シップナースになりたい!! 飛鳥らでもなれるのか?
近年、看護師の働き方が多様化する中で、特に注目を集めているのが「シップナース」という職業です。豪華客船や貨物船で働く看護師として、海を舞台にした特別な医療サービスを提供するこの仕事は、多くの看護師にとって憧れの職業となっています。しかし、実際にはどのような仕事内容なのか、どうすればなれるのか、転職は現実的なのかなど、詳しい情報はあまり知られていません。本記事では、シップナースの実態について徹底的に解説し、転職を検討している看護師の皆様に有益な情報をお届けします。
シップナースとは何か?基本的な職業概

Q: シップナースって具体的にどんなお仕事なの?

A: クルーズ船や貨物船に乗船し、乗客・乗員の健康管理や医療処置を行う海上の看護師です。
シップナースとは、クルーズ船や貨物船などの船舶に搭乗し、乗客や乗員の健康管理を専門的に行う看護師のことです。船内の医務室や診療室を拠点として、様々な医療ニーズに対応する重要な役割を担っています。
この職業の最大の特徴は、陸上の医療機関とは全く異なる環境で働くことです。船上という限られた空間で、時には数ヶ月間にわたって乗客や乗員の健康を守り続けなければなりません。そのため、幅広い医療知識と高い判断力、そして適応能力が求められる専門職といえるでしょう。
シップナースが活躍する船舶は多岐にわたります。豪華客船では主に観光客の健康管理が中心となり、貨物船では長期間の航海に従事する船員の健康維持が主な業務となります。また、近年では日本発着のクルーズ船も増加しており、日本人看護師の需要も高まっています。
シップナースが働く主な船舶の種類
【豪華客船・クルーズ船】:観光客向けの短期〜中期クルーズ
【貨物船】:長期間の国際航海に従事する商船
【調査船】・観測船:海洋調査や研究活動を行う特殊船舶
【フェリー】:定期運航する旅客船
船上での医療環境は陸上とは大きく異なります。限られた医療機器と薬剤の中で、あらゆる症状に対応しなければならないため、シップナースには総合的な看護スキルが必要です。また、緊急時には最寄りの港への搬送手配や、衛星通信を使った陸上の医療機関との連携も重要な業務の一部となります。
項目 | 陸上の看護師 | シップナース |
---|---|---|
勤務環境 | 病院・クリニック | 船内医務室 |
患者層 | 地域住民 | 乗客・乗員(多国籍) |
勤務期間 | 日勤・夜勤のシフト制 | 数ヶ月間の連続勤務 |
医療設備 | 充実した設備 | 限られた設備 |
緊急時対応 | 他科との連携可能 | 限られたスタッフで対応 |
シップナースの仕事内容

Q: 毎日どんなスケジュールで働いているの?

A: 朝のミーティングから始まり、診療補助、健康管理、薬剤管理など多岐にわたる業務を行います。
シップナースの仕事内容は、一般的な病院勤務の看護師とは大きく異なります。船内という特殊な環境で、医師と連携しながら乗客や乗員の健康を総合的に管理することが主な役割となります。
まず、乗客・乗員の健康管理が最も重要な業務です。定期的なバイタルチェックや慢性疾患を持つ方のフォローアップ、健康相談への対応などを行います。特にクルーズ船では高齢者の乗客が多いため、血圧測定や糖尿病管理などの専門的なケアが頻繁に必要となります。
船内の薬剤管理も重要な責任の一つです。薬剤師が常駐していない船舶では、シップナースが薬剤の在庫管理、発注、使用期限のチェック、適切な保管などを一手に担います。緊急時に必要な薬剤が不足することがないよう、細心の注意を払った管理が求められます。
1日の勤務スケジュール
シップナースの典型的な1日
時間 | 業務内容 | 所要時間 |
---|---|---|
8:30 | ミーティング | 30分間 |
9:00 | 午前診療補助 | 180分間 |
12:00 | 昼食・休憩 | 60分間 |
13:00 | 午後診療補助 | 300分間 |
18:00 | 自由時間 | 240分間 |
8:30 ミーティング 医療チーム全体での情報共有、当日の予定確認
9:00 午前診療補助 医師の診療サポート、初期対応、処置業務
12:00 昼食・休憩 緊急時対応可能な状態での休憩時間
13:00 午後診療補助 午後の診療業務、薬剤・物品管理
18:00 自由時間 オンコール体制での休息、船内施設利用可能
急病や怪我の初期対応は、シップナースの専門性が最も発揮される場面です。船内での転倒による骨折、心疾患の急性発症、アレルギー反応など、様々な緊急事態に迅速かつ適切に対応しなければなりません。陸上の医療機関のように専門医がすぐに駆けつけることはできないため、シップナース自身の判断力と技術力が患者の生命を左右することもあります。
船酔い患者への対応も、シップナース特有の重要な業務です。悪天候時には多数の乗客が船酔いを訴えることがあり、適切な薬物療法と生活指導を通じて症状の緩和を図ります。また、食物アレルギーを持つ乗客の安全確保のため、厨房スタッフとの連携によるアレルギー物質の管理も欠かせません。
参考リンク
シップナースの年収・給与と待遇条件

Q: シップナースのお給料はどのくらいなの?

A: 平均年収600-800万円程度で、生活費がかからないため貯蓄しやすい環境です。
シップナースの給与水準は、一般的な病院勤務の看護師と比較して高い傾向にあります。これは、長期間の船上勤務という特殊な労働条件と、高い専門性が求められることが理由として挙げられます。
看護師の年収比較
シップナースの平均年収は600万円から800万円程度とされており、月給換算では約50万円程度となります。ただし、この金額は船会社や契約形態、経験年数によって大きく変動します。正社員として雇用される場合と、委託契約による場合では待遇に差があることも理解しておく必要があります。
特筆すべきは、船上勤務中の生活費がほとんどかからないことです。宿泊費、食費、光熱費などの基本的な生活費は会社が負担するため、給与のほとんどを貯蓄に回すことが可能です。これは、短期間で資金を蓄えたい看護師にとって大きなメリットといえるでしょう。
雇用形態 | 月給目安 | 年収目安 | 特徴 |
---|---|---|---|
船会社正社員 | 50-60万円 | 700-800万円 | 安定した雇用、充実した福利厚生 |
委託契約 | 40-50万円 | 600-700万円 | 柔軟な働き方、契約期間選択可能 |
短期クルーズ | 日給2-3万円 | 年収は勤務日数による | 副業として活用可能 |
福利厚生面では、船内での個室提供、食事の無料提供、制服の支給または手当、医療保険の加入などが一般的です。また、長期休暇制度も大きな特徴で、2~3ヶ月の勤務後に20~30日間の長期休暇を取得できることが多く、この期間を利用して旅行や自己研鑽に時間を充てることができます。
ただし、契約社員として働く場合は、乗船していない期間の収入が不安定になる可能性があります。また、日本の社会保険制度から外れる場合もあるため、長期的なキャリアプランを慎重に検討する必要があります。
シップナースになるための条件と転職

Q: どんな資格や経験があれば応募できるの?

A: 看護師免許と3年以上の臨床経験、英語力、救急対応スキルが基本的な条件です。
シップナースになるための基本的な条件は、まず看護師免許の取得です。しかし、実際の採用では単に資格を持っているだけでは不十分で、豊富な臨床経験と専門的なスキルが求められます。
最も重要な条件の一つが、幅広い診療科での実務経験です。船内では少数の医療スタッフで様々な症例に対応しなければならないため、内科、外科、救急科、循環器科など、複数の診療科での経験が高く評価されます。特に救急医療の経験は必須とされることが多く、BLS(一次救命処置)やACLS(二次救命処置)の資格取得が求められる場合もあります。
シップナース応募の基本条件
- 看護師免許(正看護師)
- 3年以上の看護師実務経験
- 救急医療経験(ER、ICU、循環器科など)
- 英語での医療業務遂行能力
- BLS・ACLS資格(推奨)
- 長期間の船上勤務が可能
英語力も欠かせない条件です。国際的なクルーズ船では多国籍の乗客や乗員が乗船するため、英語での医療コミュニケーションが日常的に必要となります。医療英語を含む高いレベルの英語力が求められ、TOEIC800点以上やIELTS6.5以上が目安とされることが多いです。
転職方法としては、主に看護師専門の転職サイトへの登録と、クルーズ船会社への直接応募があります。シップナースの求人は非常に限られており、人気が高いため競争率も高くなっています。そのため、複数の転職サイトに登録し、求人情報をこまめにチェックすることが重要です。
【商船三井客船】
運航船舶: にっぽん丸
乗客定員: 449名
特徴: 日本最高級の客船サービス
【郵船クルーズ】
運航船舶: 飛鳥Ⅱ
乗客定員: 490名
特徴: 世界一周クルーズも運航
【せとうちクルーズ】
運航船舶: ガンツウ
乗客定員: 38名
特徴: 瀬戸内海の高級クルーズ
応募プロセスは通常、書類選考、英語力テスト、面接(ビデオ面接を含む)、健康診断、最終選考という流れになります。面接では英語でのコミュニケーション能力や、緊急時の対応能力、チームワーク、異文化適応能力などが重点的に評価されます。
準備期間として、英語力の向上、救急医療スキルの習得、国際的な医療環境での経験積み重ねなどに1-2年程度の時間をかけることが推奨されます。また、海外旅行や国際交流の経験も、面接でのアピールポイントとなります。
シップナースのメリット・デメリット

Q: シップナースの魅力と大変さを教えて?

A: 世界を旅しながら働ける魅力がある一方、長期間家族と離れる辛さもあります。
シップナースという職業には、他の看護師職では得られない独特の魅力と、同時に特有の困難さが存在します。転職を検討する際には、これらの両面を十分に理解しておくことが重要です。
メリット
- 世界各地を旅行しながら働ける
- 高い給与水準と生活費の節約
- 長期休暇の取得が可能
- 国際的な医療経験の蓄積
- 多様な症例への対応スキル向上
- 異文化コミュニケーション能力の向上
- 残業や夜勤が少ない
デメリット
- 長期間の家族・友人との別離
- 限られた医療リソースでの責任の重さ
- 行動範囲の制限によるストレス
- 求人数の少なさと高い競争率
- 船酔いや体調管理の困難
- 緊急時の孤立感
- キャリアパスの不透明さ
最大の魅力は、やはり世界各地を旅行しながら働けることでしょう。美しい海を眺めながらの勤務や、寄港地での観光など、一般的な看護師では体験できない貴重な経験を積むことができます。また、多国籍の患者や同僚との交流を通じて、国際的な視野を広げることも可能です。
経済的なメリットも大きく、高い給与水準に加えて生活費がほとんどかからないため、短期間で多額の貯蓄を形成することができます。長期休暇制度により、まとまった時間を自己投資や家族との時間に充てることも可能です。
一方で、長期間の家族や友人との別離は、多くのシップナースが直面する最大の困難です。特に家庭を持つ看護師にとって、数ヶ月間家を空けることは大きな負担となります。また、船内という閉鎖的な環境での生活は、人によっては強いストレスを感じる原因となることもあります。
医療面では、限られた設備と人員で幅広い症例に対応しなければならないプレッシャーがあります。陸上の医療機関のように専門医や高度な医療機器にすぐにアクセスできないため、シップナース個人の判断力と技術力に大きく依存することになります。
シップナース業界の将来性
要因 | 現状 | 将来予測 | 影響 |
---|---|---|---|
クルーズ市場 | 回復基調 | 拡大予想 | 求人増加の可能性 |
高齢化社会 | 進行中 | さらに進行 | 医療ニーズ増大 |
医療技術 | 遠隔医療発展 | さらなる進歩 | 業務効率化 |
国際化 | 多国籍化進行 | さらに多様化 | 語学力重要性増大 |
将来性については、クルーズ業界の成長とともに需要の拡大が期待されます。特に日本では、2028年にディズニークルーズの就航が予定されており、大規模な採用が見込まれています。また、高齢化社会の進行により、クルーズ船利用者の医療ニーズも高まることが予想されます。
技術面では、遠隔医療技術の発達により、船上と陸上の医療機関との連携がより密になることが期待されます。これにより、シップナースの業務負担軽減と医療の質向上が図られる可能性があります。
キャリアパスとしては、シップナースの経験を活かして国際医療機関での勤務、医療ツーリズム関連の仕事、救急医療の専門家、感染症対策の専門家などへの転身が考えられます。また、蓄積した国際経験と語学力を活かして、看護教育や医療コンサルティングの分野で活躍する道もあります。
関連情報リンク
まとめ
シップナースは、看護師としての専門性を活かしながら世界を舞台に活躍できる魅力的な職業です。高い給与水準、国際的な経験、長期休暇制度など、多くのメリットがある一方で、長期間の家族との別離、限られた医療環境での高い責任、求人の少なさなどの課題も存在します。
転職を成功させるためには、幅広い臨床経験の蓄積、英語力の向上、救急医療スキルの習得が不可欠です。また、国際的な環境への適応力や、長期間の船上生活に耐えうる精神力も重要な要素となります。
クルーズ業界の成長とともに、シップナースの需要は今後も拡大することが予想されます。特に日本では新しいクルーズ船の就航が予定されており、転職のチャンスが増える可能性があります。シップナースという特別なキャリアに興味を持つ看護師の皆様にとって、本記事が有益な情報源となり、転職成功への一助となることを願っています。
最後に、シップナースへの転職は人生の大きな決断です。メリットとデメリットを十分に検討し、家族や周囲の理解を得た上で、慎重に判断することをお勧めします。夢の実現に向けて、計画的な準備と継続的な努力を重ねていくことが成功への鍵となるでしょう。
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