新築マンションの「完売」は操作されている。【マーケティング戦略】

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「即日完売」は本当?【操作されている現実と嘘】

新築マンションの広告で「第一期完売御礼」「即日完売」といった文言を目にすることがよくあります。これらの言葉は、その物件が非常に人気で価値があるように感じさせますが、実際にはマーケティング戦略の一環として「操作」されていることが少なくありません。特に販売に苦戦している物件は操作せざるを得ないのが現実です。

今回は、マンション業界の内部事情に詳しい筆者が、新築マンションの「完売」の真実と、購入者が知っておくべき情報をお伝えします。

 

「完売」の真実【デベロッパーの販売戦略】

新築マンションの完売は、必ずしも一般購入者によって全ての部屋が買われたことを意味するわけではありません。デベロッパー(開発業者)は早期に完売を実現したいため、売れ残った物件を第三者の販売業者に安値で卸すことがあります。

この販売業者は買い取った物件を自分たちで売りますから、実質的には「完売」ではないのですが、売主(デベロッパー)にとっては「完売」であることに間違いありません。つまり、「完売」という言葉は操作されており、必ずしも市場での人気を正確に反映したものではないのです。

デベロッパーが販売開始
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一部が売れ残る
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販売業者に卸す
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完売と発表
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人気がある物件というイメージ

この手法は業界では一般的なもので、特に市況が悪い時期には頻繁に行われます。デベロッパーにとっては、長期間売れ残っているという印象を与えるよりも、「人気があって完売した」というイメージを作り出すことが、次のプロジェクトの販売にもプラスに働くからです。

「完売」の種類 実態 デベロッパーのメリット
実質完売 全ての部屋が一般購入者に売れた 最大の利益、ブランド価値向上
業者買取完売 売れ残りを販売業者が買い取った 早期資金回収、「完売」イメージの獲得
グループ内完売 自社グループの別会社が買い取った バランスシート上の「完売」、市場評価の維持
見せかけ完売 実際は売れ残っているが「完売」と発表 次のプロジェクトへの影響回避、ブランドイメージ保護

 

第一期・第二期 期分け販売の仕組み

「第一期」「第二期」という販売方法は、例えば200戸あるマンションを売るときに、最初に100戸を売り出して様子を見てから、残りの100戸を売るといった手法です。この販売時期を分ける主な理由は、価格の見直しと需給調整にあります。

例えば、第一期が即日完売した場合、デベロッパーは「値段が安すぎた」と判断します。そこで第二期はもう少し価格を上げても売れるだろうと予想し、価格を引き上げます。原価は同じですから、高く売れるほうがデベロッパーにとっては利益が大きくなります。

逆に、第一期の販売が苦戦した場合は、第二期では価格を下げる判断をすることになります。全戸を一気に販売すると、価格設定を間違えていた場合に修正が難しくなります。後から価格を下げると、先に定価で購入した顧客からクレームが来る可能性があるからです。

また、需給調整という側面もあります。これは、バランスよく売れるように小出しに販売することです。例えば、人気のある間取り・価格帯の物件だけが先に売れて、人気のない部屋が残ってしまうのはデベロッパーにとってリスクになります。そのため、人気の高い部屋と低い部屋をバランスよく各期に配分するという調整が行われます。

特に、用地買収から竣工までに数年かかる大規模プロジェクトの場合、計画時と販売時の経済情勢が大きく変わっていることもあります。そのため、価格決定はギリギリまで様子を見たいというデベロッパー側の意図もあります。チラシに「価格未定」と書かれているのはこのためです。

 

嘘の「完売」を見破る方法

新築マンションが本当に人気があって完売したのか、それとも操作されているだけなのかを見破るには、いくつかの方法があります。

まず、物件の地元の不動産業者に飛び込んでみることです。売れ残り物件があれば、通常は地元住民に営業攻勢がかけられますから、地元業者であれば本当に人気があったのか、操作されているだけなのかがわかります。

もう一つは、夜に物件を見に行ってみることです。竣工済みなのに、夜に明かりがついていない部屋が目立っていれば、まだ住んでいない(売れていない)部屋がある可能性を示唆しています。

嘘の完売を見破るためのチェックポイント

  1. 地元の不動産業者に問い合わせる
  2. 夜間に物件を訪れ、明かりの状況を確認する
  3. 管理組合の設立状況を調べる(本当に完売していれば早期に設立される)
  4. 同じデベロッパーの過去の物件の販売実績を調査する
  5. インターネットの不動産サイトで中古として出ている部屋がないか確認する

 

抽選会の現実

新築物件の販売現場で、一つの部屋に複数の購入希望者がいる場合は抽選会が開催されます。しかし、この抽選会が必ずしも公正に行われているとは限らず、演出されている場合があります。

なぜなら、営業マンにとって、買ってほしい客と買ってほしくない客がいるからです。「ローンを利用する客と現金で購入する客がいた場合、現金購入の客に当たってほしい」「後でクレームになるのは避けたいから、細かいことを気にする客よりも、大らかな客に当たってほしい」と、業者は考えています。

どの商売でも同じですが、本来、売主は買い手を選ぶ権利があります。売主に「あなたには売りたくない」と言われれば買えないのです。しかし、実際にはそんなことは言えないので、操作が発生し、売主が売りたい客に当たるようになります。

具体的な操作方法としては、サクラの申込者を入れて、特定の顧客の当選確率を下げるという方法が取られます。例えば、ある間取りの部屋に、本当に買ってほしいAさんと、買ってほしくないBさんが申し込んだとします。

このままでは、本命のAさんの当選確率は2分の1です。そこで、販売センターでは3人のサクラ申し込み者を入れます。この3人はすべてAさんのためのようなものですから、Aさんの当選確率は5分の4に跳ね上がります。これは、マンションが売れに売れていた好況期にはとてもポピュラーな手法でした。

抽選会で気をつけるべきポイント

  • 抽選会の参加者数と実際の申込者数が一致しているか確認する
  • 抽選会の様子を注意深く観察し、不自然な点がないか確認する
  • 抽選結果の発表方法が透明で公正かどうかチェックする
  • 複数の物件を検討し、一つの抽選会の結果に一喜一憂しない

 

価格設定の裏側

新築マンションの価格設定には、様々な要素が考慮されています。土地代、建築費、販売経費などの原価に加え、市場の需給状況、競合物件の価格、ターゲット層の購買力などが総合的に判断されます。

しかし、価格設定には心理的な要素も大きく影響しています。例えば、4,980万円という価格は5,000万円より心理的に安く感じさせる効果があります。また、特定の数字(4や9など)を避ける傾向もあります。

さらに、同じマンション内でも階数や向き、眺望によって価格差をつけることで、「お買い得感」を演出することもあります。例えば、最上階の角部屋を非常に高い価格設定にすることで、その他の部屋が相対的に安く感じられるようにする手法です。

価格設定要素 影響度 操作可能性
土地代 非常に高い 低い(実際のコスト)
建築費 高い 中程度(仕様変更可能)
販売経費 中程度 高い(調整可能)
市場需給 高い 低い(市場要因)
競合物件価格 高い 低い(外部要因)
心理的価格設定 中程度 非常に高い(自由に設定可能)

 

購入者が知っておくべきこと

新築マンションを購入する際には、「完売」や「人気物件」といったマーケティング文言に惑わされず、冷静に判断することが重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。

まず、立地条件や建物の品質、管理体制など、本質的な価値を見極めることが大切です。「完売間近」という言葉に焦らされて判断を急ぐと、後悔する可能性があります。

次に、複数の物件を比較検討することをお勧めします。一つの物件だけを見ていると、その物件が本当に良いのかどうか判断が難しくなります。同じエリアの複数の物件を見ることで、相場観が身につきます。

また、モデルルームだけでなく、実際の建設現場や周辺環境も確認しましょう。モデルルームは最も良く見えるように作られていますが、実際の住環境は異なる場合があります。

さらに、デベロッパーや施工会社の実績や評判も調べておくことが重要です。過去のトラブル事例や、アフターサービスの充実度なども購入判断の材料になります。

 

まとめ:賢い購入者になるために

新築マンションの「完売」や「抽選会」は、必ずしも市場の実態を反映したものではなく、デベロッパーのマーケティング戦略の一環として操作されていることがあります。これは決して違法ではなく、ビジネスとして一般的に行われている手法です。

しかし、購入者としては、こうした業界の裏側を知った上で、冷静に判断することが重要です。「完売間近」「人気物件」といった言葉に惑わされず、物件の本質的な価値を見極め、自分のライフスタイルや将来計画に合った選択をしましょう。

不動産は人生で最も高額な買い物の一つです。焦って判断せず、十分な情報収集と比較検討を行い、後悔のない選択をすることが大切です。業界の裏側を知ることは、賢い購入者になるための第一歩と言えるでしょう。

購入前のチェックリスト

  1. 立地条件(交通アクセス、周辺環境、将来の開発計画など)
  2. 建物の品質(施工会社の実績、使用材料、構造など)
  3. 間取りと使い勝手(生活動線、収納スペース、日当たりなど)
  4. 価格の妥当性(同エリアの相場、将来の資産価値など)
  5. 管理体制(管理会社の実績、管理費・修繕積立金の設定など)
  6. アフターサービス(保証内容、メンテナンス体制など)
  7. デベロッパーの信頼性(過去の実績、企業の安定性など)

これらのポイントを総合的に判断し、「完売」や「人気物件」といったマーケティング文言に惑わされない、賢い購入判断をしましょう。

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この記事を書いた人
﨑ちゃん

新築マンションに携わって30年!!企画から販売、物件マネージャーまで。最近では仲介もやってます。宅建・FP2級・管理士持ってます。趣味が嵩じて大型バイク・潜水士も持ってます。好きなデべは地所さん、野村さん、明和さん、住不さん。

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