ベランダやポーチは専有面積に含まれる?
マンションを購入する際、「専有面積」という言葉をよく耳にします。この専有面積は物件選びの重要な指標となりますが、実際にどのような意味を持ち、何が含まれるのかを正確に理解している方は少ないかもしれません。この記事では、専有面積の定義から計算方法、よくある誤解まで詳しく解説します。
専有面積の基本的な定義
専有面積とは、マンションなどの区分所有建物において、それぞれの区分所有者が単独で所有している建物の専有部分の面積のことです。区分所有とは基本的に所有者が住む住戸である「〇号室」などのことであり、以下のような居住スペースが所有者の専有部分として所有権が認められています。
- 住戸内の各部屋
- 廊下
- 浴室など
これらの専有部分を合計した面積が、マンションなどの住戸の所有者が所有する専有面積です。ここで注意しなければいけないのが、専有部分と共用部分に明確な区別がないということです。
専有部分と共有部分の区分は、区分所有法によってある程度の枠組みが示されています。ただし、所有区分法だけでは明確に区分されていないため、最終的に判断するためには各マンションの管理規約を確認する必要があります。
専有面積には主に2つの種類があり、それぞれ計算方法が異なります。
- 登記簿面積(内法面積)
- 壁芯面積
種類 | 特徴 | 記載される場所 |
---|---|---|
登記簿面積(内法面積) | 壁などの内側部分の面積を合計した面積 | 登記簿謄本 |
壁芯面積 | 壁の中心を境界線とした面積を合計した面積 | マンションのパンフレットやチラシ |
登記簿面積(内法面積)
登記簿面積とは、その名の通り「登記簿謄本」に記載される面積のことで、内法面積とも呼ばれています。登記簿謄本とは、土地や家、建物、マンションなどの不動産を所有する人の住所や氏名が記載された証明書です。
登記簿謄本には、所有する不動産の所在や大きさ、構造、地目なども記載されており、専有面積として登記簿面積が記載されています。マンションの場合、専有部分における「壁などの内側部分の面積」を合計した面積が登記簿面積です。
たとえば、部屋の内側に柱などのでっぱりがあった場合、その面積は登記簿面積としては合算されません。つまり、壁の厚さや柱などの面積を抜いた、実際に利用できる部屋の広さが登記簿面積となります。
壁芯面積
壁芯面積とは、専有部分における「壁の中心を境界線とした面積」を合計した専有面積です。マンションのパンフレットやチラシ、販売時の図面には、主に壁芯面積が表記されています。
壁芯面積は、壁の厚さの半分が専有面積の要素として加わるため、登記簿面積に比べて数値上の専有面積が広くなります。壁が厚いと、その分登記簿面積との差が大きくなるため、実際に部屋を見ると違和感があるかもしれません。
壁芯面積と登記簿面積の差
壁芯面積と登記簿面積を比べた場合、一般的に住戸の面積が狭いほど専有面積の乖離が大きくなる傾向があります。部屋のタイプごとの差の目安は、以下の通りです。
壁芯面積と登記簿面積の差
- ファミリータイプ(約70㎡):平均約6%
- ワンルームタイプ(約30㎡):平均約11%
※住戸の面積が小さくなるほど、乖離が大きくなる傾向があります
専有面積を確認する際は、その表し方が壁芯面積と登記簿面積のどちらかを確認しましょう。
専有面積に含まれない場所はどこか
マンションの住戸内の面積は、基本的に専有面積に含まれていると考える人は多いでしょう。しかし、専有面積に含まれない場所には、専有面積に含まれていると誤解しやすい場所もあります。
特に誤解しやすいのは、以下のような場所です。
- ベランダ・バルコニー
- ロフト
ベランダ・バルコニー
マンションの住戸に設置されたベランダやバルコニーは、部屋に付属しているため専有面積に含まれると思う人も多いのではないでしょうか。ベランダやバルコニーは、専有面積には含まれないため注意が必要です。
ベランダやバルコニーはかならずしもその部屋の所有者だけが使用する場所ではありません。緊急時にはマンションの住人全員が利用する可能性があります。
そのため、マンションの管理規約には専有部分としてではなく、専用使用権が各部屋の住人に与えられているのです。また、ベランダやバルコニー同様、マンションの1階住戸などに設置されている「専用庭」なども専有面積には含まれないため注意しましょう。
ロフト
ロフトは、条件によって専有面積に含まれる場合と含まれない場合があります。ロフトが専有面積に含まれない条件は、以下の3つです。
- ロフト部分の高さが1.4m未満
- ロフト部分の面積が下の階の1/2未満
- 人が常時利用する用途になっていない
条件を満たしている場合、ロフトは「屋根裏収納」などと同じ扱いになるため、専有面積には含まれません。ロフトがついている場合は専有面積+ロフト部分のスペースになるため、表記された専有面積よりも広くなるでしょう。
ただし、条件を満たしていない場合は2階部分とみなされるため、専有面積に含まれます。なかには、表記ミスでロフト部分も専有面積に含まれてしまっている場合もあるため注意しましょう。
ベランダやバルコニーなどは共有部分
ベランダやバルコニーは、専有部分ではなく「専用使用権のある共用部分」に位置づけられています。ベランダやバルコニーはマンションの各住戸から続いており、各住戸の間には突き抜けられる壁が設置されている場合や階下へ抜けるための通路が設置されているのはご存知でしょう。
これは、マンションの住人全員が火災などの緊急時に避難経路として利用できるようにするためです。緊急時に住人全員が利用するため、専有部分ではなく共用部分という位置づけになっています。
基本的には各部屋の住人が自由に利用できるベランダやバルコニーですが、専用部分ではないため避難の妨げとなる荷物などを置くことはできません。
注意点
ベランダやバルコニーは共用部分ですが、「専用使用権」が認められています。これは、その部屋の住民が専用で使用できる権利ですが、マンションの管理規約で定められた範囲内での使用に限られます。
特に以下の点に注意が必要です:
- 避難経路を塞ぐような大型の家具や物品を置かない
- マンションの美観を損なうような使い方をしない
- 管理規約で禁止されている行為(喫煙など)を行わない
アルコーブとは
アルコーブとは、お部屋や廊下の壁面に「くぼみ」をつくった部分を指す言葉です。もともとは、ヨーロッパの建築で良く使用されている技法で、お部屋の中の壁面に凹凸を作り、飾り棚・ニッチや書斎コーナーとして活用するようなスペースです。日本の建築で言えば、床の間もアルコーブの一種と言えます。
不動産広告等で使用されるアルコーブの意味は、マンション住戸の玄関と共用廊下前に設けられた1~2㎡ほどのスペースを指します。そこまで広いスペースではないため、あまり意識されていない方も多いと思いますが、マンションでもよく見かけるスペースです。
アルコーブのメリット
アルコーブのメリットは、外からの視線を遮ることができることです。通常、マンション住戸の玄関は廊下に面しているため、出入りの際にお部屋の中が廊下から見えてしまうことがあります。
アルコーブがあれば、玄関と共用廊下との間にスペースができるため、出入りの際に外からの部屋の中が見えづらく、プライバシーが保たれるというメリットがあります。また、玄関の出入りや荷物の搬入などの際にも、通行の妨げになりづらいというメリットもあります。
玄関ポーチとの違い
マンション住戸の玄関前スペースとして、似た意味で使われるのが「玄関ポーチ」です。アルコーブとの違いとして分かりやすいのが、門扉がついているかどうかということです。門扉があることで、よりプライベートなスペースという感じがします。また、防犯的な意味でもメリットがあると言えます。
玄関ポーチはマンションの構造上、角部屋に設けられることが多いのも特徴です。
特徴 | アルコーブ | 玄関ポーチ |
---|---|---|
門扉の有無 | なし | あり |
専用使用権 | なし(共用部分) | あり(専用使用権あり) |
設置場所 | どの住戸にも設置可能 | 角部屋に多い |
アルコーブと玄関ポーチには、もう一つ重要な違いがあります。それは、共用部の専有使用部分であるかどうかという点です。アルコーブは、共用廊下の一部であるためマンションの共用部分と考えられるのが一般的です。
一方、玄関ポーチも同じ共用部分ではありますが、専用使用権が認められている共用部とされることが多いため、この点が二つの間の大きな違いになります。
共用部の専用使用部分とは?
マンションは、共用部分と専有部分に二種類の部分に分かれており、基本的にはマンションの住戸部分が専有部分で、それ以外が共用部分となります。マンションの住戸部分は、購入された方の所有物となりますから、住戸内を自由に使うことができ、改装やリフォームも可能です。
それに対し、共用部分はマンションに暮らす方全員で所有する財産であり、みんなで使用するスぺースであるため、必ずルールを守ったうえで使用する必要があります。住戸やエントランスや廊下といったように、わかりやすく区分できる場所の他に、線引きが難しく注意が必要なのが、専有部分に隣接した共用部分です。
例えば、窓サッシ・ガラス、バルコニー、玄関ドア、インターホン、パイプスペースといった住戸に隣接している設備は専有部分と間違われやすいのですが、これらすべて共用部分にあたります。実際には、各住戸の住民のみが使用する部分であるため、専用使用権が認められた箇所ということになります。
これらと同様に、玄関ポーチも同様に共用部の専用使用部分となります。
この「共用部の専用使用部分」は、各住戸で専横利用する権利を持つものですが、あくまでも共用部分であることを認識し、管理規約で定められたルールに則って使用する必要があることを知っておきましょう。
アルコーブ、玄関ポーチの使用時の注意点
アルコーブと玄関ポーチを使用する際の注意点について見ていきましょう。まず、アルコーブは共用廊下の一部になるため、基本的には共用部分の扱いになります。そのため、私物を設置したり、汚したりといったことのないようにしましょう。玄関ポーチは、共用部の専有使用部分として扱われることが一般的です。私物の設置や使用方法については、マンションで決められたルールの範囲内で使用することができますが、あくまでも共用部分になることを忘れずに、緊急の際にはすぐに撤去できることを前提にして使用しましょう。
専有使用権が設定されていないマンションの場合は、玄関ポーチの内であっても共用廊下としての扱いとなるため、勝手にものを置いたりできないため注意しましょう。
そしてもう一点、清掃にも注意が必要です。共用部分であるアルコーブは、基本的にマンションの管理員が清掃を行いますが、専用使用部分となる玄関ポーチも管理員が行う範囲となっていることが多いです。
しかし、日常的に使用していると、汚れや埃などが気になり、自分で清掃したい場合もあると思います。その際に気をつけたいのが、水を使用した清掃です。階下への漏水や設備の劣化等につながる恐れがあるため注意が必要です。
また、特殊な薬剤等での床清掃も避けた方が良いでしょう。玄関ドアや門扉は、乾いたタオル等で汚れを拭くなどし、あくまでも共用部分であることを認識して大事に使うよう心がけましょう。
マンションの管理規約の確認が重要
玄関ポーチやアルコーブ、その他住戸に付属した設備について、共用部分・専有部分の判断や使用方法等は、マンションごとに異なります。その他にも、マンションに暮らす上でのルールや注意事項について、必ず入居前にマンションの管理規約を確認し、決められた条件の範囲内で使用しましょう。
ベランダでの喫煙と訴訟問題
ベランダやバルコニーの使用に関するトラブルとして、喫煙問題があります。実際に、マンションのベランダでの喫煙が訴訟問題になった事例もあります。
名古屋市内のマンションで、70歳代の女性が下階に住む60歳代の男性を訴えた事例では、ベランダでの喫煙による煙が上階に上がり、持病の喘息を悪化させたとして提訴しました。
この裁判では、女性の主張が最終的に認められ、男性に対して5万円の精神的な損害に対する慰謝料の支払いが命じられました。
このように、ベランダやバルコニーは専用使用権があるとはいえ、他の住民に迷惑をかける使い方は「共同の利益」に反するとみなされる可能性があります。マンションでの生活では、お互いにある程度の配慮が必要です。
まとめ
マンションの専有面積について、その定義から計算方法、含まれない場所まで詳しく解説しました。専有面積を正確に理解することで、物件選びの際の判断材料となるでしょう。
また、ベランダやバルコニー、アルコーブや玄関ポーチなどの共用部分についても理解を深めることで、マンション生活でのトラブルを避けることができます。
マンションでの快適な生活のためには、管理規約をしっかりと確認し、共同生活のルールを守ることが大切です。
コメント
記事にあるとおり、平均的な数字として、ファミリータイプが約6%、ワンルームタイプが約11%、壁芯面積>内法面積となります。これはファミリータイプが約70㎡、ワンルームタイプが約30㎡を目安と思って下さい。
これを基準に住戸の面積が小さくなる程、乖離が大きくなります。また、広さを感じる要素は、表面的な面積だけでなく、天井高や柱・梁の位置、開口部の大きさ等も影響するので、実際の内覧で体感することをお勧めします。
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