分譲マンションの構造を理解していますか?

躯体マンション マンションの基礎知識

3つの構造の特徴をチェック

新築分譲マンションの構造は、構造を形成する材料・によって分類されています。構造種別にそれぞれの特徴について紹介しましょう。

 

RC造

RC造

鉄筋コンクリート構造のことです。新築分譲マンションの構造で、もっとも多いタイプとなります。鉄筋を組んだあと、型枠を組んでコンクリートを流しこむので、自由に形をつくることができます。まわりがコンクリートで、なかに鉄筋が入っていることで、互いの短所を補い合う構造になっています。鉄筋は引っ張りには強いものの圧縮には弱い性質をもっています。一方、コンクリートはその逆で圧縮に強く引っ張りには弱いものOS造に比べてもろいとされていて、そのために荷重に対する力を割りまして設計することになっています。柱、梁、屋根、壁などの部位によって、鉄筋のまわりを囲むコンクリートの厚さが決まっています。

S造

S造

鉄骨造のことです。RC造の次に多く見られる構造です。断面の形がH型、角型などの鉄骨を柱や梁などに用います。鉄骨は火災に弱いため、耐火被覆材でコートしたうえに、さらに仕上げ材で覆う必要があります。工期が短く、人きな空間をつくるのに適した構造です。建物自体が軽いので地盤への負担は少ないのですが、風や大型車の通行によって揺れることがあるので、振動を抑える対策をとる必要があります。ここ20年では大手でデベロッパーの物件では、このS造はありませんでした。

 SRC造

SRC造

RC造とS造を組み合わせた、鉄骨鉄筋コンクリート造のこと。RC造の柱、梁、壁のなかに鉄骨を入れています。柱を細くできるにもかかわらず、頑丈な性質なので中高層マンションではよく見られる構造です。ただし、RC造やS造よりもコストが割高になってしまいます。ラーメン構造はリフォームに有利壁式構造はスッキリした空間に構造形式には次の2つがあります。

 

圧倒的に多い「ラーメン構造」

また、構造形式に以下の2つがあります。

ラーメン構造

柱と梁で骨組みをつくる構造です。低層から高層まで幅広いマンションに採用されています。柱と梁の接点をしっかりと接合してフレームを形成するので、耐力壁や筋交いなどを入れなくても耐震性が生じます。壁がない広々とした空間がつくれますし、取り払えない壁が少ないのでリフォ-ムのときの自由度が高いといえるでしょう。しかし、室内には梁や柱のでっぱりが存在するため、家具の配置がうまくいかないこともあります。ちなみに、「ラーメン」とはドイツ語で「額縁」「枠」という意味です。

壁式構造

ラーメン構造が柱や梁という「線」で耐力を出すのに対し、こちらは「面(壁)」で耐力を出します。壁で建物を支えるので、ある程度の大きさを確保しなくてはいけません。そのため開口部の大きさが制限されたり、リフォームやリノベーションでは取り払えない壁が出てくることもあります。ただし、ラーメン構造のように柱や梁が室内にでっぱることがないので、すっきりした空間になります。基本的に5階建て以上の建築物では採用されることはありません。

 

どのように建てられたかをチェック

構造チェック

新築分譲マンションは鉄筋コンクリートといって、押しに強いコンクリートと引っ張りに強い鉄筋の組み合わせで建物の躯体ができています。鉄筋は縦、横にめぐらされ、そこにコンクリートが流し込まれて柱や壁ができています。鉄筋の太さや数などは、法令や金築基準法で厳格に決められており、鉄筋コンクリート造のマンションの強度が保たれています。その鉄筋の数が足りないと、マンションの強度が不足して、最悪の場合自重によって崩れてしまうことにもなりかねません。とくに1981(昭和56)年に建築基準法が改正になり、「新耐震基準」と呼ばれるそれ以前より厳しい基準となっています。その厳しい基準も偽装されて建物が建ってしまってはどうしようもありません。デベロッパーは、設計・建築・価格などに関する情報を積極的に公開するとともに、購入者のほうでも厳しいチェックが必要となってきています。現実的に「姉歯事件」といいうものもありました。

しかし、これらを建築の素人とである一般の検討者の方が、確実にチェックする方法はありません。図面や構造計算書を見せられても、現場での施工が異なっていたら、絶対にわからないのです。デベロッパーを信じて購入するしかないでしょう。その意味では、やはり信頼できるデベロッパー、あるいは、何かあっても責任をとることができるデベロッパーを選ぶことが重要です。

購入時のチェックリスト

マンションを購入する際のチェックポイントとして、次のことに気をつけてみましょう。

・他の同じような条件のマンションに比べて著しく価格が安い場合はその理由をチェック

・無理に短縮した工期で工事をしていないか・経験と実績のあるデベロッパーを選ぶ・設計・施工などの会社もチェックする

・施工会社はマンションを数多く手がけているか

・そのデベロッパーや施工会社などの建物に過去に不具合がなかったか

・過去にクレーム等があった場合、その対応などについてもチェックする

建築現場を見学できる場合は積極的に見て、その際は専門家に説明を受けましょう。また、建築士など専門家にチェックをお願いする方法もあります。

 

間取りにも構造の影響が

マンションの専有部分の広さは「壁芯」といって、壁の中心を囲んだ面積で表されています。しかし、登記簿では「内法(うちのり)」といって壁の内側の面積で表します。ですから70㎡のマンションなのに、登記簿では64mしかない、ということになるわけです。「フラット35」の融資を受ける際の広さの基準は、登記簿面積が基準になりますので、たとえば融資基準が50㎡以上の場合、パンフレットでちょうど50㎡のマンションだと、登記簿上は50mに満たないことがあるので注意が必要です。検討の際には、必ず営業マンに確認しましょう。

マンションの広さも重要ですが、空間の大きさも大切です。具体的には、上の床面から下の床面までの高さである「階高」を見る必要があります。階高が十分ないと、天井や床を二重構造にしたときに、十分な居室空間が取れないことがあります。居室の「間取り」はさまざまなタイプがあります。ひと昔前は100㎡基準という広い間取りが多かったですが、最近ではマンション価格の高騰のあおりを受け、専有面積は確実に狭くなっています。また、マンションの間取りを家族構成の変化によって変えることができる「スケルトンインフィル」という構造も増えています。これは躯体部分(スケルトン)と内部の床、壁、設備などが分離していて、リフォームなどがしやすい構造になっています。

マンションでは、給排水管やガス管などを上下階に通す(縦管)ときに、「パイプスペースPS)」という空間をつくって通します。キッチンやバスなど水廻りからは、排水がこのパイプスペースに流れていきます。住戸内の排水管(横管)には排水が流れるように傾斜が設けられていますが、あまり遠いと、将来排水管が劣化してきた時に水の流れが悪くなることがあります。また、二重床の高さが低いと十分な傾斜が取れないので排水が悪くなることもあります。マンションの広さを考えるときは「有効面積率」をみることが重要です。これはマンションの専有部分の中で、有効に居室等として使われている面積、空間をみることです。有効面積を大きく取りやすい形状に「ワイドスパン」があります。これは専有部分の入り口(玄関)に対して、横に広い形状で、廊下等が少なく、各居室が広く取れるという利点があります。外に面している部分が多いため、窓を広く取れ、採光がしやすく明るい室内となります。これに対して入り口に対して縦が長い形状は「うなぎの寝床」などといわれることもあり、廊下が長く、ワイドスパンに対して窓も少ない間取りとなってしまいます。全体の比率からするとワイドスパン物件は少ないので、希少価値もあります。

室内の空間も重要です。マンションは構造上、室内に柱や梁が出ることがあります。これらの出っ張り具合によっては、部屋が使いづらかったり、デッドスペースとなってしまうこともあります。モデルルームなどでは梁が表現されていないこともあるのでよく確認しましょう。最近では「アウトフレーム」といって梁を室内に出さない工法も採用されています。主にバルコニー側の居室の梁を室外に移動させます。室内に張り出しがないので隅々まで有効に使うことができます。さらに、上にある梁を下にする「アウトフレーム逆梁工法」もあります。「アウトフレーム」を採用すると、ハイサッシの採用が可能です。サッシの高さが高くなるだけで、室内空間の体感は大きく変わるものです。また、「ボイドスラブ」という床スラブ厚を厚くして小梁をなくす工法も増えています。室内の小梁がなくなりますが、スラブ厚が厚くなるので階高を高くする必要があります。

 

【スケルトンインフルの現実】

スケルトンインフルのマンションは床とスラブの問を25〜30センチ程度空間を取り、水回りをどこへでも持っていかれるようにし、顧客の要望どおりの住戸プランを実現します。顧客は自分の要望どおりのプランが実現して大変喜びますが、上階や左右の住戸プランはわからないわけで、入居後、寝室の上に浴室やトイレがあったり、また寝室の隣が隣戸の浴室だったりして、今度は音に悩まされる結果となります。デベロッパーは、セールストークで自由設計できますと言って売るわけですから、客も付きやすい、売れやすいわけですが、設計者やゼネコンはたまりません。顧客と打ち合わせを何回かして、工事費の見積もりを出して了解を取り、入居後はクレームに悩まされるのですから。

 

「耐震偽造問題」覚えていますか?

あなたは「耐震偽装問題」「姉歯問題」をご存じでしょうか?

2005年、世間を震撼させた耐震強度偽装問題は、該当物件にお住まいの方や関連業界だけでなく、現在マンションに居住している方、これからマンション購入を考えている方すべてに大きな衝撃を与えました。当時は社会問題となり、連日テレビで大きく取り上げられました。

日本は地震が多いため、建築基準法で建物の強度が定められています。現在の耐震基準は1981年にできました。それ以前の耐震基準と区別するために新耐震基準とよばれています。新耐震基準にのっとって建てられていれば、震度5程度の地震では建物は損傷を受けません。震度6程度の場合でも倒壊しないとされています。しかし、耐震強度偽装マンションは、震度5で倒壊する危険があることがわかりました。耐震強度偽装事件では、その偽装を検査機関が見抜けなかったことも問題になりました。それだけ、構造計算は複雑で難解なのです。そもそも、素人がそこからなにかを読み取ることは無理と悟った方も多いでしょう。

 

事件以後の新築物件は信頼がおける

例の事件で、当時はマンション購入に二の足を踏んでしまう人もいるかもしれませんが、実は事件発覚後の物件は「安全面での信頼性は高い」といえます。建築基準法等に適合した建物かを確認する建築確認申請は、事件発覚以前はスムーズにおりました。しかし、事件後はかなり時間がかかるようになったのです。3階建て以上になると構造計算書が必要になりますが、かつては2~3日、長くても1週間で確認申請がおりたものでした。しかし、現在は2か月、3か月かかる場合もあります。それだけ耐震面を含め各種のチェックが厳しくなった結果でしょう。事件以後の物件は、構造面では安心できると考えていいと思います。

また、賃貸マンションを含め、分譲の中古マンションでも同じことがいえます。事件発覚前に建てられた物件の管理会社・販売会社は居住者に安心してもらうために構造計算について「再確認」「再計算」をしています。購入希望マンションがそうした対処をされているのか確認してみれば、安心して選択肢のひとつに加えることができます。

基準は昭和56年以降の物件

私は、中古では昭和56年6月1日以降に建築確認申請が出されたものを選ぶようおすすめしています。昭和56年の改正建築基準法で、新耐震設計法が導入されているからです。建築期問などを老洽一すると、実際の分譲は昭和57年夏以降ということになるでしょう。建築確認の申請時期は役所の窓口で調べることができます。姉歯元建築士による耐震構造設計の偽造問題が社会を震撼させましたので、すっかり耐震構造という言葉が一般的に定着しました。姉歯事件で盛んに話題になっているのは、平成10年に改正された建築基準法です。事件発生当初は、平成10年改正の新建築基準法で建築確認作業が自治体から民間に任されたせい、という話でスタートしましたが、姉歯元建築士が計算ソフトを改ざんするという手法で大田区のマンションで偽造を行ったことを国会で発言、自治体も偽造を見抜けなかったことが判明しました。

あれだけのことが起きたわけですから、第二、第三の姉歯、第二、第三のヒューザーがいてもおかしくない、という疑いの目が不動産業界に向けられても仕方がないところではあるのですが、あの事件発覚後も投資需要は衰えていません。これまでも、数多くの手抜き工事による被害は繰り返し報道されてきました。つまるところ、欠陥物件を平気でつくったり、売ったびするかどうかはその業者の問題であって、制度の問題ではないのです。無論、悪徳業者を排除する仕掛けが制度上設けられていないということは問題ですが、平成10年の改正によって、不動産業者がいっせいに不良物件を建てるようになったわけではありません。不良物件を建てたことが判明して信用を失うことのはうが、一般的にはダメージは大きいのです。

だからこそなのでしょう。事件発覚以降、大手の不動産会社は構造設計を担当した設計事務所が姉歯ではないこと、建築確認が日本ERIやイーホームズではないことなどを必死でアピールしています。ただ、この平成10年の改正でも、実は昭和56年の新耐震設計法は大きくは見直されていないのです。というのも、阪神大震災であれだけの建物が倒壊しても、昭和56年基準で建てられた建物の被害は比較的軽微だったからです。

中古物件は塗装状況から判断する

中古物件の場合、外観の美しさでその物件の安全性を予測することができます。「美しさ」とは、タイル張りやレンガ張りなどの洒落た外装ということではありません。定期的に塗装工事をおこなっていれば、十分「美しい」のです。築年数よりも古く見えるか、新しく見えるかはメンテナンスしだい。メンテナンスがきちんとされているということは、物件の老朽化が抑えられていることを意味します。建物は風雨にさらされることで劣化します。極端ではありますが、建築中から劣化が進んでいるといえるのです。

コンクリートはアルカリ性ですので、なかの鉄筋や鉄骨はさびることがありません。しかし、酸性を帯びた雨がコンクリートにしみこむとアルカリ性が少しずつ中和され、100年経過すると限りなく中性になり、なかの鉄筋や鉄骨にサビが生じてきます。サビの付着によって鉄筋や鉄骨が膨張するとコンクリートにビビわれを起こしてしまうのです。「コンクリートの耐久性が100年」といわれるのは、こうした理由によります。塗装でコーティングすることで、コンクリートが中性に傾くことを防ぎ、劣化を遅らせることができます。塗装の美しさとは、建物の強さにつながるのです。

 

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