修繕費【分譲マンション】
修繕費の金額に目を奪われてはいけません。
金額よりも使い道が重要なのです。マンションの設備・内装・外装は、当然ながら経年劣化していくものです。その劣化を修理していくための資金が毎月の修繕費です。最近では、この修繕費に大きな注目が集まっています。
修繕の対象となるのは、マンションのすべてといってもいいでしょう。外壁の塗り替えは見た目の美しさを維持するものでもありますが、コンクリートに水が染みこむのを防ぎ、建物のダメージをくいとめるという大きな意味もあります。建物の美観や耐用年数に関することだけではありません。受水槽の清掃などは、健康問題にもかかわってくることです。「ローンもあるし月々のことだから安ければいい」との考えでは、快適なマンションライフが送れないかもしれないのです。修繕費は入居後のマンションをよりよい状態に保つためのものです。また、入居前においては、マンションを取り扱う業者の信頼性とマンションの将来を判断する材料にもなります。
新築なら今後の修繕計画を確認
同じマンションでも、床面積や階数によって修繕費は異なります。また、同地区であっても物件の規模によってちがいが出てきます。ですから、一概に「この金額が適切」とはいえません。新築物件の購入を考えていて、業者の担当者と話す機会があるなら、積極的にぜひ質問してほしいのが「今後の修繕計画はどうなっているのか」です。これは実に意表を衝く質問となります。間取りやオプションについてたずねる人は多いのですが、修繕計画について質問する人はまれだからです。
このとき、「5年ごとに屋根部分の保護塗装、10年ごとにコンクリート・モルタル部分の補修工事」などと明確に答えられる業者は安心です。きちんとした根拠に基づいて修繕積み立て金が設定されていると考えていいでしょう。注意が必要なのは「詳細が不明なので調べて報告します」というヶ-ス。その期日までにあわてて資料を作成して取り繕う場合があるからです。
中古なら過去の修繕実績を確認
中古物件の場合、築年数によってはすでに計画に基づいた修繕がおこなわれているはずです。築年数が浅くても、きちんとした業者なら今後の修繕計画がちゃんと立てられているでしょう。
ちなみに、「5年」という期間設定は、住宅金融支援機構「公庫マンション維持管理ガイドブック」(平成16年1月改正)を根拠にしたもの。同ガイドブックに示された修繕項目と標準的修繕期間のなかで、もっとも期間が短いのが外構の鉄部等舗装などの5~7年だからです。ちなみに、機械式駐車場の塗装は4~6年ですが、どのマンションにもあるわけではないので省きました。中古物件の場合、こちらの質問に対して業者が「調べて報告します」と答えたら、その報告を待ちましょう。過去の修繕状況を捏造することはできません。入居者に聞けば一発でウソがばれてしまいますし、そうした捏造はあとあと大問題になるからです。
修繕費の使途範囲を確認すべき
管理費とは使用目的がまったく異なるものです。管理費に含まれていたら要注意。管理会社に確認をしましょう。一戸建てもマンションも、建物のメンテナンスが必要です。一戸建ては気がついたとき適宜修理すればいいのですが、マンションは月々、修繕のための金額を納めていきます。これが「修繕積み立て金」です。管理費と同様、修繕積み立て金もマンションの規模によって異なるので、一概にいくらとはいえるものではありません。また、専有部分の面積に応じて金額が決められるので、同じマンションでも部屋によって金額がちがいます。この点も管理費と共通です。
ただし、修繕積み立て金はまったく無根拠に決められるものではありません。将来的にどのような修繕が必要か長期修繕計両を立て、それに基づいて金額が算出されています。マンションの管理会社によっては、「管理費○○円(修繕積み立て金含む)」として、修繕積み立て金を管理費と一緒に徴収しているところがあります。しかし、管理費と修繕積み立て金はまったく別ものなのです。簡単にいえば「管理費は出費」であるのに対し、修繕積み立て金は名前のとおり「積み立てるもの=貯金」です。つまり、「管理費は管理会社のもの」ですが、「修繕積み立て金は住民のもの」なのです。管理規約で「管理費○○円(修繕積み立て金含む)」となっている場合は、「いくらが管理費で、いくらが修繕積み立て金にあてられるのか」を管理会社に確認してください。
国土交通省の「住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条第1頃に基づく住宅性能評価」でも、管理費と修繕積み立て金が別立てになっているかどうかは、チェックポイントになっています。また、住宅金融支援機構でも、リ・ユースマンション購入融資の利用条件の一つに、「修繕積み立て金と管理費の区分経理規定」があります。
使途範囲が適正か?
住宅金融支援機構の「リ・ユースマンション適合確認書」は、修繕積み立て金の使途範囲を次のように規定しています。
①一定年数の経過ごとに計画的におこなう修繕
②不測の事故その他特別の事由によりおこなう必要となる修繕
③建物の敷地等および共用部分等の変更
④建物の建て替えにかかわる合意形成に必要となる事項の調査
⑤敷地および共用部分当の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
⑥劣化診断、長期修繕計画の作成(見直し)、修繕設計、工事監理等
⑦共用部分と一体的に維持・修繕をおこなうことが望ましい専有部分の修繕
⑧上記管理のための借り入れ資金に関する償還
上記以外の用途で管理会社が修繕積み立て金を使っていたら、管理費の範疇ではないのか質すべきです。修繕積み立て金の金額見直しのきっかけにもなります。
固定資産税や修繕費をあらかじめ把握する
固定資産税とは住宅購入後に毎年支払う税金です。毎年1月1日に所有する土地と建物の評価額に応じて課税され、年4回に分割して市町村に納付します。また、地域によって発生する都市計画税も同じようにして納付を行います。
また、マイホーム購入後の修繕費用はマンションか戸建てかで大きく変わるので、あらかじめしっかりと把握しておくために、販売担当者に確認しておきましょう。マンションの場合は修繕計画に沿って積立金を積んでいくことになります。修繕計画は不動産会社経由で確認することが可能です。戸建ての場合は自分で管理する必要があり、クロスの張替えや外壁塗装などで、10年で100〜150万円くらいを目処に貯蓄しておきましょう。
適正な修繕費は?
国土交通省の平成31年度マンション総合調査結果によれば、管理費はマンション総戸数と相関関係があります。20戸以下がもっとも高く、1平米あたり201円となっています。70㎡なら14014円となる計算になります。少ない戸数だとエレベーターなどの維持管理費が重くなります。戸数が多いほど下がる傾向にあり、301戸~500戸は1㎡あたり108円と最も安くなるのです。
ただし、501戸以上の超大規模マンションは高層となり付帯設備などが多く、管理費は高くなります。1平米あたり145円となります。この数字は全国平均のため、首都圏など人件費が高い県はもっと高くなり、九州などは安くなるのです。買った後の管理費を安く抑えたいなら、板状で総戸数の多い大規模マンションがベストといえるでしょう。
マンション建て替えの現実
共同住宅であるマンションの場合は、区分所有法により基本的には「住民の5分の4が賛成するかどうか」という基準で、建て替えるかど うかを決める仕組みになっています。歳を取った自分が「今さら建て替えなくてもよい」と思っても、住民の5分の4が賛成すれば、建て替えることになります。建て替えのための追加費用も支払わなければなりません。
また、区分所有法では、賛成者(マンション建替組合)が、反対している人に対して、物件の「売渡請求」をすることができることになっています。これは、法的効力を持つ請求権なので、請求があった時点で、時価での売買契約が成立したのと同じ効力を持ちます。すなわち、反対者には、請求された時点で物件を明け渡す義務が発生するのです。これはなかなかつらい現実です。逆に、老朽化したマンションが非常に不便で危険であるため、「費用を負担してもよいから建て直したい」と思ったとしたら、どうなるでしょうか。この場合も、建て替えるかどうかの決議は住民全員で決めますので、賛成者が5分の4に達しなければ、建て替えはできず、そのまま使い勝手が悪く、不便で危険なマンションで我慢するしかないわけです。
それでは、建て替えると決まった場合には、どれくらいの費用を負担することになるのでしょうか。50年後に建て替えると想定しましょう。基本的な考え方としては、建て替えに要した費用から修繕積立金を差し引いて、残りを住民全員で負担することになります。仮に、建築に20億円かかり、住戸が100世帯だったとすれば、I戸あたりの負担は2000万円。年金で暮らしている世帯にとっては決して小さい額ではありません。資産という点でみれば、資産価値がほとんどなくなったマンションが、新しいマンションになるわけですので、2000万円の純粋な追加負担というわけではありません。新しくなったマンションが、追加負担した金額よりも高く売れる場合には、資産と負債のバランスという点で、建て替えは家計にとってプラスに働く場合もあります。また、容積率に余裕があるマンションであれば、追加負担が低く抑えられたり、ゼロ円で済んでしまうケースもあります。
容積率のマジック【建て替え】
なぜそんなことが起きるのでしょうか。そもそも容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ面積の割合のことです。敷地面積1000㎡、容積率300%なら、各フロアの延べ面積の合計が3000㎡以下の建物を造ることができます。たとえば、各フロア500平米なら、6階建てのマンションが建てられるわけです。容積率に余裕があるマンションとは、条件的には6階まで建てられるけれど、3階建てで造っているようなものです。建で替えの際に、容積率めいっぱいまで高層化すれば、その分新たな住戸ができ、販売できます。それを建て替え費用にあてることで、もとから住んでいる住民の建て替え費用負担が抑えられたり、うまくすればゼロになるというわけです。
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