」があります。これは、階高から天井の厚みを引いた寸法のことで、間取りの変更のしやすさを評価するために用いることができます。また、物件の性能に関する重要な項目として、2008年春から、住宅性能表示制度にしたがって、住宅性能評価書への表示が義務づけられています。ただ、不動産会社の担当者は、「躯体天井高」をよくわかっていないことがあります。この数値が2.6m以上かどうかで、リノベーションの自由度はかなり違います。必ず現地調査で確認するようにしましょう。

 

リノベーションを考慮したら二重天井・二重床がベスト

最近では二重床・二重天井のマンションが減り、直床・二重天井が増えてきました。また10年前に戻っているような傾向です。マンションが供給過剰気味で売れなくなってきましたので、価格勝負の低品質、低価格の方向へ向かっています。当然、直床のほうが建築コストは安くなりますので、販売単価も低価格になります。

また、さらに事業主にとって大きなメリットは、各階の階高を13〜23センチ低くできるので、今までの平均階高3メートルで20階建ての建物を、直床にして平均階高2メートル85センチと低くしますと、21階建てになり1層増えることになります。容積(延べ床面積)や専有面積(販売面積)を簡単に稼げます。特に再開発事業では、容積の割り増しを多くもらえるので販売面積が増えるのです。平均階高が低くなれば、工事費の坪単価も当然安くなります。

躯体(コンクリート部分)工事費で言えば、1層につき15センチ低くなれば、10階建てであれば1メートル50センチ柱は短くなり、外壁面積も減りますので、コンクリート量や鉄筋量も減り安くなります。仕上げ部分の工事費では、外部のタイル面積や吹き付け面積が減少し、玄関扉高さやサッシ高も低くなって安くなり、室内の二重床の床組みの材料費・手間賃も減ります。

直床工法にすることによって、これだけ工事費用が下がります。しかしマンション購入者にメリットはあるのでしょうか? 私の30年の経験から申しますと皆無に等しいです。強いて言うなら一つだけあります。直床のマンションは、重量衝撃音(子どもが飛び跳ねる音)が若干、下階に伝わりにくいことがありますが、軽量衝撃音(椅子を引きずる音やスプーンを落とした音)は二重床よりも下階ではよく聞こえます。音の専門家の先生の中には、逆のことを言っている方もいらっしゃいますので、断定はできませんし、施工精度によっても異なります。この件を少しでも解消するために、フローリングは遮音等級のいいLL40を使っていますが、このLL40等級のフローリングは、裹に軟らかいスポンジ状のゴムを貼り付けてますので、歩くとフカフカして板敷きの感じがいたしません。

マンション購入者にとって直床工法のデメリットを挙げてみましょう。まず階高が低いので、玄関扉の高さが2メートルない場合が多いです。同じく、LD以外の部屋のサッシの上端が床より2メートル以上になりません。建具高さも当然、2メートル以下の箇所が出てきます。

設備面ではどうでしょう?直床工法は給水管や給湯管の配管を天井裏に通すので、俗に言う鳥居配管になります。水道管は、メーターボックス内の水道メーターから上へあげて、天井裏で水回りへ配管し、台所の流し台の近くに管を下ろすので、ちょうど神社の鳥居のようになります。水をアップダウンさせるので、長期間留守にすると水道管の中に気泡が生じます。この気泡によって給湯器の着火が悪くなり、故障の原因になります。

最後に一番大きいデメリットは、横引きの排水管が動かせないので、水回りのリフォームが非常に困難だということです。大手デベロッパーでも、一流は直床工法は採用していません。大手でも一流と三流の二極分化がはっきりしてきました。

 

リノベーションの要は水回り

築年数にもよりますが、中古マンションのリノベーション内容に優先順位をつけるとすれば、次のとおりになります。

1位 水回り機器(給排水管)の更新
2位 換気(ダクト配管・換気扇)の更新
3位 クロスや床などの更新
4位 窓をペアガラス(二重ガラス)にする
5位 断熱材の更新

なぜ水回りの更新が1位なのでしょうか。それは水回りをおろそかにすると、あとでとても大きな出費がかさむ可能性があるからです。一般的に、給水管は内側が塩化ビニルでコーティングされた錆の発生しやすいものや、耐久性の少ない塩化ビニル管が使用されています。また、古い分譲マンションでは腐食しやすい「亜鉛メッキ鋼管」を排水管に使っていることが多いため、給排水管の交換に予算を多めにみておく必要があります。

また、古いマンションでは、給水管の継手部分の一部がコーティングされておらず、継手部分が直接水に接する構造になっているものもあります。これは、錆による腐食が進行して、水の出が悪くなったり、赤水の発生によって健康を害したりする原因になります。それだけではなく、階下に水が漏れて、修繕費及び住民に対する損害賠償を負担することにもなりかねません。しかも、階下への水漏れ損害賠償については、マンション保険の支給対象外なので、天井と壁、床の復旧費用が発生した場合、個人で30万〜80万円の負担額を支払うことになります。

そのようなことにならないためにも、次の項目をしっかりチェックする必要があります。もちろん、リノベーション会社の人など専門家に確認してもらうのがいちばんですが、物件を見るときにはこれらの点を意識するよう、心がけてください。

・プロの目で見る「水回り」チェック事項

●床下及び天井の下地工法と空間の広さのチェック
●排水管の計画に無理はないか
●階下への漏水の有無
●排水はスラブ貫通か横引き配管か
●排水管位置と段差のチェック
●トイレは床排水か壁排水か

しかし、現地見学に行った程度では、水回りの状態を正確に把握することはできません。物件購入を検討するなら、「ホームインスペクション(住宅診断)」という、住宅の劣化状態や改修すべき箇所のチェックと、その費用の概算をリノベーション会社にアドバイスしてもらうとよいでしょう。

・水回りリノベーションの決め手は「排水管位置と段差」

上であげたチェック項目のなかで、台所や風呂場、洗面所の位置変更など、水回りのリノベーションがどれだけ柔軟にできるかの決め手になるのが、「排水管位置と段差」です。

あまり一般的ではありませんが、台所や洗面台などの床下コンクリートが、ほかの部屋よりも10mほど低くなっていることがあります。それは、床下の排水管に勾配をつけて、排水能力を上げるためです。そのため、床とのあいだの空間も必然的に広くなるので、排水管のレイアウトも比較的しやすくなります。

一方、床下に段差がないと、床と床下コンクリートとのあいだが狭いので、排水管のレイアウトの変更が難しくなります。また、水回りの変更をするには、排水管のレイアウトを変更できる空間をつくるために、床板を上げることになり、床上に段差が生じることになってしまいます。また、水回りは毎日使う場所だけに、設備も節水を意識しながら、慎重に検討する必要があります。リノベーションの優先順位第1位だからこそ、慎重に、丁寧に、リノベーション会社と相談しながら一つひとつ決めていきましょう。

 

「リノベ済」か「自分でリノベ」

中古物件のチラシを見ていると、「リノべ済」という言葉をよく見かけます。「リノべ」とは、リノベーションという言葉の略ですが、リフォームと何か違うのでしょう。あいまいに使われていることも多いのですが、実際は大きく違いがあります。

リフォームはクロスの張り替えやキッチンを新設備にするなど、見た目をきれいにすること。リノベは、壁を壊して間取りを変えたり、配管の位置変更や取り替えをするなど、住まいの性能・機能までアップさせることです。最近では、不動産会社が1棟丸ごと買い取り、構造・設備も一新して分譲マンションとして売り出すこともあります。

また、物件を現状のまま買い取り、自分仕様にリノベするのも一つの考えです。古かろう、悪かろうの価値観が変わりつつあるといえるでしょう。

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