分譲マンションの外壁 -「タイル張り」・「吹付塗装」- どちらが正解

マンションの基礎知識

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マンションの外壁 【タイル張り・吹付塗装】 どちらが正解?

新築分譲マンションを検討する際、多くの方が間取りや立地、価格に注目しがちですが、実は「外壁材」も重要な検討ポイントの一つです。マンションの外壁は主に「タイル張り」「吹付塗装」の2つに分かれており、それぞれに明確なメリット・デメリットが存在します。

今回は、分譲マンション購入を検討されている方に向けて、外壁材選びの判断基準となる情報を詳しく解説していきます。将来の資産価値や維持管理費用にも大きく影響する外壁材について、正しい知識を身につけて賢い選択をしましょう。

 

タイル張り外壁の基本的な特徴とは

Q:タイル張りってどんな外壁?

A:陶磁器を高温で焼成した素材を外壁に貼り付ける高級仕様の外装材です

  • 陶磁器や石、砂などの天然素材を1000℃以上の高温で焼き固めた素材
  • 釉薬(ゆうやく)の種類によって様々な色調や質感を表現可能
  • レンガ造建築に由来する格調高い外観を演出
  • 分譲マンションでは最もスタンダードな外壁材として採用

タイル張り外壁は、ヨーロッパのレンガ造建築に由来する伝統的な外装材です。現在では焼成温度や製法、表面に施す釉薬の種類によって、実に多彩な表情を持つタイルが製造されています。分譲マンションにおいては、建物全体の高級感を演出する重要な要素として位置づけられており、多くの物件で採用されているのが現状です。

タイルの分類方法は複数ありますが、最も重要なのは吸水率による区分です。以前は「磁器質」「せっ器質」「陶器質」と呼ばれていましたが、現在のJIS規格では吸水率によって「Ⅰ類」「Ⅱ類」「Ⅲ類」に分類されています。外装用として使用されるのは、吸水率の低いⅠ類(磁器質)とⅡ類(せっ器質)がほとんどで、これらは耐久性と耐候性に優れた特性を持っています。

 

吹付塗装外壁の基本的な特徴とは

Q:吹付塗装はどんな仕上げ?

A:合成樹脂とモルタルを混合した材料を外壁に吹き付ける塗装仕上げです

  • 「吹付タイル」という名称だが実際は塗装による仕上げ
  • 表面がタイルに似た質感でツルツルした仕上がり
  • 専用ローラーで表面に模様を付けることも可能

吹付塗装は、タイルという名前が付いているものの、実際は塗装による外壁仕上げです。この名称は、仕上がりの表面がタイルに似た質感を持つことに由来しています。施工方法は比較的シンプルで、下地処理を行った外壁面に専用の材料を吹き付けて仕上げます。

近年の吹付塗装は、化学技術の進歩により品質が大幅に向上しています。30年前と比較すると、耐久性や耐候性が格段に改善されており、紫外線や雨風による劣化も大幅に抑制されています。また、色彩の選択肢も豊富で、建物のデザインコンセプトに合わせた多様な表現が可能です。

 

タイル張り外壁の圧倒的なメリット

Q:タイル張りの最大の利点は?

A:高級感のある外観と優れた耐久性で長期間美しさを維持できることです

  • 高級感と重厚感のある外観で建物の格を向上
  • 色褪せに強く長期間美しい外観を保持
  • コンクリートを強力に保護する高い防護性能
  • メンテナンス頻度が少なく長期的なコスト削減効果

タイル張り外壁の最大のメリットは、その圧倒的な高級感と美観です。立体感のある質感と豊富な色彩バリエーションにより、建物に重厚感と格調の高さを与えます。特に著名建築家によるデザイナーズマンションや高級住宅地の物件では、タイル張りが積極的に採用されており、「高級物件の証」としての地位を確立しています。

耐久性の面でも、タイル張りは他の外壁材を大きく上回る性能を発揮します。陶磁器という素材の特性上、紫外線による色褪せや風雨による劣化に対して極めて高い抵抗力を持っています。適切に施工されたタイル外壁は、30年以上にわたって美観を維持することも珍しくありません。

また、コンクリート躯体の保護機能も優秀です。タイルがコンクリート面を完全に覆うことで、雨水の浸入や二酸化炭素による中性化を効果的に防ぎます。これにより建物全体の寿命延長にも大きく貢献しています。

 

タイル張り外壁の注意すべきデメリット

Q:タイル張りの問題点は?

A:高額な初期費用と将来的なタイル剥落リスク、高額な修繕費用です

  • 初期の材料費・施工費が吹付塗装より大幅に高額
  • 施工不良による将来的なタイル剥落の危険性
  • 10年ごとの全面打診調査が法的に義務化
  • 修繕時は足場設置により大規模修繕工事並みの費用発生

タイル張り外壁の最大のデメリットは、高額なコストです。材料費だけでなく、施工にも高度な技術と時間を要するため、吹付塗装と比較して初期費用が1.5倍から2倍程度高くなることが一般的です。分譲マンションの場合、この費用は最終的に購入価格に反映されるため、購入者の負担となります。

さらに深刻な問題は、タイル剥落のリスクです。2007年・2008年に竣工したマンションでは、職人不足と無理な工期による施工品質の低下が指摘されており、初回の大規模修繕工事時にタイルの浮きや剥落が発見されるケースが急増しています。タイルの浮きが10%以上発見された場合、「全身に転移したガンのような状態」と表現されるほど深刻で、継続的な修繕が必要となります。

法的な面でも、平成20年の建築基準法改正により、10年経過後は全面的な打診調査が義務化されました。この調査には足場の設置が必要で、タイルに問題がなくても大規模修繕工事並みの費用が発生します。

 

吹付塗装外壁のコストパフォーマンス

Q:吹付塗装の経済的メリットは?

A:初期費用が安く、部分修繕が容易で技術革新の恩恵を受けやすいことです

  • 初期の材料費・施工費がタイル張りより大幅に安価
  • 部分的な塗り直しや色変更が比較的容易
  • 10年程度での塗り替え時に最新技術の塗料を採用可能
  • 足場設置の頻度を調整しやすく修繕計画の自由度が高い

吹付塗装の最大のメリットは、優れたコストパフォーマンスです。初期費用がタイル張りと比較して大幅に安いため、同じ予算でより良い立地や間取りの物件を選択できる可能性があります。また、施工期間も短く、工期短縮によるコスト削減効果も期待できます。

メンテナンス面では、10年程度での塗り替えが必要というデメリットがある一方で、これを逆手に取った大きなメリットも存在します。塗り替えのタイミングで最新の高性能塗料を採用できるため、前回よりも耐久性や機能性を向上させることが可能です。化学技術の進歩により、現在の塗料は30年前と比較して格段に性能が向上しており、この技術革新の恩恵を定期的に受けられるのは大きな利点です。

また、部分的な修繕や色変更も容易で、建物の用途変更やイメージチェンジにも柔軟に対応できます。全面的な足場設置が必要な場合でも、タイル張りのような緊急性がないため、修繕時期を管理組合の都合に合わせて調整しやすいという利点もあります。参考:外壁塗装の費用相場を解説(住宅ノート)

 

吹付塗装外壁の改善すべき課題

Q:吹付塗装の弱点は何?

A:定期的な塗り替えが必要で、汚れの付着やひび割れが発生しやすいことです

  • 10年程度での定期的な塗り替えが必要
  • タイル張りと比較して汚れが付着しやすい
  • 経年によるひび割れや色褪せが発生
  • 高級感や重厚感の演出には限界がある

吹付塗装の主要なデメリットは、定期的なメンテナンスが必要なことです。一般的に10年程度で塗り替えが必要となり、この周期は建物の立地条件や使用する塗料の種類によって前後します。海岸部や交通量の多い道路沿いなど、厳しい環境下では劣化が早まる傾向があります。

外観面では、タイル張りと比較して高級感の演出に限界があることも事実です。近年は技術向上により質感の向上が図られているものの、タイルが持つ立体感や重厚感を完全に再現することは困難です。特に高級住宅地や投資用物件では、外観の印象が資産価値に直結するため、この点は重要な検討要素となります。

また、表面の平滑性により汚れが付着しやすく、特に都市部では排気ガスや粉塵による汚染が目立ちやすい傾向があります。定期的な清掃や部分的な補修が必要となる場合もあり、日常的な維持管理への配慮が求められます。

 

資産価値への影響を考慮した選択

Q:外壁材は資産価値に影響する?

A:タイル張りは高級感で資産価値を維持しやすく、売却時に有利になる傾向があります

  • タイル張りは「高級仕様」として市場で高く評価される
  • 築年数が経過しても外観の劣化が少なく印象を維持
  • 中古市場での成約価格や成約スピードに好影響
  • 管理状態の良さをアピールする要素として機能

不動産市場において、外壁材は物件の資産価値に大きな影響を与える要素の一つです。タイル張りの物件は「高級仕様」として認知されており、同じ立地・間取りの物件と比較して高い評価を受ける傾向があります。これは、タイル張りが持つ高級感と耐久性が、購入者や投資家から信頼されているためです。

特に中古市場では、外観の第一印象が成約に大きく影響します。タイル張りの物件は築年数が経過しても外観の劣化が少ないため、「管理の行き届いた良質な物件」という印象を与えやすく、内覧数の増加や成約スピードの向上につながります。

一方で、吹付塗装の物件でも、適切なメンテナンスが行われていれば資産価値の維持は十分可能です。特に立地条件が良好な物件や、管理組合の運営が優秀な物件では、外壁材の違いよりも他の要素が資産価値に大きく影響することもあります。

 

近年の建築トレンドと脱タイル化の動き

Q:最近のマンション建築の傾向は?

A:高級分譲マンションでも脱タイル化が進み、吹付塗装採用が増加しています

  • 地震リスクへの対策として軽量化を重視する傾向
  • タイル剥落事故の増加による安全性への懸念
  • 建築コストの上昇圧力による仕様見直し
  • 塗料技術の向上により吹付塗装の品質が大幅改善

近年の分譲マンション建築では、「脱タイル化」という興味深いトレンドが見られます。これまでタイル張りが当然とされていた高級分譲マンションでも、吹付塗装を採用する事例が急増しています。この背景には、複数の要因が複合的に作用しています。

最も大きな要因は、地震リスクへの対策です。東日本大震災以降、建物の軽量化と耐震性向上への関心が高まっており、重量のあるタイルよりも軽量な吹付塗装が選ばれる傾向があります。また、タイル剥落による事故リスクへの懸念も、この流れを加速させています。

建築コストの上昇も重要な要因です。職人不足と材料費高騰により、タイル張りの施工費用は年々上昇しており、同じ予算でより良い立地や設備を選択するため、外壁仕様を見直すデベロッパーが増加しています。

一方で、塗料技術の革新的な進歩により、吹付塗装の品質は飛躍的に向上しています。耐久性、耐候性、意匠性のすべてにおいて、従来のタイル張りに匹敵する性能を持つ製品が開発されており、合理的な選択として吹付塗装を採用するケースが増えています。

 

将来のメンテナンス計画を考慮した判断

Q:長期的な維持費用はどちらが有利?

A:初期費用を含めた総合的な検討が必要で、一概にどちらが安いとは言えません

  • タイル張りは初期費用高額だが長期間メンテナンス不要
  • 吹付塗装は初期費用安価だが10年周期での塗り替えが必要
  • タイル剥落リスクがある場合は大規模な修繕費用が発生
  • 管理組合の修繕積立金計画に大きく影響

外壁材選択において最も重要な検討事項の一つが、長期的なメンテナンス計画です。タイル張りと吹付塗装では、初期費用とランニングコストの構造が大きく異なるため、物件の保有期間や管理方針に応じた判断が必要です。

タイル張りの場合、初期費用は高額ですが、適切に施工されていれば30年以上にわたってメンテナンスが不要な場合もあります。しかし、施工不良によるタイル剥落が発生した場合、修繕費用は大規模修繕工事の1.5倍から2倍に膨らむ可能性があります。

吹付塗装の場合、初期費用は安価ですが、10年程度での塗り替えが必要です。ただし、塗り替えのタイミングで最新技術を導入できるため、次回の塗り替え周期を延長できる可能性もあります。

重要なのは、これらの費用が管理組合の修繕積立金に与える影響です。タイル張りの物件では、将来的な大規模修繕に備えて十分な積立金を確保する必要があり、月々の修繕積立金が高額になる傾向があります。

 

購入時の確認ポイントと注意事項

Q:外壁材で確認すべき点は?

A:施工品質、メンテナンス履歴、修繕積立金の状況を詳しく確認することです

  • 新築時の施工会社と施工品質の確認
  • 中古物件では過去の修繕履歴とタイル浮き検査結果
  • 修繕積立金の残高と将来の修繕計画
  • 管理組合の運営状況と意思決定プロセス

分譲マンション購入時には、外壁材に関する詳細な確認が不可欠です。新築物件の場合、施工会社の実績と信頼性、使用するタイルや塗料の仕様、施工方法などを詳しく確認しましょう。特にタイル張りの場合、湿式工法か乾式工法かによって将来の耐久性が大きく異なります。

中古物件の場合、過去の修繕履歴が最も重要な確認事項です。大規模修繕工事時にタイルの打診検査が実施されているか、浮きや剥落の発見状況、修繕内容などを詳しく確認してください。特に2007年・2008年竣工の物件では、タイル浮きのリスクが高いため、慎重な調査が必要です。

修繕積立金の状況も重要なポイントです。タイル張りの物件では、将来的な大規模修繕に備えて十分な積立金が必要ですが、実際には不足している管理組合も少なくありません。長期修繕計画と現在の積立金残高を照らし合わせ、将来的な一時金徴収の可能性も含めて検討しましょう。

 

まとめ

タイル張りと吹付塗装の比較

比較項目 タイル張り 吹付塗装
初期費用 高額(吹付の1.5〜2倍) 比較的安価
耐久性 非常に高い(30年以上) 中程度(10年程度)
メンテナンス頻度 少ない(高圧洗浄程度) 10年周期での塗り替えが必要
外観・高級感 高級感・重厚感あり シンプルで控えめ
主なメリット
  • 耐久性に優れている
  • 高級感のある外観
  • 色褪せしにくい
  • 資産価値が維持されやすい
  • 初期費用が安い
  • 部分修繕が容易
  • 最新技術を取り入れやすい
  • 修繕計画の自由度が高い
主なデメリット
  • 初期費用が高額
  • タイル剥落のリスク
  • 打診検査の義務化
  • 修繕時の費用が高額
  • 定期的な塗り替えが必要
  • 汚れが付着しやすい
  • ひび割れが発生しやすい
  • 高級感の演出に限界

分譲マンションの外壁材選択は、単純にタイル張りか吹付塗装かという二択ではなく、購入者のライフスタイル、価値観、経済状況を総合的に考慮した判断が必要です。

タイル張りは確かに高級感があり、長期的な耐久性にも優れていますが、高額な初期費用と将来的なリスクも伴います。一方、吹付塗装は経済的で実用的ですが、定期的なメンテナンスが必要で、資産価値の面では劣る場合もあります。

重要なのは、どちらの外壁材を選択するにしても、施工品質と管理体制が最も大切だということです。優秀な施工会社による適切な工事と、しっかりとした管理組合による計画的なメンテナンスがあれば、どちらの外壁材でも長期間にわたって美観と機能を維持できます。

マンション購入は人生最大の買い物の一つです。外壁材についても十分な知識を身につけ、将来を見据えた賢い選択をしていただければと思います。立地や間取りだけでなく、建物の仕様や管理体制まで含めて総合的に判断し、あなたにとって最適な物件を見つけてください。

 

 

広島では

広島の新築マンションを見渡すと、やはり外壁タイル採用の減少、吹付外壁の採用の増加が確実に見てとれます。建築コスト削減のために行われています。

特にSさんの物件は顕著です。外壁部全体の2割くらいしかタイルを貼っていないように見えます。こんな言い方すると怒られるかもしれませんが、賃貸のようで高級感が無く、ショボい印象です。まるでひと昔前のUR賃貸や公務員官舎のようです。今後は建築コストの問題で。Sさん以外のデべさんでも増えてくると確信しています。

しかし、これからの技術革新などで、吹付外壁のほうが長期的なメンテナンス費用軽減が実現できるかもしれません。

 

参考

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この記事を書いた人
﨑ちゃん

新築マンションに携わって30年!!企画から販売、物件マネージャーまで。最近では仲介もやってます。宅建・FP2級・管理士持ってます。趣味が嵩じて大型バイク・潜水士も持ってます。好きなデべは地所さん、野村さん、明和さん、住不さん。

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