マンション耐震性は「地盤」と「基礎」 【南海トラフ大地震に耐えられるのか?】

乾式戸境壁 マンションの基礎知識

マンションの耐震性と地盤

地震に強い

 

耐震性のポイントは地盤

これから先、長く住むことになるマンションは、耐震性も気になるところです。耐震性ということに関していえば、建築構造と同時に地盤も重要です。その建物がいくら地震に強くても、地盤が弱かったりすると意味がありません。大地震が起きたとき、埋め立て地などで液状化現象が起きてしまったとしたら、住宅が傾いたり道路が陥没したりしてしまいます。また、隣の建物の構造が1981年までの旧耐震設計の建物であれば、こちらに倒れこんでくることもありますから、真っ先に確認しなければならないのは、地盤の状態なのです。

かといって、湾岸エリアのマンションがすべてダメかというとそうではなく、明治に埋め立てがすすみ、すでに建物が建っているところやもともと島があったところはよしと考えましょう。注意してほしいのは、昭和40年代以降に埋め立てられた豊洲やお台場、みなとみらいなどです。それらの地域については、ハザードマップなどで調べたほうがよいでしょう。大都市圏の地質地盤の状態を見ていくと、地盤の固いエリアにはある種の建物が建っている場合が多いようです。

昔は木造の建物がほとんどで、今ほど耐震性を考えた建築技術や法律もなかったので、重要な建物を建てるには地震や台風などの自然災害の影響が少ない場所を選んだのでしょしかし、いまでは人口が増え、建築技術が進んでどこにでも家が建てられるようになりました。海や川を埋め立て、山を削り、どんどん住宅地が作られているのですが、こうした新しい造成地は地盤については疑問が残るところだということになります。ずっと昔に埋め立てられた場所なら、時代がたつとともに地盤もしっかりしてきますが、最近開発されたような場所、とくに人がはじめて住むような場所は、マンションの土地としては避けたほうがいいと思います。そのほか、霞が関、都庁や旧帝国大学、区役所や市役所、官公庁、山手線や中央線、銀座線、丸ノ内線など古くからある鉄道の周辺なども、地盤のしっかりした場所にありますし、大江戸線や副都心線の一番深いところを走っている地下鉄の駅周辺などは比較的強固な地盤のよいところが選ばれています。

マンションの杭

もちろん分譲マンションはどんな場所でもさらにしっかりと建てられるように、地盤の固さを表すN値50以上の支持層と呼ばれる固い地盤に届くまで杭基礎を打ち込んで、建物を支えています。杭が深く打ち込まれているほうが安心なように思いますが、それは間違い。杭の長さが長いということは、建物が沈んだり傾いたりしないように支えることのできる支持層がそれだけ深くにあるということ。つまり、地盤があまりよくないということです。杭が長くなればなるほど、地震のときの揺れも大きくなるので注意が必要です。地盤がもっともよい場所では、そうした杭基礎ではなく建物を面全体で支える直接基礎という方式が採用されています。そこでは地表近くに固い支持層が確認される場所になります。

地盤の状態を見るためにも、そこが昔どんな場所だったかを知りたい人は、江戸時代の古地図なども売られていますから、それを買って調べてみるといいでしょう。地盤だけでなく、その土地の歴史的な背景もわかるので、研究会が企画協力するマンションの土地調査では、私は真剣に見ています。不動産会社も、マンションを建てようとするときは地質調査をしていますから、地質調査書を見せてもらうか、コピーをもらえるようにお願いしてみましょう。たいていは見せてくれますし、その際には基礎工事についてよく質問してみると安心です。中古マンションにはそのような資料が残っていないケースがほとんどです。

 

「基礎」と「地盤」が重要

新築分譲マンションは鉄筋コンクリートの堅固な構造になっています。将来にわたって建物を保持するためには「基礎」と「地盤」が重要となってきます。

地盤とは、その土地の土の中の状態のことです。おおまかに、地中深い部分には大昔に形成された岩盤層、そしてその上に固い地層があり、最上部はやや柔らかい地層となっています。柔らかい地層にそのままマンションを建てると、マンションの重みで沈んでしまうことがあります。そこで、マンションの重みを支えることができる層(支持層)まで杭を打ち、建物を支えることになります。もちろん固い地盤が表層にある場合は、杭を打だない場合もあります。逆に埋め立て地などで支持層が深い場合は、深い杭を打つ場合もあります。このようにマンションは、その土地(地盤)にあった基礎が作られているのです。気に入ったマンションが絞られたら、地盤や基礎もチェックしておきましょう。また、マンションの建てられる場所が地形的にどのような場所であるかも重要です。その地域、場所がどういう場所であったのかは、古い地図などからもわかります。最近はインターネットなどでも見ることができる場合があります。

地名でわかる地盤

さらには地名からもある程度のことがわかります。たとえば「谷」が付いている地名は、低地であると考えられます。谷間(たにあい)には集落が集まりやすく、街の中心になることもあります。低地には昔は大雨の際に水がたまってしまうこともありました。たとえば渋谷の「渋谷駅」付近です。行ったことがある方はわかると思いますが、駅が周辺の一番低いところにあり、周囲は道玄坂や宮益坂などの坂になっています。昔は、大雨のときによく水がたまっていました。もし出水などが心配ならば、近所の方や古くからやっている不動産屋さんなどにも聞いてみましょう。昔は都内でも出水が多くありましたが、最近では治水なども完備してほとんど心配がなくなったエリアも多くあります。地盤や地形のことで何か気になる点があった場合は、どのように対策がなされているかも調べてみましょう。水の出やすい場所に建てられたマンションは、その分排水や防湿対策が重点的に行われていることもあります。ガケの付近や斜面などにも、昔から集落などがある場合があります。昔から人が住んでいる場所は地形的に安定していると考えられます。お寺や神社、遺跡なども安全な地形の目安になるかもしれません。

また、埋め立て地や湿地であった場所でも、しっかりした基礎構造になっているのなら心配はいりません。特に最新のマンションでは支持層までしっかり杭が打ってあることが多いので、安心といえるのではないでしょうか。もしさらにくわしく知りたい場合は、国土交通省や各自治体などが発行している「ハザードマップ」があります。これは書店や自治体などで販売していますし、インターネットなどでも見ることができます。

①地盤のチェックポイント

建築基準法では、マンションの基礎は「良好な地盤に達していなければならない」となっています。では「良好な地盤」とはどんな地盤でしょうか? マンションの地盤は、堅さが「N値」によって表されています。N値とは、地盤の固さを表す数値で、N値Iとは長期間にわたり1平方メートルにつき1トンの重さに耐えられる地盤です。N値が高いほど堅固な地盤になっています。「良好な地盤」とは、N値が50以上の地盤です。この地盤がどんなに深い位置でも、マンションはその地盤まで基礎が作られることになっています。N値が50以上の地盤が5メートル以上続く場所が支持層とされています。

マンションの地盤調査でもっともよく使われる地盤調査の方法が、「ボーリング調査」です。ボーリングは専門会社が行い、土のサンプリング、標準貫入試験、地下水位測定などを行います。このボーリングデータは、マンションのモデルルームなどにある「構造図」に載っています。そのデータによって固い地盤までの距離がわかります。また、マンションのパンフレットに基礎杭の長さが書いてある場合もあります。

②マンションの基礎

マンションの基礎は、建物の重量を支えるために、堅固な地盤まで杭が作られ、その上にマンションが乗っている構造となっています。杭についても耐震性や液状化に対して考えた強度をもたせています。杭は、地面に穴を捐ってそこにコンクリートを流し込む「現場打ち杭」と、すでにできている杭を埋め込む「既製杭」があります(図8-2参照)。マンションの規模や現場の状況などから、工法が異なってきます。マンションが大きくなるほど重量が増えるため、基礎もしっかりしたものが必要となってきます。地盤が軟弱な場所では、杭が50メートルを超える場合もあります。杭の長さよりも適切に施工されているかどうかが重要となってきます。

直接基礎
このタイプの基礎は、通常、建物の柱や壁の下にコンクリートの基礎ブロックや基礎梁を配置して、建物の重量を地上盤に分散させていただきます。直接基礎は地盤が比較的強固な場所に建物を建てる際に一般的に使用されます。 特に硬い土壌や岩盤の上に建物を建てる際に有効です。
杭基礎
杭基礎は、地盤が弱い場所や浅い土壌の上に建物を建てる際に使用される基礎の一つです。 、建物の荷重を介して地盤に伝えます。杭基礎は地盤の強度に依存せず、軟弱な地盤でも安定した建物を建てられるため、地震や地盤の沈下が比較的起こりやすい地域で頻繁に使用されます。
選択の基準
建物の基礎を選択する際には、地盤の性質に応じて適切な基礎タイプを選択することが重要です。地盤調査が行われ、地盤の強度や沈下傾向が評価されます。直接基礎は、地盤が強固である場合に適しています、比較的浅い基礎が可能です。 一方、杭基礎は地盤が弱い場合や建物の重量が大きい場合に適しています。
地震対策
地震発生地域では、地震に対する建物の耐久性を強化する必要があります。この際、地盤と基礎の組み合わせが重要です。 杭基礎は地震時に地盤の動きに対して比較的柔軟で、地震による建物の被害を軽減する役割を果たします。
コストと時間
直接基礎は一般的にコストと時間が比較的低いです。一方、杭基礎は建設に時間と費用がかかります。選択は建物の要件、地盤の状況、予算に基づいて行われます。

 

建物の基礎は、その安定性と地盤に合わせた適切な選択が非常に重要です。地盤調査と建築設計のプロセスにおいて、建築家やエンジニアは地盤の特性を考慮し、最適な基礎タイプを決定し地盤に合った基礎を選択することは、建物の安全性と耐久性を確保するために必要なステップです。

 

④地盤の液状化

地震によって地面が激しく揺れると、「液状化」といって地面が軟らかくなり、地下水が吹き出てくることがあります。これは埋立地や地盤の緩いところ、川や沼だったところなどや地下水位の高い場所などに発生することがあります。

これは地中で結合している土や砂などが、地震の振動でばらばらになり、土中に含まれている水分が砂の圧力によって地表に噴出します。地面は、揺れている瞬間は非常に軟らかくなります。液状化によって、地盤沈下が起こったり、地盤自体が液状化して建物が倒壊、不同沈下などの被害が出ることがあります。また、地中に埋没している建築物のうち、マンホールなど軽いものが地表に浮いて出てくることもあり、地中の上下水道管やガス管などに被害が出ることもあります。戸建ての住宅などは、地中の固い地盤まで杭を打っていないことが多いので地震の際の状況によっては建物が傾いたり、ヒビが入ったりなどの被害が出ることがあります。これに対してマンションでは、固い地盤までしっかりと杭が打ってあるため、地面の表面が液状化してもマンションの重量は杭によって地盤の上に載っているため、液状化に対して安全な構造となっています。戸建ての住宅が土の上に載っているのに対して、マンションは固い地層の上に杭で建っていることになります。ただし、液状化による地盤沈下が起こった場合は、マンションでもエントランスなど建物と地面をつないでいる箇所に破損、ヒビ割れ等の被害が出ることがあります。マンション自体には被害がなくても、周辺に液状化か起こるとガス・水道等が使えなくなることがあります。

また埋立地でも、最近は液状化対策として地盤改良の技術が発達しているので、最近造られた大型埋立地などは液状化の被害が非常に少ないことがあります。地盤改良の方法としては、地中に発生した液状化による水分をドレンによって抜く設備を設ける、地面を圧縮し、経年によって起こる地盤沈下を先に起こしてしまう、埋立用の土にセメント等を混ぜて地盤を固めてしまう、などさまざまな方法があります。ですから、埋立地だからといって必ずしも液状化か起こるとは限りません。その場所にあった適切な地盤改良が行われ、適切にマンションを支える杭が入っているかどうかが重要となってきます。マンションの杭には、液状化に対する強度なども考えられていますので、安心と考えられます。液状化は、昔沼や池、水田であったところでも発生することがあります。これは古い地図などを入手するとわかることがあります。しかし、時間の経過によって地盤が変化していることもあり、また、埋立てから何十年も時間が経過すると土壌が固まり、液状化か起こりづらくなりますので、一概には危険であるとはいえません。長い間地震によって液状化か起こっていなければ、安心なのではないでしょうか。

 

液状化と地盤沈下に備える

東日本大震災では東京近郊でも液状化と呼ばれる現象で大きな被害が見られたことから、埋立地は危ないとの認識が広まりました。一般的に低い場所にある土地は地盤が軟弱そうで、地盤沈下のリスクが高いのでは、と考えられています。それは間違いないのですが、もう一つ、地盤の良し悪しに関して併せて覚えておきたい点があります。高台だからどこでも地盤が強固であるとは限らないという点です。実際、東日本大震災では、内陸部の高台でも大きな被害を受けました。

気を付けたいのは、高台の造成地です。造成地は自然の地形ではありません。宅地開発会社が宅地として分譲するために、山を削り、土を盛ってつくったものです。山を削るのは切り土、土を盛るのは盛り土と呼びます。造成地の中でもとりわけ注意したいのは、この盛り土部分です。切り土部分は人の手が加わっているとはいえ自然地形ですが、盛り土部分は違います。それだけ地盤は不安定であるといえます。大きな谷を盛り土で埋め立てて、宅地にすることがあります。液状化被害を受けた土地が海の埋め立て地であるとするなら、これは山の埋め立て地です。文字通り、谷埋め盛り土と呼ばれています。この谷埋め盛り土は、地震の揺れで滑り落ちて、その上に建つ家が流されるという被害を受けることがあります。仙台近郊の谷埋め盛り土の宅地では、東日本大震災のときばかりでなく、それ以前の地震でもこのような被害を受けている場所があります。

自然地形の斜面を、一部切り主し、一部盛り土し、切り主部分と盛り土部分を併せ持つ平坦な宅地にする例も少なくありません。この場合は、自然地形の一部である切り主部分と人工地盤である盛り土部分とが、一つの敷地の中に混在します。この異種地盤の混在は、先ほどの谷埋め盛り土と並んで危険性の指摘される典型例です。多くの場合問題はありませんが、盛り主部分だけが軟弱地盤なため、そこだけ沈下を起こし、家が斜めに傾きながら沈み込んでいく不同沈下と呼ばれる現象を起こす恐れがあるのです。

建物全体が均等に沈み込むならともかく、傾きながら沈下すると、建物に無理な力が加わり、基礎や外壁にひび割れが生じたり、室内では壁のクロスが剥がれたりします。傾きが小さければ、建物の造りの問題ととらえてしまうかもしれません。この不同沈下は、地震の揺れから30分とか1時間で引き起こされる液状化とは違って、長い時間を掛けて進行していきます。それもあって、地盤の問題とは気付きにくいという特徴を持っているのです。

こうした地盤災害は同じ場所で繰り返されるのが常です。不同沈下にしても、液状化にしても、その傾向を見せています。したがって、過去にどのような地盤災害がそこで引き起こされたのかという情報は、その場所の地盤リスクを知るうえでとても役に立ちます。地元に通じた人が頼りになるのは、地盤災害に関するこれらの有用な情報も持っているに違いないからです。

 

●震度7まで耐えられる!!

現在、建築基準法での耐震基準は、約震度7強の地震にまでは耐えられるようになっています。その学者先生のお話ですと、我が国の地震解析は関束大震災以降を含め、それ以降に起きた地震の振動を基にして構造設計基準を改正してきているが、今まで全く経験していない振動の地震が来たら大変なことになると言われました。例えば、メキシコ沖地震がそうだそうです。

この地震の揺れは、非常にゆっくりと揺れ、わが国が今まで経験したことのない揺れの地震で、このような地震発生の想定はなされていないのが恐ろしいと言っておられました。わかりやすく言いますと、今まで日本で起きた地震は振幅の時間が早いので、超高層ビルも柳のごとくしなって揺れを吸収し、短時間で元に戻るようにしていますが、振幅の時間が長いと柳のごとくしなっても元に戻らずに、極端に言えば建物が折れてしまうということです。

大地震でも振幅時間の短い「カタカタ」地震なら、現在の耐震基準でも大丈夫ですが、「ユラーリ、ユラーリ」と振幅時間の長い大きい地震がきたら、超高層ビルはかなり危ないということです。地震と構造の権威の方が、こっそり私に話してくださったことですので、うそとは思えません。ですので私は、超高層ビルや超高層マンションには否定的なスタンスなのです。

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