フラット35
●金利が変わらない安心感が手に入る
「フラット35」とは、住宅金融支援機構が銀行から住宅ローンを買い取り証券化することで実現した、最長35年の「全期間固定型」です。
窓口となる銀行により金利や手数料が微妙に異なるのですが、全期間固定型としては歴史上、極めて低い水準です。厳しいローン審査がなく、ローン保証料や連帯保証人が必要ないのも魅力的。ただし、金利に団信が入っていないので、任意で入ります。
現在、安倍首相と日銀は日本の景気を上げるために、物価2%上昇をめざしています。今はまだ実現できていませんが、達成できたときには住宅ローンの金利も上がるでしょう。全期間固定型の金利は3タイプの中でいちばん高いのですが、先が読める安心感が大きなメリットです。
みんなにやさしい「フラット35」の特徴
1.最長35年間、今の金利で固定
2.ローン保証料が無料、連帯保証人も必要なし
3.繰り上げ返済の手数料がかからない
4.派遣社員でもローン可能、厳しい審査がない
5.物件価格の全額を借りることができる
・保障料、繰り上げ返済の手数料なしが魅力!?
住宅ローンは公的融資と民間融資に分けられます。しかし、公的融資のメインであった住宅金融公庫は、平成19年4月から独立行政法人住宅金融支援機構となり、直接融資はなくなりました。直接融資に代わってスタートしたのが「フラット35」です。民間金融機関の住宅ローンの債権を、住宅金融支援機構が買い取り、証券化することで投資家から資金調達します。フラット35の魅力は名前が示すように「金利が35年問フラット(固定)」であることです。経済情勢の変化で世の中の金利が上昇すると、ローンの固定金利はお得感がアップします。固定金利の特長である資金計画の立てやすさもうれしいところといえるでしょう。
また、ローンの保証料も不要です。さらに、繰り上げ返済の手数料も無料です。平成17年度から住宅の床面積の上限撤廃、融資額の上限引き上げがされたことで利用しやすくなりました。民間金融機関だけでなく、不動産会社系のノンバンクでも、フラット35を取り扱っています。
フラット35のボーナス返済額は借入金の40%以下
ほとんどの金融機関では、毎月分の返済額を少なくして、その分をボーナス時に返済する「ボーナス時増額返済」ができます。フラット35や公的融資では借入金の4.0%以下、50万円単位とされています。たとえば、借入金が940万円の場合、ボーナス返済額は376万円以下で、なおかつ50万円単位であるため、ボーナス返済額は最高350万円です。残りの590万円は毎月返済分ということになります。民間融資では、借入金の50%以下で10万円単位などと決められています。
ボーナス時増額返済では総返済額が増える
ボーナス時増額返済は、毎月返済額を低く抑えることができるため、定期的にボーナスをもらっているサラリーマンに、広く利用されてぃましたが、現在の社会情勢を反映してしだいに少なくなっています。ボーナス時増額返済では、毎月の返済額が少なくなる分、ボーナスとボーナスの間(6か月)の元金の減り具合が少なくなり、その分利息が増えることになります。結果として、ボーナス時増額返済のほうが、毎月返済のみより総返済額はやや多くなります。
ボーナスに頼りすぎてはだめ
ボーナスは景気や企業の業績などに左右され、その額が安定しません。毎月返済分を中心に返済計両を立てるのが基本です。すべての借入金を毎月返済のみで組むことが難しい場合は、公的融資でボーナス時増額返済を利用して、民間融資は毎月返済のみにする、といった方法で、リスクを分散させる工夫も考えられます。
フラット35利用の注意点
1.「フラット35」の窓口は銀行や信金
2.少し厳しい物件検査が必要
3.金利や融資手数料は銀行によって違う
4.団信はついていないため、プラスオンで入る
フラット35は、取り扱う金融機関によって金利が異なります。住宅金融支援機構のHPの、【フラット35】のホームページでは、地域別に最新の金利情報が調べられますので、利用してみるといいでしょう。フラット35は、借り入れ申し込み時の金利ではなく、融資実行時の金利が適用されることを留意しておきましょう。融資が実行されるのは物件引き渡し時ですから、申し込みから融資実行まで一年近くあいてしまうときは、金利の変化に注意が必要です。
性能が優れた住宅なら金利が低い「フラット35S」
「フラット35S」とは省エネルギー性、耐震性。バリアフリーなどに優れた住宅なら、一定の金利が引き下げられるローンでdス。住宅性能の条件によって、当初10年間年0.6%引き下げのAプランと、当初5年間年0.6%引き下げのBプランがあり、これは変動型の金利並みです。優良住宅の建設費は高いのですが、金利割引の分を建設費に回したり、また修繕費が少なくすむので長い目で見ればおトクです。また、最長50年間固定金利の「フラット50」もあります。
・フラット35のバリエーション
【フラット35】
【フラット35S】
【フラット50】
・「人」よりも、「建物」の審査のほうが厳しい
フラット35は、借り手に厳しい審査基準を設けている民間の住宅ローンとは異なり、ある意味では。開かれた・住宅ローンといえます。年収400万円未満の人でも、すべての借入れの年間合計返済額の割合を年収の30%以下に抑え、手持ちの資金を10%以上用意するなどの対策をとれれば十分審査の対象になります。
その一方で、良質な住宅を普及させたいという意図から、借入れ対象の建物にはいろいろと「注文」が付けられます。たとえば、戸建住宅なら延床面積が70㎡以ヒあることが融資の条件です。また、耐久性や耐震性などに独自の技術基準があり、建設途中・竣工後に検査が行われ、基準をクリアすることが確認できたのちに融資がおりる仕組みです。そのため注文住宅では、建設開始時や建設途中に施工会社に支払う「着工金」や「中間金」などは、別途「つなぎ融資」を利用するのが一般的です。
・フラット35は「証券化」より金利が変わらないローン
民間の金融機関が実行した住宅ローンの債権を住宅金融支援機構が買い取り、その債権を担保として証券(住宅金融支援機構債券)を発行するという仕組みにより、市場金利がどんなに変動してもフラット35の金利は影響を受けません
・フラット35で住宅ローンを組むと「つなぎ融資」が必要
つなぎ融資とは、金融機関から融資金が下りるまでの数カ月間、一時的に借りるローンのことです。自分の預貯金だけでは施工会社に工事代金を支払いきれない場合は、つなぎ融資を使ってひとまずその代金を支払います。通常の住宅ローンより金利が高く、つなぎ融資のためだけの諸費用もかかるので、計画の際はつなぎ融資分の費用も計算に入れておく必要があります。
諸費用にメリットあり!!
フラット35には、諸費用面にもいくつかのメリットがあります。第一は、保証料がかからない点です。一般的に銀行ローンでは、図3のように35年の元利均等返済を利用した場合には、100万円当たり約2万円の保証料になります。3000万円借り入れるとすれば、60万円の負担ということになります。これがゼロですむのですから、たいへん大きなメリットといえるでしょう。
このほか、ローン契約にあたっては、抵当権設定が欠かせませんが、フラット35ではこのとき必要になる登録免許税が非課税になります。数万円程度の税金がゼロになるのです。ただし、公庫が定める基準に合致しているかどうか、建物の検査を専門機関に依頼しなければなりません。この費用が1件当たり2万〜3万円かかります。
また、通常、銀行ローンでは剛体信用生命保険への加入が不可欠ですが、その保険料は金利に含まれるため、利用者が別途負担する必要はありません。しかし、フラット35では任意加人で、加入するときには保険料の負担が必要になります。公庫保証協会を利用すると、35年の元利均等返済で1000万円当たり約60万円。3000万円では約180万円に達します。年払いであり、一括払いではないものの、決して小さな負担とはいえないので、注意してください。ただし、諸費用全体としては比較的少ない費用ですむでしょう。
一部繰り上げ返済が有利
ローン返済が始まってからもがんばって貯蓄を進めたら、一部繰り上げ返済でトクしたいものです。金利や返済期間、ローン残高にもよりますが、100万円の繰り上げ返済をすると、100万円以上の利息支払いをカットできることが少なくありません。それも実行時期が早いほど、効果が大きくなります。
しかし、ほとんどの銀行ローンでは、繰り上げ返済には手数料がかかります。変動金利だと5250円ですむのが一般的ですが、固定金利選択型では3万円台〜5万円台のケースもあります。何度も繰り上げ返済するとその手数料もばかになりません。また、公庫融資でも、3150円から5250円の手数料がかかります。それが、フラット35の場合には無料になるのです。
ただ、繰り上げ返済には最低単位が定められている点に注意が必要です。公庫でもそうですが、フラット35も原則的に100万円以上からという条件がついています。銀行ローンだと、毎月の返済額単位、半年分単位などのところが多いようです。とはいえ、細かく繰り上げ返済していると手数料負担が大きくなりますから、100万円以上貯めれば無料で繰り上げ返済できるフラット35のほうが、使い勝手がよいのではないでしょうか。
フラット35はこんな人にぴったり
年収が多く、また借入金額も少ないので返済期間を10年程度にできるという人なら、固定金利選択型の固定期間の短いローンでも、金利上昇によるリスクは小さくなります。そういう人なら、優遇金利が適用される超低金利口-ンを考えてもよいでしょう。
しかし、30年、35年返済にせざるを得ないという人だとやはり安心がいちばん。金利上昇によるリスクの小さいフラット35が向いています。特に20歳代、30歳代の比較的若い人で、じっくりと眄間をかけて、他の支出とのバランスをとりながら、余裕を持って返済したい、という人によいでしょう。
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