契約を結ぶまで
購入申し込み時の注意点
買いたい物件が決まったら、購入の申し込みをします。購入の申し込みは、通常販売事務所で行われますが、そのときに5万〜10万円程度の「申込証拠金」が必要になってくる場合があります。これは購入する意思があることを表示する目的で行われているもので、この後の「契約」に至らなかった場合は、返ってくることになっています。しかし、最近では新規販売の物件でしかこのような「申込証拠金」はやっていません。
「仮契約」「覚書」は法的拘束力のあるもの
「仮契約ですから」「ただの覚書ですから」と、「本契約」ではないことを強調し、あたかも法的拘束力がないかのような印象を与えて署名捺印を迫る業者がいます。しかし、「仮契約」であろうと「覚書」であろうと、それは「仮の書類」でも「ただのメモ」でもなく正式に公的に機能する法的拘束力をもつものなのです。「仮の契約ですから、申込金の10万円は事情があって買えない場合にはお返しします」といわれて署名捺印したのに、キャンセル時にはお金が返ってこないことがあります。「仮契約」であっても、その条項のなかに、トー方的な契約解除の場合には申込金等は返さない」と入っていることがあるからです。仮契約・覚書であっても、署名捺印したら「正式な書類」。しっかりと内容を理解してから署名捺印してください。
契約前に行われる「重要事項説明」
契約前に、販売会社は購入予定者に対して物件や取引条件についての重要事項を、同社内の「宅地建物取引主任者」という資格をもった者によって、書面に示して口頭で説明しなければならないことが法律で決められています。その「重要事項」についてですが、法律で細かく決められていて、最初に目にしたときは難しい印象を受けるかもしれませんが、購入を検討していたときの内容とこの重要事項に違いないかを確認しなければなりません。
手付解除と融資利用の特約
重要事項説明書の中から注意すべき部分をみてみましょう。おカネに関する取り決めの中でも、解除に関する部分は重要です。その中の1つ「手付解除」と「融資利用の特約」について説明します。
・手付解除
・融資利用の特約
重要事項説明のチェックリスト
・宅建主任者の資格をもった人が説明したか
・敷地の権利関係はどうか(敷地に借地権等はないか)
・予定している建物は都市計画法、建築基準法に合ったものか
・上下水道などが整備されているか
・共用部分・専有部分の利用や管理のルール
・計画修繕積立金・管理費等はいくらか
・どういう管理会社か
・代金以外に授受されるお金はあるか
・契約を解除するには
・損害賠償の予定や違約金は
・手付金等の保全措置は
・瑕疵担保責任の履行について
・住宅ローンを使用した場合の規定
売買契約を結ぶ
売買契約書のチェックリスト
重要事項の説明を受け、その内容について買主が了解したら、「売買契約」を結ぶことになります。売買契約を交わしたら、買主・売主が合意のうえ行ったということで、今までと違って簡単に解除できなくなりますので、さらに注意が必要です。売買契約は「重要事項説明書」と同様、宅地建物取引主任者の記名押印した書面を交付しなければならないことが法律で定められています。これも難しい印象を受けますが、基本的な事柄をおさえておけば良いと思います。また、売主が不動産会社である場合(これがほとんどだと思いますが)は、法律にくわしくない買主(消費者)を守るために契約事項に制限がされています。これも合わせて確認しておく必要があるでしょう。
手付金について
通常契約締結時に「手付金」を買主が売主に支払います。この手付金は、「解約手付」といい、買主がすでに支払った手付金の返還を求めないことにより、また売主がすでに受け取った手付金の倍額を買い主に返すことにより売買契約を解除することができる性格をもっています。ただし、すでに相手方が契約に定められた約束ごとを実行している場合は、手付けによる契約の解除はできません。
瑕疵担保責任について
この「瑕疵」とは欠陥のことで、買主が売主から知らされていなかった「隠れた欠陥」のことをさし、具体的には雨漏りなどです。この隠れた欠陥が判明した場合、買主は売主に対して物件の修補や損害の賠償を求めることができますが、住むことができないほど重大な欠陥の場合は、契約を解除できることになっています。売買契約書で売主が不動産会社の場合は、買主(消費者)保護のためにその内容にさまざまな制限がされていることが法律で定められていますが、この瑕疵担保責任も売主が不動産会社の場合は2年以上の責任を負うことが定められています。
また、新築の場合は、建物の主要構造部分(基礎・柱・屋根・外壁等)については売主不動産会社)は、10年間責任を負わなければならないことが法律で定められています。重要事項説明書や売買契約書でもチェック事項になっていますので、確認してください。
契約の解除について
いったん契約を締結すると、一般的には、片方の都合で簡単に契約を解除できないことになっています。契約の解除には下記のようなものがあります。
クーリングオフ
売主が不動産会社の場介で、かつ一定の条件を満たす場合に限り、契約を解除することができる
手付解除
相手方が契約の履行に着手するまでは、手付金の放棄、または倍返しによって契約を解除することができる
危険負担
人災による物件の滅失等により建てられなくなった場合は、買主は契約を解除できる
瑕疵担保責任
物件に重大な欠陥などがあった場合に、それが原因で契約の目的が達せられない場合は、買主は契約を解除できる
ローン特約など
買主に落ち度がなくても住宅ローンを受けられなかった場合は、買い主は契約を解除できる
合意
意当事者の合意に基づく条件で契約を解除することができ
売買契約書のチェックリスト
・売買代金、手付金等の額・支払日・手付金は売買代金の20%以内か・所有権の移転、引き渡しの時期・契約締結後、引き渡し前に物件が天災等により滅失、き損した場合の取り扱い・手付解除は可能か、いつまで手付解除が可能か・手付解除に制限はないか・違約金や損害賠償の予定額の合計は売買代金の20%以内か・瑕疵担保責任の期間は2年以上か・主要構造部分等の瑕疵担保責任の期間は10年以上か(新築の場合)・固定資産税・都市計画税・管理費の精算について・住宅ローンを利用する場合は特約が付されているか
◆新築マンション契約までの流れ
↓
【物件の絞りこみ】
↓
【物件確認】
・モデルルーム見学
↓
【予約申し込み】
・申し込み書に署名捺印
・申し込み証拠金10万円ほど必要
↓
【契約前】
・重要事項説明書の説明
↓
【契約】
・不動産売買契約書に署名捺印
・手付金の支払い
↓
【登記準備】
・物件によっては中間金の支払い
↓
【入居説明会・内覧会】
↓
【入居】
↓
【登記・登記済み権利証受領】
◆中古マンション契約までの流れ
↓
【物件の絞りこみ】
↓
【物件確認】
・現地見学
↓
【契約条件の調整】
・管理費・修繕積み立て金の未納確認
・未納の場合、売主・買主のどちらが負担するかなど
↓
【契約前】
・重要事項説明書の説明
↓
【契 約】
・不動産売買契約書に署名捺印
・手付金の支払い
↓
【登記準備】
↓
【入居】
↓
【登記・登記済み権利証受領】
物件よりも業者の信頼性を重視
マンションを購入するにあたって、各段階で必要な手続きがあります。慣れない作業ですし、金額が大きいので、もれなくスムーズに進めたいものです。基本的には、デベロッパーや仲介業者などが、段取りを説明してくれますので、あまり心配はいりません。逆にいうと、全体の流れを説明せずに、いきなり「じゃあ、契約に入りましょう」「ほかにも候補者がいるので早めに」などとせかす業者は要注意です。契約までの最大の注意点は、「業者の信頼性」といえます。物件だけに気をとられてしまい、業者の対応に目を配らない人もいるようです。しかし、物件そのものはもちろんですが、その業者に対して「これだけのお金を払って(預けて)安心か」が契約前に確認すべき最重要事項といえます。
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