定期借地権付きマンションとは?
マンション探しをしていると、「定期借地権付き」という言葉を目にすることがあります。通常のマンションより価格が安く、立地も良いことが多いため、魅力的に感じる方も多いでしょう。しかし、この「定期借地権」という仕組みをきちんと理解しないまま購入すると、後々後悔することになりかねません。
この記事では、定期借地権付きマンションの基本から、メリット・デメリット、向いている人の特徴まで、不動産のプロとして詳しく解説します。
広島では、
- コンツェルトシティ榎町
- スカイアーク51舟入
- アルファステイツ平和大通り
などがあります。
定期借地権とは? 基本的な仕組みを理解しよう
定期借地権とは、簡単に言うと「一定期間土地を借りる権利」のことです。これは、借地借家法という民法の特別法(民法より優先される法律)で定められた権利で、平成4年(1992年)に制定されました。
定期借地権は、一般に50年以上貸すことを条件にされた権利です。つまり、最低50年間は土地を貸してもらえる権利があるということになります。ただし、この期間が満了した際には、更地で地主に返還する必要があるという大きな特徴があります。
定期借地権には以下の3種類がありますが、マンションで多く見られるのは「一般定期借地権」です。
種類 | 最低存続期間 | 契約更新 | 期間満了時 |
---|---|---|---|
一般定期借地権 | 50年以上 | 不可 | 更地にして返還 |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 不可 | 建物を地主に譲渡可能 |
事業用借地権 | 10年以上50年未満 | 不可 | 更地にして返還 |
通常のマンション(所有権付きマンション)では、建物と土地の両方を購入しますが、定期借地権付きマンションでは、建物は購入するものの、土地は借りるだけという形になります。
定期借地権付きマンションのメリット
定期借地権付きマンションには、いくつかの大きなメリットがあります。
1. 購入価格が安い
定期借地権付きマンションの最大のメリットは、価格の安さです。土地代が含まれていないため、所有権付きマンションと比べて2割~3割は安いと言われています。駅近や都心の人気エリアでも、比較的手の届く価格で購入できる可能性があります。
2. 税金負担が軽減される
土地を借りることになるため、土地にかかる固定資産税・都市計画税が不要になります。また、土地を取得した際にかかる不動産取得税も不要です。これらの税金負担が軽減されるのは大きなメリットと言えるでしょう。
3. 立地が良いことが多い
定期借地権付きマンションは、地主が「絶対に手放したくない」と思うほど価値のある土地に建てられることが多いです。そのため、駅前や都心部など、通常では新築マンションが供給されにくい好立地に建てられていることが多いという特徴があります。
地域別 所有権マンションと定期借地権マンションの価格比較
※ 70㎡の物件を想定した平均価格です。※ 定期借地権付きマンションは所有権マンションの約70%の価格で計算しています。

定期借地権付きマンションのデメリット
メリットばかりではありません。定期借地権付きマンションには以下のようなデメリットもあります。
1. 毎月の地代や解体積立金がかかる
土地の固定資産税を払わなくていいのはメリットですが、土地を借りるわけなので、地主への地代がかかってきます。これは、土地の価格にもよりますが、月に5,000円から15,000円程度が一般的です。
また、このほかにも建物を解体する積立金がかかることが多く、こちらも毎月3,000円~5,000円程度が必要になります。
2. 権利金または保証金が必要な場合がある
契約時に権利金(返還されない)または保証金(返還される)が必要になる場合があります。国土交通省の調査によれば、保証金の平均は250万円~500万円、権利金は500万円ほどというデータがあります。
3. 売却が難しい
定期借地権付きマンションの大きなデメリットは「売れにくい」ということです。特に築年数が経過して残存借地期間が短くなると、買い手が見つかりにくくなります。
例えば、住宅ローンを35年で組む人が多い中、借地権期間が残り30年しかない物件では、35年ローンが組めないため、購入希望者が限られてしまいます。
4. 住宅ローンが組みにくい
定期借地権付きマンションは、担保価値が低いと見なされるため、住宅ローンの借り入れが難しくなったり、借りられる額が少なくなったりする場合があります。また、借地期間を超える期間のローンは組めません。

※ 借地期間50年の場合の一般的な資産価値の推移です。※ 購入時(新築時)の価格を100%として表示しています。※ 定期借地権付きマンションは借地期間満了時に資産価値が0になります。※ 所有権マンションは土地の価値があるため、一定の資産価値が残ります。
定期借地権付きマンションの供給状況
定期借地権付きマンションは、全国で供給されていますが、特に三大都市圏に集中しています。2022年12月末時点での全国の定期借地権付きマンションのストック数は657棟・33,915戸となっています。
都道府県別に見ると、東京都が11,263戸と突出しており、全国における戸数シェアは33.2%と全ストックの1/3を占めています。次いで大阪府(5,478戸)、愛知県(4,342戸)と続きます。
都道府県別ストック数
都道府県別シェア
近年は、マンション価格の高騰を受けて、定期借地権付きマンションの供給が増加傾向にあります。2023年の首都圏での供給数は2,000戸に上る可能性があり、2008年の約1,200戸を大きく上回って過去最大規模となる見通しです。2025年以降は建築コスト高騰に伴うマンション価格上昇により、より多くの定期借地権付きマンションが増えていくと予想します。
借地期間について
定期借地権付きマンションの借地期間は、法律上は最低50年以上と定められていますが、実際の物件では様々な期間設定があります。
1990年代に供給された物件では50年程度の設定が多かったのですが、近年では70年や75年など、より長期間の借地権を設定する物件が増えています。借地期間が長いほど、住み続けられる期間も長くなり、資産価値の低下も緩やかになる傾向があります。
供給時期 | 平均借地期間 | 最長借地期間 |
---|---|---|
1990年代 | 約50年 | 70年 |
2000年代 | 約55年 | 71年 |
2010年代 | 約65年 | 80年 |
2020年以降 | 約70年 | 80年 |
借地期間が長くなる傾向にあるのは、購入者にとっての魅力を高めるためと考えられます。例えば30歳で70年の借地期間のマンションを購入した場合、100歳まで住み続けることができるため、実質的には「一生涯の住まい」として検討できます。
定期借地権付きマンションは誰に向いているのか?
定期借地権付きマンションは、以下のような方に特に向いていると言えるでしょう。
1. 初期費用を抑えたい人
所有権付きマンションよりも2~3割安く購入できるため、予算に限りがある方や、より良い立地・広い間取りを希望する方に向いています。
2. 子どもへの相続を考えていない人
借地期間が限られているため、次世代への資産継承を重視しない方に適しています。子どもがいない方や、子どもに住まいを相続させる予定がない方にとっては、デメリットにならない可能性があります。
3. 将来的な住み替えを予定している人
10~20年程度で住み替える予定がある方にとっては、初期費用を抑えられるメリットが大きいでしょう。ただし、売却時の価格下落リスクは考慮する必要があります。
4. 都心の好立地に住みたい人
予算の制約がある中で、駅近や都心の人気エリアに住みたい方にとっては、定期借地権付きマンションは選択肢の一つになります。
定期借地権付きマンション購入時の注意点
定期借地権付きマンションを購入する際は、以下の点に特に注意しましょう。
1. 借地期間の確認
残りの借地期間がどれくらいあるのかを必ず確認しましょう。特に中古物件の場合、既に一定期間が経過していることに注意が必要です。
2. 毎月のコスト計算
管理費・修繕積立金に加えて、地代や解体積立金などの追加コストがかかります。これらを含めた毎月の支出を計算し、家計への影響を検討しましょう。
3. 将来の売却可能性
将来売却する可能性がある場合は、その時点での残存借地期間と売却のしやすさを考慮しましょう。残存期間が短くなるほど、売却は難しくなります。
4. 住宅ローンの事前確認
定期借地権付きマンションでは、金融機関によって融資条件が異なります。購入前に複数の金融機関で住宅ローンの事前審査を受けておくことをおすすめします。
5. 契約内容の確認
地代の改定条件や、借地契約の詳細について必ず確認しましょう。地代が将来的に上昇する可能性がある場合は、その影響も考慮する必要があります。
まとめ-定期借地権付きマンションは買うべきか?
定期借地権付きマンションには、価格の安さや立地の良さというメリットがある一方で、地代の支払いや売却の難しさ、借地期間の制限といったデメリットもあります。
単に「価格が安いから」という理由だけで購入を決めるのではなく、自分のライフプランに合っているかどうかをしっかり考えることが重要だということです。
特に重要なのは以下の2点です。
- 地代が毎年かかる。地代の値上げの可能性がある
- 売却時に足かせになる
将来的な住み替えの可能性や、資産としての価値、毎月のコスト負担などを総合的に判断した上で、自分にとって本当に適した選択かどうかを見極めることが大切です。
定期借地権付きマンションは、一部の人にとっては非常に魅力的な選択肢となりますが、全ての人に向いているわけではありません。自分のライフスタイルや将来計画に合わせて、慎重に検討することをおすすめします。」
参考
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