流行りはどれ?「独立」「オープン」「アイランド」キッチンスタイルの本命は?

マンションのキッチン マンションの基礎知識

キッチンのスタイル別ポイント

新築分譲マンションのキッチンのスタイルには「独立型」「セミオープン型」「オープン型」などがあります。

時代の流れにより主流となるスタイルがはっきりと変わってきています。独立型が主流の時代から、ダイニングキッチンというオープン型へ変わっていきました。その後セミオープン型が大流行となりました。そして現在、新たなオープン型ともいえるアイランド型が大きな注目を集めています。

キッチンは家族の暮らし方に大きく影響を及ぼし、そこに立つ人の心を左右するほど重要なものです。それぞれのキッチンタイプの特徴を十分に把握し、かつタイプ別の注意点をおさえた上で、適切なキッチンスタイルを選択することが重要です。

独立型キッチン

独立のキッチン

独立型キッチンは、キッチンと食事をする場所が完全に分離したタイプです。煙やにおい、音、蒸気などがほかの部屋に流れることが少なく、比較的衛生的だといるでしょう。キッチンの雑多なものがそのままでもダイニングやリビングからは見えないのが最大のメリットといえるでしょう。ですから、お客さまのおもてなしが多い家庭に向いています。しかしその反面、キッチンで作業する人が孤立すること、リビングで遊ぶ子供や寛ぐ家族が見えないというデメリットもあります。また、面積がやや多く必要なことも理解しておきましょう。

独立型キッチンを設計する場合においては、キッチン内部で料理づくりから配膳までの作業ができるように動線を考えたプランニングが重要です。広いキッチンスペースに収納はたっぷりとったものの、配膳のスペースがほとんどない間取りプランをよく見ることがあります。配膳スペースをとり忘れると、キッチンとダイニングを行ったり来たりしなければなりません。またこの配膳スペースは、ちょっとした食事のスペースとしても活躍します。ダイニングへの出入り口の建具は開けていることが多いとなれば、開けたままでも邪魔にならないように考えることです。引き戸は有効な方法となります。散らかせる気楽さも独立型のキッチンの大きな魅力とはいえ、やはり散らかしっぱなしだと気分のいい場所にはなりません。人に見えない独立型のキッチンであっても、気分よくいられる設計でありたいものです。

独立型のキッチンを希望する人は、現在では非常に少なくなりつつありますが、独立型にしたいと思う時「なぜ独立型を希望するのか?」と問うことがとても大切です。「キッチンでひとり孤立するのはイヤですが、片付けが下手・キッチンのごちゃごちゃが食卓やリビングから見えるのも困るのです。独立型キッチンにして私ひとりが我慢をします」このようであれば悲しいものです。それに家族をキッチンに巻き込むには、独立型キッチンでは大きなエネルギーが必要です。それなら、作業場の雑多なものは見えないように、そして臭いも広がらないように、そしてダイニングやリビングとのつながりがあるように、という設計のセミオープンキッチンがいいのではないのでしょうか?

セレコーポレーションの「アパート経営」

オープン型キッチン

オープンなキッチンスタイル

オープンキッチンは、キッチンがダイニングやリビングと一体化したキッチンスタイルです。キッチン各所のスペースが有効に使えることや作業動線がとても短く、調理⇒食事⇒休息といった生活行為が、途切れることなくスムーズに行えるという点では効率的なキッチンタイプです。しかし、煙・臭気・音などが拡散した中での食事となり、また食事や団らん中にキッチンが丸見えになるため落ち着きが得られないという意見もあります。

しかし,オープンキッチンの設計をしながらも、おしゃれな生活を意識するあまり、料理づくりが疎かになっては困ります。オープンキッチンの場合、収納計画をきちんとすること、換気をよく考えておくこと、調理中は作業場であってもいざとなれば片付くように計画することなどを留意しましょう。この雑多な姿からの脱出を望み、オープン型のダイニングキッチンスタイルが敬遠されています。しかしながら、オープン型に属しているともいえるアイランド型キッチンが、2010年あたりから流行しはじめました。

アイランド型キッチン

アイランドキッチン

アイランド型キッチンは、オープン型の一種ですが、シンクやコンロを備えた調理台を部屋の真ん中に「島」のように独立させたキッチンスタイルです。2010年あたりから急激に見かけるようになりました。調理台を囲んでみんなで作業するなど、家族が料理に参加しやすく、キッチンに立つ人も団欒に参加しやすいのが大きなメリットです。

このキッチンタイプは、非常におしゃれな雰囲気が出せるので、雑誌などで取り上げられて注目度の集まっているキッチンスタイルですが、オープン型同様に煙や臭気は大きな問題となるでしょう。特に「島」の部分にコンロがある場合、換気が大きな問題となります。上からの大きな換気装置の取り付けによりうっとおしくなったり、換気効率もよくなかったりします。非常におしゃれであり、家族が参加するようにと思いアイランド型にしたものの使ってみると、キッチンの雑多感が丸見えでおしゃれには程遠いなど、きれいな状態を保つために多大なエネルギーが必要になることを理解しておきましょう。アイランド型キッチンの表面的なメリットしか見ていなかったことによる失敗例は多数見ています。

アイランド型キッチンを提案する人・希望する人の多くは、ファッション的な部分に意識が向き、キッチンに必要な機器の置き場所、調理道具や食器類そしてゴミ箱などや、ちょっと床に置きたい雑多なものなどのことを忘れたプランになることが多いように感じます。実際に料理をした時に、キッチンスペースの有様はどうかということを頭において選ぶことが重要です。おしゃれな感覚でアイランド型キッチンにしたい時は、逃げ場所も考えた収納計画をしっかりとしておくことが大切となるでしょう。アイランド型キッチンを希望する方には個人的には,アイランド「風」キッチンをお勧めしています。「風」とは、アイランドという希望の言葉を残しながら雑然とした部分はうまく隠すセミオープン型キッチンなのです。

セミオープン型キッチン

セミオープン的なキッチン

キッチンはいくらおしゃれにしているといえども作業場なのです。「作業場と食事の場とは区切りたい」、しかし、「キッチンに立つ人とダイニングにいる人が同じ空問でつながっていたい」という両方の希望を満たすスタイルとして登場したのが、セミオープン型キッチンなのです。キッチンとダイニングをカウンターや腰壁、ハッチスタイルの家具などで区切った感覚のものです。独立型とオープン型のメリットを兼ね備えているとして人気を呼び、新築分譲マンションや戸建て住宅でも主流のスタイルになっています。

キッチンとダイニングが動線的に区切られている点からは、キッチンスペース内で調理から配膳までができるようにプランすること、空間がつながっている点からは換気が十分であることが大切です。さらにはキッチン内の雑多なものが見えず、しかも顔が見えるということも重要でしょう。もちろん作業しやすいキッチンの基本もクリアすることです。主流だからといえ今まで壁に向かっていたキッチンをリビング面に向けただけではいけません。平面図ではキッチンとダイニングがほどよく区切られているのですが、カウンターの高さが低すぎるため、キッチン内の雑多な有様が見え作業場の雰囲気を引きずっているプランや、カウンターの上に吊り戸棚があるために、腰をかがめなければダイニングにいる人と会話ができないプランも見かけます。

シンク選び

システムキッチンではほとんどの場合、シンクの形状や寸法が最初から決められています。1980年代初頭からもてはやされたダブルシンクですが、今でも使いやすいという人がいます。小さいほうのシンクで野菜を洗う、食器をつけておく、水切りかごとして使う、ゴミを置く、などそれぞれ便利に使っています。しかし、シンクを二つに区切ることは、シンクの間口寸法を多く必要としますし、融通がきかないことも頭に入れておく必要があります。

幅が900mm~1,000mmほどあるジャンボシンクは、食器の数をたくさん使う家庭や、洗いものを次々にシンクに放り込んでおきたい人や、シンクの前に2人立ちたい家庭などに向いています。しかし、どうしてもジャンボシンクがいいと、キッチンの間口が狭いにもかかわらずジャンボシンクを選び、作業スペースが確保されていないというケースもよく見ます。シンクは大きいのが望ましいと思いがちですが、大型の食器洗い機を組み込めば無理にシンクを大きくする必要はありません。一般的には大家族ではない場合、食器洗い機をビルトインした上で幅650mm~850㎜くらいのシンクを設計することが多いのです。さらに最近は魚の下ごしらえ用の浅いシンクや変形シンクと、さまざまなアイディアシンクが登場しています。

もうひとつ注意したいのはシンク自体の奥行きです。奥行きがあるとゆったり使えますが、それにももちろんですが限度があります。水の落ちる位置が遠くなると不自然な姿勢で洗いものをすることになり、「腰痛キッチン」になってしまうので、奥行きと水栓金具との寸法を検討しなければなりません。

熱源について

熱源の寸法については、キッチンの設計者が寸法をどうこうするということはほとんど不可能であることが現実です。各メーカーの製作した熱源の機器を取り入れることにななるからです。一般的には幅600㎜タイプのものが主流となっています。「大きい鍋も置ける」という幅の広いものも出ています。一般的でないものはあとで取り替えることも頭に入れて検討しておくことです。キッチンの寿命より、そこについている機器の寿命の方が短いことが多いことも頭に入れておきましょう。家庭によっては三つ口あるいは四つ口の熱源が1台と限らず、2台あるいはフライヤーやグリルなどを並べることもありますが、熱源を並べすぎた時においてもスペース割りがうまくいっているか確認をすることが重要です。

IHクッキングヒーターを選択したけれど、やはりガスの火も必要であろうと幅600mmの三つ囗IHクッキングヒーターと、幅600mmのガスコンロを並べ、熱源の部分だけで1,200㎜もとる人がいます。キッチンの間口に対し1,200mmも熱源のスペースをとることにより作業面の不足・無駄な作業動線・不都合な収納と納となっては困ることでしょう。熱源の口数を多く必要とすることが、あるいは炎がほしいことが月に数回・年に数回ということであれば、その時に卓上用のIHクッキングヒーターや、ガスのカセットコンロを用いるのが良いでしょう。

配膳スペースについて

配膳スペースも調理の空間や熱源に近く、余分に歩かなくて済む効率的な設計としたいものです。ダイニングキッチンならテーブルが配膳スペースを兼ねることができますが、独立型のキッチンの場合はキッチン内に配膳スペースが必要となります。スペースの広さは使う食器の量などに応じて決めましょう。

家電製品や道具の置き場所について

炊飯器、オーブンレンジ、電気ポット、トースター、コーヒーメーカーなど,ワークトップの上に置く家電製品や道具類のスペースも忘れずに考えておかなければなりません。これらの製品は各家庭によって持っているかいないか、よく使うかあまり使わないかが異なります。所持品と使用頻度を聞き取り、スペースを確保する必要があります。あとでこれらの置き場所に困り、市販の置き台を買い足すという事態にならないようにしたいものです。置き場所については動線が非効率にならないように、使うときの位概関係を考え、使いやすいところにプランニングしましょう。

キッチン作業台の高さ

キッチンの安宅さ例

キッチンには「作業しやすい高さ」というものがあります。日本人の身長が高くなったので、キッチンの高さも800mmから、850mmが採用されるケースが多くなりました。しかし、平均身長で決めては失敗の元です。新築分譲マンションでは早い段階で購入すれば、上記の3つの高さから選ぶことができます。850mmを標準としているデベロッパーが一般的です。

物を切るところは,一般的には「身長×1/2+50mm」と言われています。身長1.600㎜の人であれば850㎜ということになります。また肘下110mmとも言われます。作業する高さが低すぎると当然ですが腰が痛くなります。特に洗いものをする時、腰痛を体験する人が多くいることでしょう。熱源の高さは手を下に下げ、手のひらを床と平行にした時の高さが望ましいといわれます。つまりこの高さは、作業の高さより低いのです。この高さが高 すぎると、肩が痛くなります。個人的な意見ですが、作業の高さより約100mm下げることが望ましいでしょう。

キッチンの高さを家族の誰に合わせるか、という大きなそして普遍的な問題もあります。作業する高さにおいては、高すぎるのと低すぎるのとどちらがいいでしょうか?高すぎる場合は、少しかかとのあるスリッパを履いたり、すのこを置いたりなどで解決することができます。しかし低すぎるからといって身長を低くするわけにはいきません。キッチンの高さは作業するスペースは高くてもいいでしょう。そして熱源スペースを下げておけばそれぞれに対応できることにもなります。

作業スペースより熱源スペースの高さは下げる
高いは対象法があるが低いのは対象法が少ない

 

オープンキッチンとアイランドキッチンの違い

■LDの空間に一体感を

1995年に関東で「アイランド型のオープンキッチン」を設置した新築分譲マンションが登場しました。非常に大きな話題を呼び、355戸すべて同じ住戸プランで、竣工6か月前に完売となりました。

LDとキッチンの天井がフラットなので非常に広い空間ができ、非常に大好評でした。モデルルームを見学した方に大きなインパクトを与えました。このキッチンプランは、さらにキッチンから洗面脱衣室・浴室への動線も確保いたしました。また、通常なら住戸プラン集での室名がLDKとなるのを、「ファミリールーム」という室名にして欲しいと言い、そうしてもらいました。

最近の新築分譲マンションのモデルルームを見ると、この「アイランド型のオープンキッチン」がとても増えてきましたが、ただコンロ付き流し台をLD側に向けて設置してあります。そして、コンロの上にレンジフードが付くので、コンロ前に壁が立ち上がって、LDとの空間の一体感がないのが非常に残念です。

それらを払拭し、空間の広がりを演出するために、コンロ前の壁を透明の耐熱ガラスにしている物件もありました。コンロの前の透明耐熱ガラスは、実際に入居したらすぐ汚れて油だらけになります。モデルルームとしては非常に見栄えが良いのですが、実際の使い勝手は最悪でしょう。まして、その透明耐熱ガラスはオプションで、標準仕様はただの壁です。欧米の住宅でよく見かけるアイランドキッチンは、アイランド部分は流し台のみで、背面の壁に流し台と同仕様のコンロ台を設置し、その上にレンジフードと吊戸棚があります。日本の戸建住宅でよく見かけるアイランドキッチンは、コンロ付き流し台をLD側に向け、コンロの上部にラッパを四角くしたレンジフードが天井からぶら下っていて、見た目が良くありません。しかし、このようなアイランドキッチンのスタイルが、今の新築分譲マンションのキッチンスタイルの主流となっています。

L字型・コの字型キッチンは食器棚を置く場所がない

80平米以下の住戸にはI字型を

新築分譲マンションの台所の流し台の形状は、大きく分けて3種類あります。一般的なのが「I字型」キッチンです。あとは「L字型」、「コの字型」キッチンです。

オープンアイランド型キッチンでは、「I字型」キッチンを並行に、通路を挟んで2列並べています。最も見栄えがいいのは、オープンアイランド型キッチンですが、面積を多く使うので、住戸がある程度広くないと採用できません。専有面積が70~80平方メートルであれば、「I字型」キッチンが良いでしょう。

そして、キッチン本体の長さは、最低でも2.5メートルは必要と言われています。根拠は、カウンターの左端から25〜30cmスペースをとり、そこを洗い物トレイ置き場にし、そこから幅75センチのシンクを置き、ジンクとコンロの間の寸法を70〜75cm確保して調理スペースにすると、あとはコンロ幅60cmと、コンロの脇壁離隔距離15センチでちょうど2.5メートルとなります。しかし、最近の専有面積の縮小化で2.5メートル以下のキッチンも増えてきています。

最近はこの調理スペース(70〜75cm)の下に、幅45cmの食洗機(食器洗い機)が設置できるようにしています。食洗機を設置した場合、残りのスペースは幅25〜30cmです。ここが縦に引き出しが並ぶところです。引き出し幅としては使用上25〜30cmが限界です。

「I字型」キッチンは、作業スペースを隔てた後側の壁に、食器棚スペースや冷蔵庫置き場が確保でき、狭い空間が合理的に使えます。ところが、「L字型」や「コの字型」キッチンの採用が最近多くなっています。理由は一見とても見栄えがいいのです。ご婦人方がこういうキッチンに憧れていますので、デベロッパーもマンションの販売促進のために採用しています。

しかし「L字型」や「コの字型」キッチンの流し台が折れ曲がる角や、吊戸棚が折れ曲がる角のスペースが使いづらく、デッドスペースになりがちです。特に吊戸棚の直角に折れ曲がった角のスペースの奥は、踏み台に上がっても手が届きません。一生使わない物を収納するしかありません。「L字型」キッチンは、このデッドスペースが流し台、吊戸棚それぞれ1か所ですが、「コの字型」キッチンになると、流し台、吊戸棚それぞれ2か所になり、無駄なスペースがさらに増えてしまいます。

「L字型」流し台・吊戸棚では、今まで持っていた食器は到底収納できません。「コの字型」流し台・吊戸棚であれば、普段使う食器は何とか収納できますが、客用の食器等までは収納できません。そのような台所のマンションを購入した方は、以前持っていた食器棚を捨てるか、あるいはダイニング(食堂)スペースの壁を背にして置かなければなりません。食事を作ってお皿に盛る時に、いちいちダイニングスペースに置いてある食器棚まで食器を取りに行かなければならないのです。「L字型」や「コの字型」キッチンを設計したら、頭を使ってきちんと食器棚置き場(1.2メートル×45センチ程度)スペースを確保すべきです。もし、住戸面積(専有面積)が80平方メートル以下で3LDKであれば、私の経験ですとほとんど無理ですので、「I字型」キッチンにして機能を優先すべきです。

「L字型」や「コの字型」キッチンは、見た目がとても良く、奥様方にマンションの衝動買いを起こさせる手段として有効ですが、入居後は、使い勝手が悪くて不評です。私は過去にこの過ちを犯しましたので反省しております。これからマンションを設計される方々に、同じ過ちを繰り返さないようお願いいたします。

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