欧州産原料高騰 木造住宅用集成材・建築コスト上昇【マンションにも影響大】

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欧州産原料高騰が直撃する木造住宅用集成材 – 建築コスト上昇

マイホーム計画中の方々にとって、建築資材価格の動向は家づくりの予算に直結する重要な問題です。特に注目すべきは、木造住宅の構造材として不可欠な集成材の原料価格が上昇傾向にあることです。欧州からの輸入に依存するこの重要資材の価格高騰が、日本の住宅建築コストにどのような影響をもたらすのか、詳細に解説していきます。

 

欧州産ラミナ価格、2四半期連続で上昇

最新の市場データによると、木造住宅の梁や柱に使用される集成材の原料「ラミナ」の価格上昇が加速しています。欧州産ラミナの4~6月期の対日価格は、前四半期比で4.2%上昇し、2四半期連続のプライスアップとなりました。この上昇率は、前期の3.5%を上回っており、2022年7~9月期以来の高値水準に達しています。

欧州産ラミナ価格推移(四半期別)

欧州産ラミナ価格推移(四半期別)ポイント: 2025年第1四半期からの価格上昇に転じ、第2四半期は4.2%の大幅上昇を記録。 2予想連続の上昇は2022年以降の動きです。

この価格上昇の背景には、欧州の製材会社が直面する原材料費高騰があり、その値上げ要求を日本側が受け入れた形となっています。この状況が続けば、国内の集成材価格への転嫁は避けられず、住宅建築コスト全体の上昇圧力となることが懸念されています。

集成材の基礎知識 – 住宅構造材としての重要性

集成材は、「ラミナ」と呼ばれる薄い板材を接着剤で積層・接合して製造される高性能な木質建材です。日本の集成材メーカーは、主にフィンランドやスウェーデンなど北欧諸国から輸入したラミナを使用して国内で製造を行っています。

一般的な無垢材と比較した集成材の最大の利点は、品質の均一性と高い強度にあります。天然木材に見られる節や割れなどの欠点を除去したラミナを使用するため、強度のばらつきが少なく、設計値通りの性能を発揮します。また、大断面・長尺の部材製造が可能なため、開放的な空間設計にも対応できる柔軟性を持っています。

こうした特性から、集成材は現代の木造住宅、特に金物工法を採用するハウスメーカーの構造材として欠かせない存在となっています。その価格変動は、住宅建築コスト全体に大きな影響を与えるのです。

 

価格上昇の根本原因

欧州産ラミナの価格上昇には、複数の要因が複雑に絡み合っています。

最も大きな影響を与えているのは、ウクライナ情勢の悪化に伴うロシア産木材の供給途絶です。欧州の木材産業は長年、コストパフォーマンスに優れたロシア産丸太に依存してきましたが、ウクライナ侵攻後の経済制裁により、この供給源が突如として断たれました。代替調達先の確保が難航する中、原料丸太の価格は上昇の一途をたどっています。

さらに、欧州連合(EU)の厳格な環境保護政策も価格上昇に拍車をかけています。持続可能な森林管理を目指す規制強化により、伐採量の大幅な増加が困難になっています。需要に対して供給が制限される状況は、必然的に価格上昇につながります。

また見逃せないのが、環境配慮型社会への移行に伴う木材需要の構造変化です。プラスチック製品から紙製品への切り替えが進む中、パルプ用丸太の需要が急増しています。この需要増加が木材市場全体の需給バランスを崩し、ラミナ向け丸太の価格にも波及効果をもたらしています。

加えて、エネルギーコストの高騰や人件費の上昇など、製造コスト全般の増加も価格押し上げ要因となっています。欧州各国でのインフレ進行は、木材加工業界にも大きな負担となっているのです。

 

日本の住宅市場と集成材需要の現状

日本国内の住宅市場に目を向けると、人口減少や建設費上昇の影響で住宅着工数は減少傾向にあり、集成材の需要自体は力強さを欠いています。実際、欧州産ラミナの対日価格は2024年10~12月期まで2四半期連続で下落していました。

しかし、2025年に入ってからは状況が一変し、欧州側の製造コスト上昇を背景とした値上げ要求を日本側が受け入れる展開となっています。これは、欧州の製材会社が原材料費や製造コストの上昇分を吸収しきれず、価格転嫁を余儀なくされている現実を反映しています。

構造別の住宅着工状況を分析すると、木造住宅は鉄筋コンクリート造などの非木造建築に比べて着工減少率が低く、相対的に堅調さを保っています。これは、鉄鋼やコンクリートの価格上昇が木材以上に顕著であり、コスト面で木造がまだ優位性を保っているためと考えられます。この状況が、集成材需要の下支えとなり、値上げ受け入れの余地を生んでいるのです。

住宅着工数の構造別比較(2023年vs2024年)

住宅着工数の構造別比較(2023年vs2024年)

ウッドショックから現在まで – 木材価格の変遷

木材価格の変動を理解するうえで欠かせないのが、2020年から2021年にかけて世界を震撼させた「ウッドショック」の経験です。

ウッドショック前後の木材価格推移

ウッドショック前後の木材価格推移

コロナ禍を契機に発生したこの現象では、住宅用木材の価格が前例のない速さで倍以上に高騰しました。在宅勤務の普及による郊外住宅需要の爆発的増加、世界的なサプライチェーンの混乱、海上輸送のボトルネックなど、複数の要因が重なった結果でした。

その後、各国の金融引き締め政策により住宅需要が沈静化し、木材価格は徐々に落ち着きを取り戻しました。2023年までにはウッドショック前の水準の約80%まで回復し、一時的な値上げはあるものの、比較的安定した推移を見せています。

2025年1月時点では、2023年11月の小幅な値上げ以降、大きな変動はなく推移していますが、今後の動向には注意が必要です。特に集成材については、原料ラミナの価格上昇が今後の価格形成に影響を与えることが予想されます。

 

集成材価格の今後の見通しと

集成材の価格動向については、特に注意深い観察が必要です。2024年6月以降に約13%の値上げが予想されていましたが、2023年11月の値上げ以降、2025年1月までは大きな変動が見られていません。

しかし、欧州の製材会社は原材料費や製造コストの高止まりを受け、今後も対日価格の引き上げを模索する姿勢を崩していません。ラミナの輸入価格上昇は、国内の集成材メーカーの製造コスト増加に直結し、最終的には住宅建築コストの上昇につながる可能性が高いでしょう。

特に金物工法を採用するハウスメーカーでは集成材の使用比率が高いため、この価格動向は住宅建築計画に大きな影響を与えます。早期の意思決定がコスト面でのメリットをもたらす可能性があることを認識しておくべきでしょう。

米松構造材市場の最新動向

木造住宅のもう一つの主要構造材である米松(ダグラスファー)の価格動向も注目に値します。2025年4月現在、米松構造材の価格は年初からの上昇基調が続いています。1月の小幅な値上げ後、2~3月は横ばいでしたが、4月に入って再び上昇に転じました。

この背景には、米国内の住宅建設市場の回復があります。住宅着工件数の増加、特に一戸建て住宅需要の堅調さが木材需要を押し上げています。さらに、カナダからの輸入材に対する関税措置の検討も、価格上昇圧力となっています。

日本市場では、円安の進行と北米産材の価格上昇が輸入コストを押し上げ、国内価格にも影響を与えています。2025年4月の米松輸入材価格の上昇は、この傾向を如実に示しており、今後も注視が必要です。

 

木材価格高騰の構造的要因を理解する

木材価格の高騰には、一時的な要因だけでなく、構造的な背景があります。

木材価格上昇検討の分析

木材価格上昇検討の分析

コロナ禍を契機とした世界的なインフレと、日本のデフレ経済の継続による円安進行は、輸入木材のコスト増加に直結しました。特に北米から輸入される米松は、アメリカ国内での郊外住宅需要増加により価格が倍増する事態となりました。

また、各国の経済回復策として実施された大規模な財政支援は、住宅需要を刺激し、木材需要の急増をもたらしました。供給がこの需要増加に追いつかず、価格高騰が発生したのです。

さらに、ロシアのウクライナ侵攻は、集成材の主要原料であるロシア産赤松材の供給を途絶させ、代替材料の確保に奔走する事態を招きました。これにより、多くのハウスメーカーが集成材から米松や国産材への切り替えを余儀なくされ、これらの木材価格も連鎖的に上昇しました。

合板市場の動向と建材価格への波及効果

建材 2023年 2024年 2025年 変化率
集成材 100 98 103 + 5.1 %
米松 100 102 107 + 4.9 %
国産杉 100 95 96 + 1.1 %
国産桧 100 97 98 + 1 %
合板 100 105 108 + 2.9 %

木造住宅の建築コストを考える上で、集成材と並んで重要なのが合板の価格動向です。ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア産原木の輸入停止が合板供給の逼迫を招き、価格は従来の倍以上に高騰しました。

2022年後半になると合板の供給状況は徐々に改善し、問屋からの営業活動も活発化しましたが、価格は高止まりの状態が続きました。2023年に入ると、住宅需要の低下に伴う在庫増加を背景に、ようやく値下げの動きが見られるようになりました。

2024年5月には価格の下落が一服し、燃料コストや供給調整の影響で再び上昇傾向を示しましたが、6月にはラーチ合板の価格下落が見られるなど、需給バランスの変化を示す兆候も現れています。

一方、建材フロアや建具メーカーは、燃料費、電気代、原材料費、輸送コストの高騰を理由に値上げを継続しており、2023年2月のピーク以降も、一部メーカーによる価格改定が続いています。

 

マイホーム計画者へのアドバイス

これから住宅建築を計画している方々にとって、木材価格の動向は予算計画の重要な要素です。現状と今後の見通しを踏まえ、いくつかの実践的なアドバイスをご紹介します。

まず、集成材価格の上昇が予想される中、計画の早期具体化がコスト面でのメリットをもたらす可能性があります。特に金物工法を採用する場合は、集成材価格の動向に敏感になる必要があるでしょう。

また、木造と非木造の建築コスト比較では、現時点では木造が優位性を保っています。鉄鋼やコンクリートの価格上昇率が木材を上回っており、コスト効率の面では木造が選択肢として魅力的です。

国産材の活用も検討に値します。杉や桧などの国産材は供給過多の状況にあり、輸入材に比べて価格安定性が高い傾向にあります。地域の気候風土に適した国産材の活用は、コスト面だけでなく環境負荷低減の観点からも評価できます。

さらに、プレカット見積もりの複数回取得も効果的です。ウッドショック時の高値で見積もりを取得した場合、現在の価格水準で再見積もりを行うことで、55坪規模の住宅で約50万円のコスト削減が実現した事例もあります。

 

結論

欧州産ラミナの価格上昇が集成材コストを押し上げ、住宅建築費全体に影響を与える可能性が高まっています。丸太価格の上昇、環境規制の強化、パルプ需要の増加、生産コストの上昇など、複合的な要因が価格形成に影響を与えている現状を理解することが重要です。

日本の住宅市場では、着工数の減少傾向が続いているものの、木造住宅は非木造に比べて相対的に堅調さを保っています。しかし、集成材の原料価格上昇は、今後の建築コスト増加につながる懸念材料です。

ウッドショックの経験が示すように、木材価格は国際情勢や経済環境の変化に敏感に反応します。不確実性の高い市場環境の中、住宅建築を検討している方々は、価格動向を注視しながら、最適なタイミングを見極めることが求められます。

木材価格の変動を理解し、市場の動きを先読みした計画立案が、理想の住まいを適正価格で実現する鍵となるでしょう。専門家の知見を活用しながら、柔軟かつ戦略的なアプローチで家づくりに臨むことをお勧めします。

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この記事を書いた人
﨑ちゃん

新築マンションに携わって30年!!企画から販売、物件マネージャーまで。最近では仲介もやってます。宅建・FP2級・管理士持ってます。趣味が嵩じて大型バイク・潜水士も持ってます。好きなデべは地所さん、野村さん、明和さん、住不さん。

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