モデルルームの豪華なオプションに惑わされるな
新築分譲マンションの広告を目にすることは多いと思いますが、「駅から徒歩3分!!」「駐車場100%完備」などと目を引くキャッチコピーが並ぶなか、よく見ると「予告広告」と書いてある場合があります。
予告広告とは建築確認申請前なので、価格や戸数が決定しておらず、それらを記載しないまま配るチラシのことです。つまり、簡単に言えば「まだ、未定な部分はあるけれどだ、近いうちに販売するからね!!」というものです。ただ、販売時期だけは明記しなければいけないので、あなたが住みたい地域であれば早くからチェックすることができます。逆に「本広告」は、最高価格、最低価格、最多価格帯等が掲載されているほか、間取りなども掲載されています。
ただし、販売会社は予告広告を出した後、一般的にはモデルルームを開いており、そこに行けば、「認可前ですが」といいながら、価格見通しや共用施設の内容、間取り例などを教えてくれます。気になるなら、予告広告の時点で、モデルルームに足を運ぶべきです。
モデルルームは、100戸規模のマンションであれば、間取りは1種類のはずがありません。多少ゴージヤスにつくってあるのだと、引き算してみるようにしましょう。マンションは管理費・修繕積立金や管理計画なども事前にチェックすることが大切です。入居後のアフターサービスなども大手不動産会社なら充実しており、安心感があります。立地、価格、間取りの条件とよく相談して、広告を上手に使いましょう。
モデルルームは2種類ある!!
分譲マンションのモデルルームには、完成予定の建物とは別の場所に作るものと、マンションが完成してから建物内に作るものの2種類があります。
建設予定地とは別の場所に建てるモデルルームは、建築確認申請がおりて工事が始まる段階でオープンするので、たいていは実際の建物の完成まで時間がかなりあるマンションです。以前は、現地からすぐそばの場所に販売センターを設置してその中に作ることが多かったのですが、最近は会社帰りにも立ち寄れるように市内中心部などの交通の便が良い場所に、何件かのマンションのモデルルームをひとまとめにしてマンションギャラリーを作るケースも多くなっています。
これだと、マンションごとにモデルルームを建てるコストや営業マンの人件費も削減可能です。また、一般の方にとってもお買い物や遊びに出かける休日の合間や平日の会社帰りに気軽に見学に行けるメリットがあります。しかし、現地の様子や周辺の環境などが確認できませんし、希望するタイプのモデルルームがない場合もありますので、現地の見学は不可欠です。建物がかなりできてくると不動産会社の人が同行の上、ヘルメットをかぶって建設中の建物の中に工事が休みの土・日に入れてもらえることもあります。
また最近は、建物が完成してから建物内の一室をモデルルームにしてカーテンや照明、家具を配置し、実物を見てもらうケースも増えています。建物内に設置したモデルルームだったら、もしも希望するタイプの部屋が公開されていなくても、事前に担当の営業マンにお願いしておけば検討したいお部屋の実物を見せてもらえることがあるので、景観や日当たりなども確認しやすくなります。ただし家具がコーディネートされた部屋でなく、照明も入っていませんから、暗くなってからの見学はできない場合が多いと思います。また、エアコンが設置されていない場合もあります。
豪華なオプションには注意
モデルルームに飾られている設備も備品も家具も、みんな高価なものばかりです。ここで見た目の豪華さに惑わされないようにしてください。造作食器棚や食器洗浄乾燥機がついていて「素敵!!」と思ったら、「OP」と表示されていることも多いものです。つまり、別料金の「オプション」だつたということがあります。ここで標準装備かオプションかをしっかり確認しないと、行き違いが発生してしまうケースもあるので注意が必要です。
標準装備だけのモデルルームなんて少ないと思います。オプションで100万~200万円、家具、電化製品だけで200万円はかけているはずです。だから、はじめてモデルルームを見学に行くと、どうしてもそちらに目が行ってしまいます。でも、何回か見学してみると、高級家具や調度品に目が行かなくなって、全体の雰囲気を掴めるようになります。もちろん、はじめの感動は薄れていきますが、それでもこのマンションに住みたいと思い、住んだ後の生活が楽しく想像できれば、それはあなたに合ったマンションだと思います。
また、モデルルームは仕様や設備、内装などを見るだけでなく、部屋全体の広さや天井高を実際に体感する場でもあります。ただ不思議なことに、家具が置いてあると狭く感じるはずなのに、かえって広く見えることがあります。シングル向けだとベッドもテしフルもひとまわり小さなものを置いていたり、布団とか掃除機とか現実の生活に必要なものが置いていないケースがほとんどです。実際に普段の生活の行動パターンや必要なものを考えながら広さを体感してみましょそのほかにも、建物内のモデルルームだったら、前の道路や隣の建物との位置関係なども確認します。窓からの眺めや日当たりを考えれば、目の前の建物との距離と高さの関係は重要です。古い建物は天井高が低いのですが、最近の建物だったら、1階あたり3m程度。目の前の建物が3階建てなら9mとして、できればその建物との間は同じ距離の9m以上は離れていてほしいところ。道路を挟んでいるなら、道路と歩道の幅や、マンションがその敷地の中で道路からどれくらい離れて建てられているかも確認しておきましょう。
・モデルルームを上手に利用しましょう
建物内のモデルルームでなくても、完成予定の模型か、敷地配置図などで、外観だけでなく周囲の建物との位置関係なども確認することができます。それらを見ながら詳しい説明を受けるといいでしょう。さらに、モデルルームには購入希望者に配るパンフレットや不動産会社の会社案内だけでなく、図面集や地質調査書、建築工事の資料、設備や収納部分も詳しく書かれた設計図書、管理規約、長期修繕計画書、アフターサービス基準書、重要事項説明書のコピーなどがあり、前向きに検討したい場合は、言えば見せてもらえたり、コピーもしてくれます。これらはどれも大事な内容が杳かれたものです。いただけるものはすべていただいて、できるだけ具体的な説明を受けておくと、いっそうそのマンションの内容がしっかりわかるようになります。中古にはそういった資料がすべてそろっていないことが多く、私かできるだけ新築を選んでほしいとアドバイスしているのは、そういった理由もあるのです。
・好感持てる「スッピン」モデルルーム
最近よく見かけるモデルルームはオプション満艦飾で、標準仕様のテイストとまったく異なっています。これは明らかに、顧客を幻想の世界に誘い、標準仕様と異なった空間イメージで売って、契約を取る戦略です。約5年ほど前に、この戦略をとっていた超大手財閥系デベロッパーが、内覧会時に数戸の購入者から、
「詐欺だ!! モデルルームとは全く違う空間テイストだ!!」
と騒がれて、キャンセルを余儀なくされたと、関係者から聞きました。本来なら、内覧会で購入者からのキャンセルであれば違約金を取れるのですが、さすが超大手デベロッパーですので、表沙汰を恐れて全額返済して事なきを得たそうです。ここではっきりと言います。財閥系のデベロッパーのマンション自体は高品質です。しかし、販売手法は糞以下です。
私も昔から、このデベロッパーのモデルルームは異様に感じておりました。壁紙、キッチンの扉、床フローリングなど、ほとんどがオプションで仕上げられていました。居間の壁は腰部分まで木目板貼りで、標準仕様はどうかというと、量産品の安いビニールクロスで、販売事務所の片隅に15センチ四方の大きさに切って、プレゼッテーショッボードに貼ってありました。素人さんがそれを見て空間をイメージできるとは思えません。そのうちトラブルになるなって思っていたら、案の定、先ほど書いたような事態が起こったそうです。
逆に、以前足立区で某財振興デベロッパーが販売したモデルルームは、ほとんど標準仕様(スッピッ)で好感が持てました。後発の振興デベロッパーが正道を歩んでいるのに、老舗の超大手のデベロッパーがモデルルームをオプション満艦飾にして販売しているのは、いかがなものでしょうか。女性でも、本当の美人は厚化粧をしませんが、エセ美人やそれ以下の女性にかぎって厚化粧をすると聞いています。マンションの販売でもそうだと思います。本当に自信のある、いいライフスタイル提案型プランのモデルルームであれば、スッピンでも売れるのです。
モデルルームの落とし穴
新築マンション業界では、購入予定者がいくつか見たマンションのなかからひとつを選択し、購入を決める動機は、じつは女性の衝動買いがほとんどだと分析されているそうです。非良心的なデベロッパーは、モデルルームのインテリアコーディネートには生活感を出さないようにしています。そうして女性を夢の世界に誘い、衝動買いを起こさせる戦略なのです。
モデルルームでは部屋を実際以上に大きく見せるため、大型テレビや食器棚などの大きな家具を避けたり、さらには寝室のペッドサイドに大きな鏡を配置して部屋の広さを錯覚させるモデルルームまであります。反対に、そのマンションの大半の住戸では使用されていない大きなパーツを使ったモデルルームもあります。たとえば、モデルルームの浴室では有効而積が1600mmx2000mmのかなり大きめのものを使っていても、この仕様になっているのはそのマンション全体の1割以下で、あとは1400mmx 1800mmという場合もあるのです。
数字だけを見るとわずか20cmの違いですが、これは浴槽内で手足がゆったり伸ばせるか、それとも膝を抱えて入浴するかといった違いにも結びつきます。さらにモデルルームでは、実際にはオプションによって飾り立てられた仕様のものもあるので注意が必要です。マンション購入の際には、見学したモデルルームと多くの人が買おうとしている住戸は、同じタイプのものではないことを頭に置いておきましょう。そしてどこまでが標準仕様でどこからがオプションなのか、きちんと確認することが重要です。
ほとんどの人はモデルルームのタイプを買わない現実
最近のモデルルームに用意してあるお部屋は、そのマンションの中で一番広いタイプか、最上階のタイプか、あるいは妻側(角部屋)のタイプがほとんどです。本来、モデルルームは一番住戸数の多いタイプ(ティピカルタイプ)をご用意すべきだと、常々思っています。しかし、私の経験上、そのようになっていたケースは数えるほどです。
ティピカルタイプとモデルルーム
なぜティピカルタイプをモデルルームにしないで、戸数のわずかな前記の特種のタイプをモデルルームにするのかと言うと、デベロッパーとしては容積率目一杯で、専有率を限りなく100%に近づけて設計を行います。そうなると必然的に、各住戸が羊かんの輪切り型にならざるを得ないので、ティピカルタイプ住戸は間口寸法に若干の違いは生じても、住戸内の間取りはほぽ同じですから、競合他社物件との差別化ができないのです。その結果、自ずと戸数の少ない特種なタイプをモデルルームにするわけです。特種タイプは全住戸数の1~2%しかありませんし、広く価格も高いのですが、競合他社との差別化はできます。
これら特種タイプには共通のメリットがあります。住戸プランの間取りの自由度が高いので、多少競合他社よりいい住戸プランができることです。しかし、顧客のほとんどはモデルルームでこのようないい住戸を見てから、自分の懐目具合に合わせてティピカルタイプの住戸を購入しているのが現実です。
モデルルームは詐欺?
モデルルームは、リビングーダイニングルーム、キッチン、浴室、洗面化粧室どれを見てもティピカル住戸より1ランク上の広さ・仕上げです。販売員の説明は、「お客様の購入予定住戸のこれらは若干小さめですが、ほとんど変わりませんから…」と騙しに近い言動です。自分が購入しようとする住戸は、販売パンフレットの図面集で平面的にしかわからず、空間のイメージはつかめません。
4,000〜6,000万円もする買い物をただ図面を見ただけで購入してしまうのですから、顧客も度胸があるというか、モデルルームの広い、いいイメージに夢見心地で契約してしまうのです。半年か1年後に内覧会で、初めて我が住戸を見て、夢から醒めて意気消沈です。想像していたより狭いし、空間のイメージも違うのです。詐欺にあったような気持ちになるのです。
仮設モデルルームのポイント
モデルルームは基本的には木造か軽量鉄骨造となっています。建物の構造自体は実際のマンションとは異なります。
モデルルーム ⇒ 木造・軽量鉄骨造
実際のマンション ⇒ コンクリート構造
内装は実際の仕様に合わせてつくられています。壁の精度、扉の建て付け具合、クロスの貼り方など。これらは現場で問題となる躯体の打設精度に影響されることがないためで、現場でモデルルームと同等の桁度を維持するのは相当の現場担当者の努力が必要です。間取りや寸法は実際の建物に忠実につくられています。建具や人井の高さなども基本的には反映してあるはずなので、お手持ちの家具などを新居でも使う予定があればサイズを計って参考にするとよいでしょう。
モデルルームが用意されているのは1番高額な住戸(最上階)や、1番販売数が多い住戸の場合が多いので、あなたの希望するタイプの住戸がない可能性が高いでしょう。そんな時はパンフレットや営業マンの説明を頼りに、キッチンや洗面台の幅、浴室の寸法、クローゼットの違いなどをイメージするほかありません。特にキッチンや洗面所といった狭い空間での10mm、15mmといった違いは意外と大きく感じる場合があるので、数多くのモデルルームを見て、実際の寸法が感覚的に分かるようにしましょう。
また、モデルルームに設置してある家具は、サイズが少し小さい場合があります。上記したように、お使いの家具のサイズを把握することは重要といえます。きれいにコーディネイトされている家具に惑わされずに、現実の生活の場面を思い浮かべて判断をして下さい。
オプション(OP)についても注意が必要です。モデルルームは高級な仕様でつくられており、さまざまな設備、食器棚、カーテンボックス、極端な場合クローゼット内の棚板までもがオプションエ事となっていることがあります。もちろん表示はしてあるはずなので、よくパンフレットや図面と見比べながら確認しましょう。
棟内モデルルームのポイント
完成まじかの現場の一室を仕上げて棟内モデルルームとしていることがあります。これなら実際のお部屋の状態に近いものを確認ことが可能です。壁や床の質感、サッシを閉めた時の遮音などを体感できます。実際の工事の進行状況にもよりますが、足場がとれていれば窓からの眺望、部屋の明るさなどが確認できます。ただし建築現場によっては用意されないことも多く、工事の都合上、下層階にしか設けられないので、希望する住戸とは一致しないかもしれません。「あくまでもモデルルームである」ということを念頭に、住戸がどのようなものか、しっかり把握することが重要です。
仮設か? 棟内か?
仮設モデルルームは、実際の建設地の近辺に土地を借り、プレハブで建てられることが多いようです。プレハブとはいえ外観もキレイに施工されています。実際の建設地では敷地内に仮設で建築するスペースがないことも多く、工事の騒音で営業しづらいという理由もあるでしょう。また、できるだけ早く販売したいという意図から、棟内モデルができるまで待てないという事情もあるようです。
早い時期に販売のめどがつくと棟内のモデルルームは用意されない場合があります。実際の建物が見られるという意味でも仮設のものよりもよいのですが、工事の終わりごろにできるということもあって、棟内モデルルームを見にいった時には残りの販売戸数は数戸のみ、ということがあります。選択の幅を広げるためには、やはり仮設のモデルルームに販売当初の早い時期に行くほうがよいでしょう。数多くのモデルルームを見て、目を養って下さい。オプションや設計変更だらけのモデルルームでは、その豪華なイメージに流されないよう注意しましよう。実際の生活をイメージすることが非常に重要です。
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