分譲マンションの外壁は「タイル」「吹付塗装」どちらが良いの?

築何年? マンションの基礎知識

【PR】

外壁はタイルのほうが高級感があるが・・・

分譲マンションの外壁、

タイルが良いのか? 吹付塗装が良いのか?

業界の一般的認識としては、圧倒的にタイルが良いとされています。実際に供給されている物件のほぼ99%が外壁タイルを採用しています。お客様ウケも間違いなくタイル外壁のほうが良いです。タイルのほうが高級感があります。吹付塗装だとチープです。私も買うとすればどちら?と聞かれれば、迷わずタイルです。

 

修繕を考えると吹付が正解なのか?

しかし、維持管理コストや長期修繕計画、大規模修繕を考えると、今後はもしかしたら吹付塗装が正解なのかもしれないと思い始めてきました。とある中堅デべの部長さんと設計事務所の代表さんとお話をしていたら、彼らも同じような意見をお持ちでした。

タイル部分が減少!!吹付面積が増えている!!

ここ広島でも、一番多くのお部屋を供給しているデべさんの完成物件を見ると、驚くほどタイルの面積が少ないです。多分建築コスト削減の意味合いが強いのでしょうが、修繕を考えるとこれが正解なのかもしれません。

 

「タイル」と「吹付塗装」どちらが修繕コストが低いのか?

新しくマンションを購入する際、多くの方が気にされるのが修繕費や管理費です。特に中古マンションの場合、大規模修繕工事の時期が迫っているケースもあり、とても身近な問題となります。修繕費を考える際に重要なポイントが、マンションの外壁が吹付塗装なのか、タイル張りなのかという点です。一般的にタイル張りは初期費用は高いものの、維持費や修繕費を含めた長期的な視点では結果的に安いという意見が目立ちます。しかし、本当にタイル張りの方が経済的なのでしょうか。ここでは両者のメリット・デメリットを詳しく比較し、実際のコストデータを基に検証していきます。

 

「タイル」「吹付」構造と初期費用の違い

Q: タイルと塗装の初期費用差は?

A: タイル張りは吹付塗装の約1.5~2倍の初期費用がかかります。

タイル張りは、主に磁器質タイルをコンクリート壁に接着して仕上げる工法で、見た目の高級感があり耐久性も高いため、高層・高級マンションで多く採用されています。施工には足場設置、タイル加工、接着、目地施工など多くの工程が必要で、熟練した職人の技術も求められるため、初期コストが高めになります。一方、吹付塗装は合成樹脂系塗料やアクリル系塗料などを外壁に吹き付けて仕上げる工法で、意匠性の高い塗料を使えばタイル調の風合いを出すことも可能です。施工性に優れ、コストも抑えられることから、最近では多くの中規模から大規模マンションで採用が増えています。

初期費用比較(100㎡あたり)

初期費用比較(100㎡あたり)

初期費用の差は明確で、タイル張りは100㎡あたり約180万円、吹付塗装は約120万円となっており、60万円程度の差があります。この差額は建物規模が大きくなるほど顕著になり、1000㎡規模のマンションでは600万円もの差が生じることになります。ただし、この初期費用の差だけで判断するのは早計で、長期的な維持管理コストを含めた総合的な検討が必要です。

 

耐久性と経年劣化の比較分析

Q: どちらが長持ちするの?

A: タイル本体は30年以上持ちますが、浮き・剥落リスクがあります。

タイル張りの耐久性について詳しく見ると、タイルそのものは非常に耐候性・耐水性に優れており、適切に施工されていれば30年以上メンテナンス不要というケースも珍しくありません。しかし、建物の揺れや気温変化によってタイルの浮きや剥落が発生するリスクがあり、特に築10年以降になると全面打診調査が推奨されます。2008年の建築基準法施行規則改正により、外壁の全面打診調査が義務化されたことで、タイルの安全管理はより厳格になりました。

外壁材の経年劣化推移

外壁材の経年劣化

一方、吹付塗装の塗膜は紫外線や酸性雨の影響を受けやすく、一般的には10から12年周期で再塗装が必要です。ただし、素材の進化により高耐久な塗料(フッ素系・無機系など)も登場しており、塗替え周期の延長は可能です。興味深いのは、築77年で解体された青山アパートメント(吹付)と築56年のコープオリンピア(タイル)の外壁劣化状況を比較すると、見た目にはさほど大きな違いがないという事実です。これは現代の塗装技術の進歩を示しており、従来言われていたほどの耐久性の差はないことを示唆しています。

 

 

大規模修繕時の費用と周期

Q: 修繕工事の費用差は?

A: タイルの浮き補修は高額で、全面張替えでは300万円以上かかります。

国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン」では、外壁の大規模修繕は12から15年ごとを想定していますが、タイルと吹付塗装では修繕内容と費用に大きな差が生じます。タイル外壁で浮きや剥落が確認された場合、安全性確保のため全面補修が必要となり、修繕費が大きく跳ね上がることがあります。特に平成20年の法改正により、10年経過時点での全面打診調査が義務付けられたことで、他の箇所の劣化が軽微でも足場を組む必要が生じ、結果的に大規模修繕工事を前倒しで実施せざるを得ないケースが増えています。

修繕費用比較表

工事内容 費用(100㎡あたり) 周期
タイル浮き補修 50万円 10~15年
タイル全面張替 300万円 30年以上
吹付塗装塗替 80万円 10~12年
高耐久塗装 120万円 15~18年

修繕周期の特徴

  • タイル:長期間メンテナンス不要だが突発的な高額補修あり
  • 塗装:定期的な塗替えが必要だが費用は予測しやすい

吹付塗装の場合は塗替え中心のため、比較的費用の見通しが立てやすく、修繕積立金の計画を組みやすいというメリットがあります。また、塗替え時には最新の高性能塗料を使用することで、次回の塗替え周期を延長することも可能です。これは技術の更新ができないタイルにはない大きなメリットといえるでしょう。実際に、最新のフッ素系塗料や無機系塗料を使用することで、従来の10年周期を15年以上に延長できるケースも増えています。

 

メンテナンス性と管理のしやすさ

Q: 日常管理はどちらが楽?

A: タイルは汚れにくいが点検が専門的、塗装は劣化判断が容易です。

タイル張りの管理面を見ると、通常の雨風には強く汚れも付きにくいため、美観は長期間維持できます。高圧洗浄程度の清掃で十分な場合が多く、日常的なメンテナンスの手間は少ないといえます。しかし、外壁調査(打診・赤外線調査)には専門性が求められ、点検費用が高めになります。また、万一タイルが落下すると重大事故につながるため、定期的な調査が法的・倫理的にも必要になります。2011年の別府マンション裁判では、施工不良によるタイル落下でゼネコンが敗訴したことで、業界全体がタイルの安全管理により慎重になりました。

一方、吹付塗装の管理は塗膜の劣化が目視でも判断でき、部分補修もしやすいのが特徴です。チョーキング(白亜化)やクラック(ひび割れ)などの劣化症状は、専門知識がなくても発見できるため、管理組合での日常点検も可能です。また、塗替え時にデザインを一新できる柔軟性もあり、居住者の満足度向上にもつながります。ただし、タイルに比べて汚れや色あせが出やすいため、再塗装までの期間中の美観維持には注意が必要です。

管理のしやすさ比較

タイル張り

項目 特徴
日常清掃 ◎ 簡単
劣化判断 △ 専門的
点検費用 △ 高額
安全性 〇 要注意

タイル張り

項目 特徴
日常清掃 〇 普通
劣化判断 ◎ 容易
点検費用 ◎ 安価
安全性 ◎ 高い

管理組合の運営面から見ると、吹付塗装の方が管理しやすいといえます。修繕計画が立てやすく、突発的な高額修繕が発生しにくいため、修繕積立金の管理も安定します。一方、タイル張りは美観や資産価値の面では優れますが、専門的な管理が必要で、万一の際の修繕費が高額になるリスクがあります。管理組合の体制や予算に応じて、適切な選択をすることが重要です。

 

 

総合的なコスト比較と選択

Q: 結局どちらが経済的?

A: 長期的には吹付塗装の方がコストを抑えやすく管理も安定します。

40年間の総コストを比較すると、初期費用の差を考慮しても、最終的には吹付塗装の方が経済的になる傾向があります。タイル張りは初期費用が高く、さらに突発的な浮き補修や全面打診調査の費用が加わることで、トータルコストが膨らみがちです。一方、吹付塗装は定期的な塗替え費用はかかりますが、技術進歩により高耐久塗料を使用することで塗替え周期を延長でき、結果的にコストを抑えることができます。

40年間の累積コスト比較

40年間の累積コスト比較

ただし、資産価値の観点では異なる結果が見えてきます。中古マンション市場では、タイル張りのマンションは外観が劣化しにくく、高評価を得やすい傾向があります。見た目の重厚感に加え、施工品質の良さが伝わるため、資産価値が維持されやすいのです。売却時の価格差を考慮すると、メンテナンス費用の差額を上回る可能性もあります。

タイル張りを選ぶべき場合

  • 高級感・資産価値を重視
  • 長期保有予定
  • 修繕積立金に余裕がある

吹付塗装を選ぶべき場合

  • コストを重視
  • 管理の安定性を求める
  • デザイン変更の柔軟性が欲しい

近年は建築コストの高騰に加え、外壁タイルの落下事故が相次いだことから、新築でも吹付塗装に回帰する傾向があります。大手デベロッパーでも、コストパフォーマンスと安全性を重視して吹付塗装を採用するケースが増えています。また、塗装技術の進歩により、タイル調の質感を再現できる高意匠塗料も登場しており、見た目の差も縮まってきています。

結論として、修繕費や維持管理の予測可能性という観点からは、吹付塗装の方がコストを抑えやすく、管理組合としても運営しやすいといえます。一方で、外観や資産価値の観点ではタイル張りが優れるため、「どのような管理方針・予算感でマンションを維持していくか」「将来の売却予定はあるか」といった点を総合的に検討することが重要です。建物の仕様だけで判断するのではなく、長期的な修繕計画と資金計画を見直しながら、管理組合としての方向性を持つことが今後ますます重要になるでしょう。

 

参考資料・関連リンク

※本記事の費用データは一般的な相場を基にした概算値です。実際の費用は建物の規模、立地、施工業者により異なります。詳細な見積もりは専門業者にご相談ください。

スポンサーリンク

【PR】

※坪単価は、過去から現在販売中の物件、すべてにおいて当サイトの予想・想定です。※個人運営のサイトです。竣工時期や坪単価など間違えていたらごめんなさい。※物件購入の判断は、このサイトの内容では行わないでください。※物件名は省略する場合があります。

この記事を書いた人
﨑ちゃん

新築マンションに携わって30年!!企画から販売、物件マネージャーまで。最近では仲介もやってます。宅建・FP2級・管理士持ってます。趣味が嵩じて大型バイク・潜水士も持ってます。好きなデべは地所さん、野村さん、明和さん、住不さん。

﨑ちゃんをフォローする
マンションの基礎知識
シェアする
﨑ちゃんをフォローする

コメント