マンションの耐震構造
耐震構造は建築時期にも要注意
十数年前に起きた一連の耐震偽装事件以来、不動産会社はモデルルームでたびたび構造説明会を開いていました。構造計算を担当した建築士などを講師に、そのマンションの耐震強度がどれくらいあるか、地盤の状況がどうかなどを説明してくれます。構造計算とは、マンションなど一定以上の大きさの建物の設計段階で耐震性を計算し、基礎も含めて建物構造全体を支える柱や梁の太さ、鉄筋や鉄骨の量を決定することです。
偽装事件を受けて、2007年6月に耐震性の設計と建設のチェックの点で建築基準法が大きく改正されました。構造設計の計算チェックもより厳格になり、建築確認申請とは別に構造の専門家がダブルチェックで行う「構造計算適合性判定」が行われるようになりました。その影響で、改正法が施行された直後の2007年6~12月は、ピアチェックが厳しく、膨大な時間がかかり、新築マンションの建築確認申請がなかなか下りず着工できないという状況にもなってしまったほどです。着工や分譲の許可が下りないので、建設会社や不動産会社の経営悪化につながった原因のひとつともいわれています。それ以降、買う側にとってはいいことで、厳格な構造計算適合判定が行われた安全な建物を選ぶことができますが、あくまでも2007年12月以降に建築確認が下りたマンションを選ばないとこの判定は実施されていませんので、それぞれの分譲マンションの建築確認番号の次にカッコの中に記載されている年月日をよく注意して見てください。
また、2000年4月から導入された品質確保促進法では、国土交通大臣指定の第三者機関が建物の性能評価を行っています。偽装事件が発覚してからは、不動産会社も積極的に性能評価を受けるようになりました。なかでも「耐震等級」については、直接、耐震性を評価するものです。「等級1」とされるものは、3.11の東日本大震災や阪神・淡路大震災規模の震度7の地震でも人命に危害を及ぼすような崩壊や倒壊の被害を生じないとされています。さらに「等級2」はその1.25倍の耐震性能があり、「強耐震」といわれて病院や学校に採用されます。「等級3」は「等級1」の1.5倍になります。実際に、「等級3」とされるものは、原子力発電所や首相官邸のような建物で非常に建築コストもかかるし、柱や梁も太く出っ張ってくるので、経済性と快適性の点からかなり厳しいと思います。
マンションは「等級2」で十分
通常のマンションで「等級3」を取っているものはほとんどありません。「等級1」であれば、日本国内で過去に起きた記録された限りの地震にも耐えられる設計となっていますし、「等級2」を取っていればより安心といえます。もちろん地震の振れを吸収することで地震力をなるべく受けない免震構造が建物にとって安全であることは言うまでもありません。マンション全体を人間の身体にたとえると、鉄筋や鉄骨は骨に当たり、コンクリートは筋肉だといえます。どちらも大切な身体の一部です。これら鉄筋・鉄骨とコンクリートをどのように組み合わせているかによって、工法の名前が違います。おもに「RC(鉄筋コックリート)造」「SRC(鉄筋鉄骨コンクリート)造」「S(鉄骨)造」「PC(プレキャスト=鉄筋コンクリート板)造」の4種類がありますが、分譲マンションではRC造やSRC造になります。
また、「コンクリート耐久設計基準強度」や「コンクリートと水の配分比率」などは耐久性に関係してきます。あるいは「かぶり厚」という鉄筋までのコンクリートの厚さは、できれば建築基準法で定められている厚みよりも10mm以上厚いほうが、より鉄筋の酸化を防いでくれます。柱の帯筋についても、「溶接閉鎖型筋」や「スパイラル筋」が採用されていれば地震の際も強度が強く、安全です。
マンションの構造
鉄骨、鉄筋とコンクリートの組み合わせでつくられるものが多いです。構造種別と構造形式は求められる性能によって決まります。木造で建てられる階数は、一般的なものでは3階建てまでで、鉄骨造(以下S造)、鉄筋コンクリート造(以ドRC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(以下SRC造)についてはさまざまな規定があるものの、基本的には階数についての制限はありません。「マンション」と呼ばれるのは、階数に制限のある木造ではなく、S造のうちのいわゆる重量鉄骨造(軽量鉄骨造以外)とRC造、SRC造の建物です。
●RC造
●SRC造
●S造
・「ラーメン構造」と「壁式構造」
低層から中高層のマンションの多くに採用されている構造はRC造ですが、この構造形式にはラーメン構造と壁式構造に分けられます。マンションの建物には主に2通りの構造があり、柱や梁で支える構造を「ラーメン構造」といいます。もうひとつは、柱や梁ではなく、壁全体でマンション全体を支える「壁式構造」といいます。「壁式構造」は地盤がしっかりしている場所で、6階程度以下の建物であれば十分な強度が保てますし、柱や梁が大きく出っ張らない分、部屋も広く感じられますから、シングル女性が選ぶ1LDKや2LDKのマンションには向いていると思います。
【ラーメン構造】
「ラーメン」というのはドイツ語で「枠」という意味です。ほとんどのマンションの構造は、このラーメン構造です。ラーメン構造のメリットは柱や梁を太く大きくすれば、広い空間が確保できることです。一方、デメリットは住戸内に「柱」や「梁」が張り出してくることです。柱と梁で骨組みをつくる構造。壁式構造にくらべて開口部を広くとることができます。室内に柱や梁が張り出してしまうのが難点です。
【壁式構造】
壁式構造がよいと考える理由
分譲マンションにとっては壁式構造のほうがよいと言えます。壁式構造は工夫すれば80㎡ほどの空間確保は可能で、その空間のなかには「構造壁」がないように計画できます。壁式構造のマンションは旧耐震構造基準(昭和56年以前の構造基準)のものでも、阪神淡路大震災で1棟もつぶれなかったことが知られています。
また、壁式構造は外壁も構造壁で厚く(18m以上)、ダブル配筋(複列配筋)です。さらに、住戸と住戸の間の戸境壁も構造壁で厚く(最近は20㎝以上)、遮音性も高くなっています。
・耐震構造、免震構造、制震構造
建物の構造として、耐震構造、免震構造、制震構造というものがあります。免震構造とは、揺れそのものが直接建物に伝わりにくくする構造のことです。より高度な建築技術が必要で、免震装置を建物の一部に入れ、地震の揺れを吸収するものです。たまたま免震構造のマンションをチェックしていたときに震度5の地震があり、その揺れを体感したのですが、揺れないというのではなく、ゆっくり動くという感じです。さらに地震の揺れを抑えてコントロールする制震構造は20階建て以上の超高層タワーマンションに採用されるケースがあります。いずれにしても震度7に耐え得る構造の耐震等級1または鉄筋や鉄骨コンクリートの量を多くした耐震等級2の「強耐震構造」であれば安心です。
免震構造と制振構造
「免震構造」と「制振構造」は建物の被害を最小限に抑え、建物の機能を保持することを目標にしています。免震構造は、地盤の揺れを直接建物に伝えない装置(免震装置)をもつ構造です。この装置は最下階の床下や建物の中間層に取りつけられます。
免震装置の基本的な機能は、地震力を建物に伝えない、揺れを大幅にカットして建物の被害を最小にするということです。いっぽう制振構造は建物と地盤を切り離すということはしません。制振構造は建物に伝わる力を受け流すか、受けにくくする装置(制振装置)をもつ構造です。これら免震、制振構造が優れているにも関わらず、多くの建物に採用されないのは、初期投資が大きくなってしまうことが大きな障害になっているからかもしれません。今後、これらの装置が安価になり、よりコンパクトになればより多くの建物に採用されるようになっていくのでしょう。
長周期地震動に「免震構造」のタワーマンションは耐えられるのか?
免震構造を採用したタワーマンションは、地震時に建物全体が揺れることがなく、住民の安全を抑えることができます。また、免震構造によって、建物の耐震性能を高めることができるため、長く周期的な地震動にも使用することができます。
ただし、免震構造を持つタワーマンションでも、建物の高さや地盤の性質によっては、耐震性能に限界がある場合があります。また、免震構造の導入には高いコストがかかるため、その費用が建築にかかる費用に影響することもあります。
総じて言えることは、免震構造を採用したタワーマンションは、適切な設計や施工が行われた場合には、長周期地震動にも制約することができます。 ただし、建物の高さや地盤の性質によっては、耐震性能に限界があるため、建物の構造に合わせた適切な対策が必要とされます。
長周期地震動に「制振構造」のタワーマンションは耐えられるのか?
制振構造を採用したタワーマンションは、地震時に建物全体が揺れることがなく、住民の安全を抑えることができます。また、制振構造によって、建物の耐震性能を高めることができるため、長く周期的な地震動にも使用することができます。
ただし、制振構造を持つタワーマンションでも、建物の高さや地盤の性質によっては、耐震性能に限界がある場合があります。また、制振構造の導入には高いコストがかかるため、その費用が建築にかかる費用に影響することもあります。
総じて言えることは、制振構造を採用したタワーマンションは、適切な設計や施工が行われた場合には、長周期地震動にも制約することができます。 ただし、建物の高さや地盤の性質によっては、耐震性能に限界があるため、建物の構造に合わせた適切な対策が必要とされます。
地震に強い構造とは?
2011年の東日本大震災以降、新築分譲マンションへの耐震性に関しては注目が集まっています。日本の建物は建築基準法によって、震度6強~7の地震まで耐えられるだけの耐震性を確保するよう義務付けられています。
「耐えられる」というのは、最低限、柱や梁がくずれたり、床が抜けたり壁が倒れたりして、建物内にいる人が死傷しないことを指します。耐震性を確保する構造には、「剛構造」と「柔構造」という2通りがあります。剛構造は、柱や梁、壁などをがっちりつくって地震の揺れに対抗します。RC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)があてはまります。
一方、柔構造は、建物を柳のようにしなやかにつくり、地震の揺れで構造体を壊さないようにします。これにはS造(純鉄骨造)があてはまります。超高層建築物などで用いられることが多い構造です。
・日本では短周期の地震が多い
地震の強い揺れは1秒未満の周期が多いのです。日本では関東大震災以来、比較的震源が近く、揺れの周期が短い地震が多いと言います。建築基準法における耐震基準も、こうした過去の短周期型地震のデータをもとにして改正されてきています。
建物が揺れる周期は、建物の高さが高く、軽く、柔軟にできているほど長くなります。現在のタワーマンションの柔構造は、この理論に基づいて設計されています。
・長周期の地震にも注意が必要
しかし地震のなかには、長周期型地震という、揺れの周期が2〜20秒ほどと長くなるパターン(ユラーリユラーリという揺れ)のものもあります。地震と建築物の関係について長周期型地震を研究しているある学者のお話では、「揺れの周期が長くなる夕イプの地震は、日本は今まで経験したことがない。もしも東京直下でこのような地震が起こった場合、超高層建築物にかなりの被害が出る可能性がある」ということでした。特に湾岸エリアのように地盤の柔らかいところは、同じ地震でも揺れが長くなる傾向があります。
かんたんに建物や杭が折れたりすることは考えにくいですが、東日本大震災の折には、あの地震とそれにつづく余震で超高層マンションの上階は長い間揺れ、乗り物酔いのような症状を訴える人も出ました。
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