マンションの管理組合の理事長・役員 どうやって決めるの?
マンション購入後に必ず直面する「役員選出」の疑問を、データと実例で分かりやすく解説します
理事長・役員の選出方法|4つのパターン

Q: 理事長ってどうやって決まるの?

A: 立候補制、輪番制、推薦制、くじ引きの4つの方法で決まります。
分譲マンションの管理組合における理事長・役員の選出は、マンションの適切な管理運営を左右する重要な要素です。
国土交通省の調査によると、全国のマンションでは主に4つの選出方法が採用されており、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。最も多く採用されているのは輪番制で75.2%を占めており、これは「みんなで平等に負担を分担しよう」という考え方に基づいています。立候補制は18.9%にとどまっており、多くの住民が役員になることを避けたがっている現実が浮き彫りになっています。推薦制やくじ引きは、立候補者が不足した場合の補完的な手段として用いられることが多く、特にくじ引きは「最後の手段」として位置づけられています。これらの選出方法を理解することで、自分のマンションに最適な方法を選択し、円滑な管理組合運営を実現することができます。また、選出方法は管理規約で明文化しておくことが重要で、後々のトラブルを防ぐためにも事前にルールを決めておく必要があります。
立候補制
・やる気のある人が就任
・円滑な組合運営
・専門知識を活用
・立候補者が少ない
・特定の人に負担集中
・長期独占の危険性
輪番制
・公平性が高い
・癒着を防止
・全員が経験できる
・やる気のない人も就任
・継続性に欠ける
・辞退者が多い
参考リンク
役員選出の課題|「誰もやりたがらない」

Q: 理事長が決まらない時はどうするの?

A: 報酬制の導入や業務負担の軽減策を検討することが効果的です。
マンション管理組合で最も深刻な問題が「誰もやりたがらない」という現実です。調査データによると、役員選任で最も多い問題は「誰もやりたがらない」が28.1%を占めており、これは全国的な傾向となっています。
この背景には、役員の業務内容が不明確であることや、責任の重さに対する不安、時間的な負担への懸念などがあります。また、総会への参加率も低下傾向にあり、「ほとんど出席していない」住民が56.9%に達しています。この状況を改善するためには、まず役員の業務内容を明確化し、負担を軽減する工夫が必要です。報酬制の導入も有効な解決策の一つで、マンション標準管理規約では役員への報酬支払いが認められています。実際に報酬を支払っているマンションでは、理事長が月額約9,500円、理事が約3,900円、監事が約3,200円となっています。少額でも報酬があることで、役員への就任意欲が向上する効果が期待できます。さらに、第三者管理方式の導入も検討すべき選択肢で、専門家が理事長を務めることで住民の負担を軽減できます。
役員選任で発生する問題トップ5
順位 | 問題内容 | 発生率 | 深刻度 |
---|---|---|---|
1位 | 誰もやりたがらない | 28.1% | 🔴 高 |
2位 | なかなか物事が決まらない | 11.5% | 🟡 中 |
3位 | 引継ぎが非常に大変 | 10.6% | 🟡 中 |
4位 | 管理会社任せになっている | 9.4% | 🟡 中 |
5位 | 役員が役割を果たさない | 8.0% | 🔴 高 |
注意:総会への参加率も低下傾向
調査によると、マンション住民の総会参加状況は以下の通りです。
- 「ほとんど出席していない」:56.9%
- 「2、3割程度の世帯が出席」:27.6%
- 「ほぼ全世帯が出席」:わずか4.3%
この状況では、一部の熱心な住民だけで管理組合が運営されている実態が浮き彫りになります。
役員報酬の支払い状況
解決策:報酬制の導入を検討しよう
マンション標準管理規約では、役員への報酬支払いが認められています。実際に報酬を支払っているマンションの平均額は、
- 理事長:約9,500円/月
- 理事:約3,900円/月
- 監事:約3,200円/月
少額でも報酬があることで、役員への就任意欲が向上する効果が期待できます。
【従来の管理方式】
住民が輪番制で役員を担当し、管理会社に業務を委託する方式
・住民主体の運営
・コストが比較的安い
・住民の意見が反映されやすい
・役員のなり手不足
・専門知識の不足
・継続性の問題
【第三者管理方式】
マンション管理士等の専門家が理事長を務める新しい管理方式
・専門知識の活用
・継続的な運営
・住民の負担軽減
・費用が高額
・利益相反の懸念
・住民の関心低下
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理事長・役員の役割|「何をするの?」

Q: 理事長になったら具体的に何をするの?

A: 月1回の理事会参加、管理会社との調整、住民対応が主な業務です。
理事長や役員の具体的な役割を明確にすることは、選出をスムーズに進めるために極めて重要です。多くの住民が役員になることを躊躇する最大の理由は、「何をするのか分からない」という不安にあります。
理事長は管理組合の代表として、月1回程度開催される理事会の招集と運営、管理会社との連絡調整、住民からの苦情や要望への対応、年1回の総会の準備と運営などが主な業務となります。月間の負担時間は15-20時間程度が目安ですが、マンションの規模や問題の有無によって大きく変わります。副理事長は理事長の補佐役として8-12時間程度、会計担当理事は管理費の収支管理や予算・決算の作成で10-15時間程度の負担となります。一般の理事は理事会への参加が中心で5-8時間程度、監事は組合の業務監査で3-5時間程度の負担です。重要なのは、これらの業務をすべて一人で行う必要はないということです。管理会社のサポートを受けながら、他の役員と協力して進めることで負担を軽減できます。また、ITツールの活用やオンライン会議の導入により、従来よりも効率的に業務を進めることが可能になっています。
役員の種類と具体的な業務内容
役職 | 主な業務内容 | 月間負担時間 | 難易度 |
---|---|---|---|
理事長 | 管理組合の代表、理事会・総会の招集、重要事項の決定 | 15-20時間 | 🔴 高 |
副理事長 | 理事長の補佐、理事長不在時の代行 | 8-12時間 | 🟡 中 |
会計担当理事 | 管理費の収支管理、予算・決算の作成 | 10-15時間 | 🟡 中 |
理事 | 理事会への参加、各種委員会活動 | 5-8時間 | 🟢 低 |
監事 | 組合の業務・財産状況の監査、総会での報告 | 3-5時間 | 🟢 低 |
負担軽減のための工夫
役員の負担を軽減するために、以下のような工夫が効果的です。
- オンライン会議の導入(移動時間の削減)
- クラウド型文書管理システムの活用
- LINEやSlackでの情報共有
- 管理会社への業務委託範囲の拡大
- 専門委員会の設置(業務の分散化)
役員数の目安(マンション規模別)
マンション規模 | 総戸数 | 推奨役員数 | 理事長 | 副理事長 | 理事 | 監事 |
---|---|---|---|---|---|---|
小規模 | 30戸以下 | 3-5名 | 1名 | 1名 | 1-2名 | 1名 |
中規模 | 31-100戸 | 5-8名 | 1名 | 1-2名 | 3-4名 | 1名 |
大規模 | 101戸以上 | 8-15名 | 1名 | 2名 | 5-11名 | 1-2名 |
※マンション標準管理規約に基づく推奨値
効果的な交代システム|「半数改選制」

Q: スムーズな役員交代のコツは?

A: 半数改選制と丁寧な引継ぎ体制で業務の継続性を保つことです。
役員選出をスムーズに進めるためには、選出方法だけでなく、引継ぎシステムの構築も極めて重要です。多くのマンションで採用されている全数改選制では、理事長も含めた理事全員が毎年入れ替わってしまうため、せっかく蓄積したノウハウや進行中の案件が途切れてしまう問題があります。この問題を解決する効果的な方法が「半数改選制」です。
これは2年任期で役員の半数を交代していくシステムで、常に経験者が半数残ることで業務の継続性を保つことができます。半数改選制のメリットは、新任者が経験者からサポートを受けられることで心理的負担が軽減されること、引継ぎが部分的で済むため負担が少ないこと、継続案件がスムーズに進行することなどが挙げられます。効果的な引継ぎを行うためには、新旧役員による合同理事会の開催、引継ぎ資料の標準化、フリートークによる懸案事項の共有、前任者による継続的なサポート体制の確保などが重要です。また、役員候補者には総会前から理事会に参加してもらい、翌年度の事業計画作成に関わってもらうことで、当事者意識を高める工夫も効果的です。
❌ 全数改選制の問題点
- 毎年全員が新人になる
- 引継ぎが大変
- 継続案件が停滞
- 同じ議論の繰り返し
- 新任者の心理的負担大
✅ 半数改選制のメリット
- 経験者が半数残る
- 引継ぎがスムーズ
- 継続性が保たれる
- 新任者をサポート
- 心理的負担が軽減
半数改選制の仕組み
※常に経験者が半数残ることで、スムーズな運営が可能になります。
効果的な引継ぎのポイント
- 引継ぎ資料の標準化(チェックリスト作成)
- 口頭での補足説明(資料に書けない「生の情報」)
- 引継ぎ後の相談体制の確保
- 過去の議事録や資料の整理・保管
- 管理会社担当者との顔合わせ
問題のある理事長への対処法

Q: 問題のある理事長を辞めさせられる?

A: 理事会決議または総会決議により解任することが法的に可能です。
残念ながら、すべての理事長が適任とは限りません。職務怠慢、組合の私物化、管理会社との癒着、独断的な運営など、問題のある理事長に遭遇した場合の対処法を知っておくことは重要です。理事長の解任方法には2つのパターンがあります。
まず、理事長職のみの解任は理事会での過半数決議で可能です。これは理事長の地位のみを解任し、理事としては残る方法です。次に、理事職そのものの解任は、組合員総数および議決権総数の5分の1以上の請求により臨時総会を開催し、総会決議で行います。ただし、解任は最後の手段であり、まずは話し合いによる解決を試みることが重要です。段階的なアプローチとして、個別の話し合いによる改善要求、理事会での問題提起と改善勧告、管理会社や専門家を交えた協議を経て、最終手段として解任手続きを検討すべきです。
予防策としては、管理規約で理事長の任期制限を設ける、重要事項の理事会承認制を導入する、会計の複数人チェック体制を確立する、定期的な業務報告義務を課すなどが効果的です。また、問題が発生した場合の相談先として、マンション管理士、弁護士、管理会社、自治体の相談窓口などを把握しておくことも大切です。
問題のある理事長の典型例
- 理事会に出席しない、連絡が取れない
- 独断で重要事項を決定してしまう
- 管理会社や業者との癒着が疑われる
- 組合の資金を不適切に使用する
- 住民の意見を聞かず、ワンマン運営をする
- 個人情報を不適切に扱う
理事長解任の方法と手順
解任方法 | 対象 | 必要な手続き | 決議要件 | 難易度 |
---|---|---|---|---|
理事長職の解任 | 理事長の地位のみ | 理事会での決議 | 理事の過半数 | 🟡 中 |
理事職の解任 | 理事の地位そのもの | 臨時総会の開催 | 組合員・議決権の1/5で請求 | 🔴 高 |
予防的措置 | 将来の問題防止 | 管理規約の改正 | 総会で3/4以上の賛成 | 🟡 中 |
予防策の例
- 理事長の任期制限(最大2期まで等)
- 重要事項の理事会承認制
- 会計の複数人チェック体制
- 定期的な業務報告義務
- 外部監査の導入
相談先
- マンション管理士
- 弁護士(法的問題の場合)
- 管理会社の担当者
- 自治体の相談窓口
- マンション管理組合連合会
解任は最後の手段
理事長の解任は組合内の対立を深刻化させる可能性があります。まずは以下の段階的なアプローチを試しましょう。
- 個別の話し合いによる改善要求
- 理事会での問題提起と改善勧告
- 管理会社や専門家を交えた協議
- 最終手段として解任手続き
法的な相談が必要な場合
まとめ|理事長・役員選出のポイント
分譲マンションの管理組合における理事長・役員の選出は、マンションの資産価値と住環境を左右する重要な要素です。本記事で解説した内容を踏まえると、成功のポイントは以下の通りです。まず、選出方法の明確化が最も重要で、管理規約で選出ルールを明文化し、住民全員が理解できるようにすることが必要です。
次に、役員の業務内容と負担時間を具体的に明示することで、住民の不安を軽減できます。負担軽減策として、ITツールの活用や管理会社への委託範囲拡大を検討し、半数改選制の導入により継続性を確保することも重要です。報酬制度の導入も効果的で、適正な報酬額を設定して総会で承認を得ることで、役員への就任意欲を高めることができます。問題対処法として、解任手続きの明確化と予防策の実施により、健全な管理組合運営を維持できます。理事長や役員になることは確かに負担を伴いますが、自分の住環境を主体的に改善でき、マンションの資産価値維持・向上に貢献できるというメリットもあります。
少子高齢化の進行により、今後マンション管理組合の運営はますます困難になることが予想されるため、第三者管理方式の導入検討、ITツールを活用した効率化、近隣マンションとの連携・情報共有、専門家の積極的活用などの新しい取り組みも必要になってくるでしょう。
成功する役員選出のチェックリスト
項目 | 重要度 | 具体的な対策 |
---|---|---|
選出方法の明確化 | 🔴 高 | 管理規約で選出ルールを明文化 |
業務内容の説明 | 🔴 高 | 役員の具体的な業務と負担時間を明示 |
負担軽減策 | 🟡 中 | ITツール活用、管理会社委託範囲拡大 |
引継ぎ体制 | 🔴 高 | 半数改選制、標準化された引継ぎ資料 |
報酬制度 | 🟡 中 | 適正な報酬額の設定と総会承認 |
問題対処法 | 🟡 中 | 解任手続きの明確化、予防策の実施 |
マンションは「みんなの財産」
理事長や役員になることは確かに負担を伴いますが、以下のようなメリットもあります:
- 自分の住環境を主体的に改善
- マンションの資産価値維持・向上
- 近隣住民との関係構築
- マンション管理の知識・経験習得
- コミュニティ形成への参加
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