あなたは、
新築マンションの4LDKを買うことができますか?
4LDKに手が届きますか?
年々、新築マンションの広さが狭くなっています。
それに伴い、広いとされる角部屋の面積も狭くなっています。
30年前は角部屋と言えば4LDKでしたが、
今では角部屋でも4LDKは希少になっています。
実際に広島市におけるスーモ(SUUMO)掲載の37物件のうち、4LDKの間取りがある物件は6つしかありません。そのうち1物件(プレディア観音新町プレイスは価格未決定)を除き、他はすべて諸費用込みで6,000万円以上の価格となっています。1馬力だと年収は800万円以上ないと支払いは厳しいでしょう。
今や、
4LDKは高根の花なのです!!
新築マンションの4LDKが少なくなった理由
近年、新築マンションの間取りを見ていると、かつては一般的だった4LDKの物件が減少していることに気づきます。 特に都市部では3LDKが主流となり、4LDK以上の広い間取りのマンションを見つけることが難しくなっています。 なぜ新築マンションから4LDKが姿を消しつつあるのでしょうか?本記事では、その背景と理由について詳しく解説します。
4LDKマンションの現状
2021年時点では、新築マンションで4LDK以上の間取りは非常に珍しくなっています。 市場に出ている物件の中で、4LDK間取りを棟内でいくつか選ぶことができる新築物件は、 新浦安や晴海フラッグなど限られた地域のみとなっています。
中古マンション市場においても同様の傾向が見られます。不動産ポータルサイトSUUMOの データによると、東京都の中古マンション在庫総数約22,579件のうち、4LDK以上の物件は わずか4%程度しかありません。
東京都の中古マンション間取り別割合
間取り | 件数 | 割合 |
---|---|---|
ワンルーム | 766 | 3.4% |
1K/DK/LDK | 5,011 | 22.3% |
2K/DK/LDK | 7,993 | 35.5% |
3K/DK/LDK | 7,890 | 35.1% |
4K/DK/LDK | 850 | 3.8% |
5K以上 | 75 | 0.3% |
出典: SUUMOのデータを基に作成
価格が高すぎる問題
4LDKマンションが減少している最大の理由は「価格の高さ」です。マンションの価格は基本的に「広さ×坪単価」で決まります。 4LDKともなると面積が広くなるため、総額が高額になってしまいます。
例えば、3LDKの一般的な面積が75平米程度であるのに対し、4LDKは100平米を超えることが多いです。 都心部で坪単価が300万円の場合、3LDKと4LDKでは数千万円の価格差が生じることになります。
3LDKと4LDKの価格比較(都心部の例)
※坪単価や面積は地域や物件によって異なります
マンションデベロッパーは、周辺相場と大きくかけ離れた価格の物件は売れにくいことを知っています。 地価と建築費という二大原価が上昇している中で、想定顧客が購入可能な価格に抑えようとすると、 面積を抑える(=部屋数を減らす)しか方法がないのです。
需要の減少
4LDKマンションは、そもそもの需要が少ない傾向にあります。4LDKは子ども2人以上いる家族には 理想的な間取りといえますが、少子化が進む現代では、そのような世帯は減少しています。
国立社会保障・人口問題研究所のデータによると、日本の平均世帯人数は年々減少しており、 2020年には2.21人となっています。4人以上の世帯は全体の約15%程度しかなく、 4LDKのような広い間取りを必要とする家族は少数派となっています。
日本の世帯人数の推移
出典: 国立社会保障・人口問題研究所
子どもが1人しかいない場合や、子どもが同性で子ども部屋は1つでいい場合、 夫婦だけで暮らす場合などは、4LDKでは部屋を持て余してしまいがちです。 さらに、子どもが成長して独立すれば部屋が空いてしまいます。 10年や20年で子供が独立することを考えると、部屋数の多さはむしろネックになるケースも多いのです。
管理費・修繕費の負担
マンションの管理費と修繕積立金は、一般的に平米比例で計算されます。 そのため、広い面積の4LDKは月々の負担が大きくなります。
管理費・修繕積立金の比較
項目 | 3LDK(75平米) | 4LDK(110平米) |
---|---|---|
管理費(250円/平米) | 18,750円 | 27,500円 |
修繕積立金(200円/平米) | 15,000円 | 22,000円 |
合計 | 33,750円 | 49,500円 |
※金額は一例です。実際の管理費・修繕積立金は物件によって異なります。
上記の例では、4LDKは3LDKと比較して月々約15,750円、年間で約189,000円も負担が増えることになります。 これに駐車場代なども加わると、戸建てと比べてコストパフォーマンスが悪くなってしまうケースも少なくありません。 「それなら、いっそ戸建てが良い」と考える人が多くなるのも当然といえるでしょう。
4LDKマンションと戸建ての比較
4LDKマンションと同等の広さを持つ戸建ては、立地によっては価格が同等か、場合によっては安くなることもあります。 特に郊外では、広い戸建てが比較的手頃な価格で手に入ることが多いです。
4LDKマンションと戸建ての比較
項目 | 4LDKマンション(都心部) | 4LDK戸建て(郊外) |
---|---|---|
価格帯 | 8,000万円〜1億2,000万円 | 5,000万円〜8,000万円 |
面積 | 100〜120平米 | 120〜150平米 |
管理費・修繕費 | 月4〜6万円 | 自己負担(年間20〜50万円程度) |
メリット | 立地、セキュリティ、管理の手軽さ | 自由度、プライバシー、庭の有無 |
デメリット | 高額な維持費、騒音問題 | 立地、メンテナンス、防犯面 |
※価格や条件は地域や物件によって大きく異なります
郊外の戸建てが売れているのにマンションの4LDKが売れないのは、価格と得られる価値のバランスが 大きな理由となっています。マンションは総じて戸建てよりも立地の良い物件が多いため、 都市部のマンションと郊外の戸建てを比べると郊外の戸建ての方が価格は安いことが多いです。
リモートワークの影響
一方で、近年のリモートワークの普及により、部屋数が多い物件への需要は実は高まっています。 在宅勤務が増えたことで、仕事用のスペースを確保したいというニーズが増加しているのです。
しかし、この需要の高まりは必ずしも4LDKマンションの人気に直結していません。 なぜなら、前述の通り4LDKマンションは価格が高すぎるからです。 リモートワーク用のスペースが欲しいという需要は、より手頃な価格で広いスペースが 確保できる郊外の戸建てへと流れているのが現状です。
リモートワーク普及後の住宅需要の変化
※不動産市場の傾向を一般化したものです
流動性の問題
4LDKマンションは、将来売却する際の流動性の問題も抱えています。 前述の通り、4LDK以上のマンションは市場全体の4%程度しかなく、非常にニッチなマーケットです。 マーケットが小さいということは、いざ売却しようとしても買い手が見つかりにくいということを意味します。
特に高額な4LDKマンションは、売り出したものの1年経っても買い手が付かないというケースもザラにあります。 この流動性の低さは、購入を検討する際のリスク要因となり、さらに需要を減少させる要因となっています。
例外的な4LDKマンション
4LDKマンションが少ない中でも、例外的に供給されている地域や物件があります。 例えば、晴海フラッグは東京オリンピックの選手村として建設されたため、日本全国が商圏であることと、 土地代が格安だったという特殊な要素があり、広い間取りの提供が可能になりました。
また、新浦安の新町エリアは、もともと100平米以上のマンションが当たり前の地域だったという 特殊なマーケット特性を持っています。このように、特定の条件が揃った地域や物件では、 今でも4LDKマンションが供給されているケースがあります。
例外的に4LDKが多い地域・物件の特徴
- 【特別な開発背景】 – オリンピック選手村など特殊な背景を持つ開発
- 【土地取得コストの優位性】 – 公的な土地の払い下げなど、通常より安価に土地を取得できたケース
- 【地域特性】 – もともと広い間取りが一般的な地域(新浦安など)
- 【富裕層向け物件】 – 高級マンションの最上階など、特別な顧客層をターゲットにした物件
- 【企業の福利厚生】 – 企業の社宅や役員用住宅として建設された物件
掃除・メンテナンスの手間
4LDKのような広い間取りは、日常的な掃除やメンテナンスの手間も大きな課題です。 部屋が多ければそれだけ掃除やメンテナンスの手間がかかります。 掃除は毎日のことになるので、1部屋増えるだけでも掃除の負担は大きなものです。
特に使う予定のない部屋であれば、なおさら掃除の手間をかけたくないと考える人は多いでしょう。 掃除の手間を考え、部屋数の少ないマンションを希望するという場合もあり、 4LDKは選択肢から外されてしまう可能性があるのです。
今後の展望
4LDKマンションの需要と供給は、今後どのように変化していくのでしょうか。 リモートワークの定着により、仕事用のスペースを確保したいというニーズは 今後も続くと予想されます。しかし、それが4LDKマンションの需要増加に 直結するかは疑問です。
むしろ、3LDKでも仕事スペースを確保できるような工夫された間取り (例:リビングに隣接した小さな書斎スペースなど)が増えていくことが 予想されます。また、価格面での優位性から、郊外の戸建て住宅への シフトも続くでしょう。
今後予想される住宅トレンド
デベロッパー側も、4LDKのような大型間取りよりも、3LDKでも効率的に スペースを活用できる「スマート設計」に注力していくことが予想されます。 例えば、可変性の高い間取りや、マルチパーパスに使えるスペースの提案などが 増えていくでしょう。
まとめ
新築マンションから4LDKが減少している主な理由は以下のとおりです。
4LDK自体の潜在的な需要はありますが、価格と釣り合っていないため、 結果的に売れなくなっているといえます。今後は、リモートワークの普及などにより 部屋数へのニーズは高まるものの、それは必ずしも4LDKマンションではなく、 工夫された3LDKや郊外の戸建てへと向かう可能性が高いでしょう。
マンションデベロッパーは、この状況を踏まえ、単純に部屋数を増やすのではなく、 限られたスペースを効率的に活用できる間取りの開発や、価格と価値のバランスを 重視した商品開発が求められています。
参考リンク
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