【広島県】人口減少問題が新築マンション市場に与える影響
広島県が3年連続で転出超過全国ワースト1位という衝撃的なニュースが不動産業界に波紋を広げています。 2023年の転出超過数は1万1,409人に達し、全国で唯一1万人の大台を超えました。 この深刻な人口減少問題が、広島県の新築マンション市場にどのような影響を与えているのか、 最新データと現地調査を基に詳しく分析していきます。
広島県の人口減少の実態と深刻度
総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告2023」によると、広島県の転出超過数は1万1,409人となり、 3年連続で全国最多を記録しました。この数字は2位の愛知県(約7,400人)を大きく上回る深刻な状況です。 転入者44,660人に対し転出者56,069人という内訳からも、県外への人口流出が止まらない現実が浮き彫りになっています。
転出超過数 全国上位5県(2023年)
特に注目すべきは、20代の転出が全体の6割を超えていることです。20~24歳の転出が最も多く、 次いで25~29歳と続きます。これは大学進学や就職のタイミングで県外に出た若者が、 そのまま広島に戻ってこない構造的な問題を示しています。 広島県内の大学・短大の収容定員1万2,184人に対し、進学者数は1万27人と、 県内だけでは進学希望者を支えきれない状況も転出に拍車をかけています。
県内大学収容定員と実際の進学者数
区別する | 男性(人) | 女性(人) | 合計(人) |
---|---|---|---|
転入者 | 22,500 | 22,160 | 44,660 |
転出者 | 28,245 | 27,824 | 56,069 |
転出超過 | 5,745 | 5,664 | 11,409 |
男女別の内訳を見ると、転出超過の人数は男性5,745人、女性5,664人とほぼ半々ですが、 転入者の絶対数では女性の方が圧倒的に少ないという特徴があります。 これは女性にとって魅力的な就職先や生活環境が広島県に不足していることを示唆しており、 新築マンション市場における主要購買層の一つである若い女性の流出は、 今後の住宅需要に大きな影響を与える可能性があります。
湯崎英彦知事は「国外の転出入を含んでおらず、ゆがんだ統計」と反論していますが、 国内における人口移動の実態として、この数字が示す危機感は無視できません。 実際に県は2024年4月に「若者減少・人手不足対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、 課長級メンバー33人で構成される本格的な対策に乗り出しています。
参考データ
• 20代の転出割合:全体の6割超
• 県内大学収容定員:1万2,184人
• 実際の進学者数:1万27人
出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告2023」、広島県統計データ
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広島駅周辺再開発と新築マンション供給
人口減少が進む一方で、広島駅周辺では大規模な再開発プロジェクトが進行中です。 最も注目されるのが「ビッグフロント広島」で、地下2階・地上52階建ての巨大複合施設として、 中国・四国・九州地方で最も高い分譲マンションの一つとなっています。 商業・業務・ホテル・公益施設・住宅を一体化した施設は、広島の新しいランドマークとして期待されています。
もう一つの大型プロジェクトが「エキシティ広島」です。 広島駅南口Cブロックの再開発として、商業棟と高層住宅棟の2棟で構成され、 高層住宅棟の「グランクロスタワー広島」は地上46階・地下1階の分譲マンションとなっています。 エディオン本店やスパ&フィットネス施設も併設され、利便性の高い住環境を提供しています。
さらに2025年3月24日には、JR西日本による新駅ビル「ミモア」が開業予定です。 地上20階建ての複合施設で、中国・四国地方最大規模の約200テナントが入居し、 飲食店街、ホテル、映画館なども併設される予定です。 これらの再開発により、広島駅周辺は大きく様変わりしようとしています。
しかし、これらの大型開発による新築マンション供給が、 人口減少という根本的な課題とどう向き合うかが重要な問題となっています。 高層マンションの建設は供給戸数の増加をもたらしますが、 需要側である若年層の流出が続く中で、適正な需給バランスを保てるかが懸念されます。
特に注目すべきは、これらの再開発マンションの価格帯です。 立地の良さと設備の充実により、従来の広島県内マンションと比較して高価格帯での販売が予想されます。 しかし、主要購買層である20~30代の若年層が県外流出している現状では、 購買力のある層の確保が課題となる可能性があります。
プロジェクト名 | 規模 | 特徴 | 開業予定 |
---|---|---|---|
ビッグフロント広島 | 地下2階・地上52階 | 中四国九州最高層マンション 複合施設(商業・住宅・ホテル) |
完了済み |
エキシティ広島 (グランクロスタワー) |
地下1階・地上46階 | エディオン本店併設 スパ&フィットネス施設 |
完了済み |
新駅ビル「ミモア」 | 地上20階 | 約200テナント 飲食・ホテル・映画館 |
2025年3月24日 |
主要再開発プロジェクト
ビッグフロント広島
• 複合施設(商業・住宅・ホテル)
• 中四国九州最高層マンション
エキシティ広島
• エディオン本店併設
• スパ&フィットネス施設
新築マンション市場への具体的影響
広島県の人口減少が新築マンション市場に与える影響は多岐にわたります。 まず最も直接的な影響は、需要の減少です。20代を中心とした若年層の転出超過により、 マンション購入の主要層である30~40代のファミリー世帯の絶対数が将来的に減少することが予想されます。 これは中長期的な住宅需要の縮小を意味し、新築マンション市場の成長性に大きな影を落としています。
価格面への影響も深刻です。需要の減少は価格下落圧力となり、 特に郊外や利便性の劣る立地のマンションから影響が現れる可能性があります。 一方で、広島駅周辺の再開発エリアのような好立地物件は、 限られた需要が集中することで価格を維持する可能性もありますが、 全体的な市場規模の縮小は避けられません。
供給側の戦略にも変化が求められています。従来のファミリー向け大型マンションから、 単身者や高齢者向けのコンパクトマンションへのシフトが必要になる可能性があります。 また、県外からの移住者や投資目的の購入者をターゲットとした商品企画も重要になってきます。 広島駅周辺の再開発マンションが高層・高機能化している背景には、 こうした市場環境の変化への対応という側面もあります。
地域格差の拡大も懸念されます。広島市中心部への人口集中が進む一方で、 周辺市町村からの人口流出が加速しており、これは住宅需要の地域的な偏在を生み出しています。 広島市内でも中区や安佐南区など一部の区では人口増加が続いていますが、 安佐北区などでは減少に転じており、同じ市内でもマンション市場の明暗が分かれています。
投資用マンション市場への影響も無視できません。人口減少により賃貸需要の減少が予想される中、 投資用マンションの収益性低下が懸念されます。特に学生向けワンルームマンションは、 県内大学への進学者減少により直接的な影響を受ける可能性があります。 一方で、県外からの転勤者や短期滞在者向けの需要は一定程度維持される可能性もあり、 立地や設備によって明暗が分かれることが予想されます。
市場への主な影響
【負の影響】
• 郊外物件の価格下落圧力
• 投資用マンションの収益性低下
• 地域格差の拡大
【対応策・機会】
• コンパクトマンションへのシフト
• 県外移住者向け商品企画
• 高機能・高付加価値化
人口減少対策と不動産市場への影響
広島県は人口減少問題に対して本格的な対策に乗り出しています。 2024年4月に設置された「若者減少・人手不足対策プロジェクトチーム」は、 課長級メンバー33人で構成され、49歳までの約1万人を対象としたアンケート調査や 県内企業の採用担当者へのインタビューを実施しています。 これらの調査結果は、今後の住宅政策や都市計画にも反映される可能性があります。
対策名 | 内容 | 期待効果 | 住宅需要への影響 |
---|---|---|---|
HATAful(はたフル) | 企業間連携による 労働環境改善 広島キャリアパスポート |
年層の定着率向上 若年層の 職場環境の魅力化 |
住宅需要の安定化 家族形成促進 |
Uターン就職促進 | 資金返済支援 合同企業説明会 経済的負担軽減 |
県外流出の抑制 Uターン者の増加 |
マンション購入層確保 実需要の維持 |
女性デジタル人材育成 | IT・デジタル分野 リモートワーク対応 新しい働き方提供 |
女性転入促進 多様な働き方実現 |
新たな住宅ニーズ創出 ライフスタイル多様化 |
注目すべき取り組みの一つが「HATAful(はたフル)」です。 ヒロシマホールディングス、中国電力、広島県の4者が共同で進めるこの取り組みは、 「繋がる・変える・広げる」という3つの柱で広島の働く環境を改善しようとしています。 企業間での兼業や出向の機会を増やす「広島キャリアパスポート」の創設や、 理想的な職場環境の共有などを通じて、若者にとって魅力的な就業環境の構築を目指しています。
Uターン就職促進策も強化されています。東京や大阪での合同企業説明会の開催、 奨学金返済支援制度の導入など、経済的負担を軽減しながら広島での就職を促進する施策が展開されています。 これらの取り組みが成功すれば、若年層の県外流出に歯止めがかかり、 新築マンション市場の需要回復にも寄与する可能性があります。
女性デジタル人材の育成にも力を入れています。湯崎知事が発表したこの施策は、 女性の転入促進と県内定着を目指すものです。IT・デジタル分野の職種は リモートワークが可能な場合が多く、地方でも都市部と同等の収入を得られる可能性があります。 これは女性の転入促進だけでなく、新しいライフスタイルを求める層の住宅需要創出にもつながる可能性があります。
これらの対策が効果を発揮すれば、新築マンション市場にも好影響が期待できます。 特に若年層の定着率向上は、将来的なファミリー世帯の形成につながり、 住宅需要の安定化に寄与します。また、働き方改革や職場環境の改善により、 県外からの移住者増加も期待でき、これは新たな住宅需要の創出を意味します。
主要対策と期待効果
企業間連携による働く環境改善 → 若年層の定着率向上 → 住宅需要安定化【Uターン就職促進】
奨学金返済支援・企業説明会 → 県外流出抑制 → マンション購買層確保
【女性デジタル人材育成】
新しい働き方の提供 → 女性転入促進 → 新たな住宅需要創出
今後の展望と不動産投資・購入への提言
広島県の新築マンション市場は、人口減少という構造的課題と再開発による新たな魅力創出という 相反する要素の中で、今後数年間が重要な転換点となります。 短期的には広島駅周辺の再開発効果により、好立地物件への需要集中が続くと予想されますが、 中長期的には人口減少の影響が徐々に顕在化してくる可能性があります。
投資家の視点から見ると、広島県内での不動産投資は慎重な立地選択が重要になります。 広島駅周辺や中区、安佐南区など人口増加が続いているエリアは相対的に安全性が高いと考えられますが、 郊外や周辺市町村では需要減少リスクを十分に検討する必要があります。 特に投資用マンションについては、賃貸需要の将来性を慎重に見極めることが重要です。
実需での購入を検討される方には、長期的な資産価値の維持を重視した選択をお勧めします。 交通利便性、生活利便性、将来の再開発計画などを総合的に評価し、 人口減少下でも需要が維持される可能性の高い物件を選択することが重要です。 また、県の人口減少対策の効果も注視し、政策動向を投資判断に反映させることも必要でしょう。
デベロッパーや不動産業界にとっては、従来の大量供給モデルからの転換が求められます。 量より質を重視し、付加価値の高い商品企画や、多様化するライフスタイルに対応した住宅の提供が重要になります。 また、県外からの移住者や投資家をターゲットとした販売戦略の構築も必要でしょう。
一方で、広島県の対策が効果を発揮し、人口減少に歯止めがかかる可能性も十分にあります。 特に女性デジタル人材の育成やUターン就職促進などの施策が成功すれば、 新たな住宅需要の創出につながる可能性があります。 このような政策効果を早期に取り込める立地や商品企画を検討することも重要な戦略となります。
最終的に、広島県の新築マンション市場は「選択と集中」の時代に入ったと言えるでしょう。 全体的な市場規模の拡大は期待しにくい中で、限られた需要をいかに取り込むかが成功の鍵となります。 立地、商品企画、販売戦略のすべてにおいて、従来以上の精度と差別化が求められる厳しい市場環境が続くと予想されます。
投資・購入の判断ポイント
投資家向け
• 賃貸需要の将来性評価
• 政策効果の早期取り込み
• リスク分散の重要性
実需購入者向け
• 交通・生活利便性の確保
• 再開発計画の確認
• ライフスタイル適合性
まとめ
広島県の人口減少問題は、新築マンション市場に深刻な影響を与えていますが、 同時に新たな機会も創出しています。広島駅周辺の大規模再開発は市場に新たな活力をもたらし、 県の積極的な人口減少対策は将来への希望を抱かせます。
重要なのは、この変化の時代に適応し、リスクを適切に評価しながら機会を見極めることです。 立地選択の重要性がこれまで以上に高まる中で、慎重かつ戦略的なアプローチが成功の鍵となるでしょう。
広島県の不動産市場は確実に転換点を迎えています。この変化を正しく理解し、 適切な判断を行うことで、厳しい市場環境の中でも成功を収めることは十分に可能です。 今後も市場動向と政策効果を注視し、最新情報をお届けしてまいります。
参考資料・リンク
• 総務省「住民基本台帳人口移動報告2023」
• 広島県公式ホームページ
• 広島市公式ホームページ
• FNNプライムオンライン「広島県は若者に逃げられている?」
• 日本経済新聞「広島県が若者流出対策で調査チーム」
• 広島県統計データ「年齢階級別転出入状況の推移」
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